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悔しくないの?とセゲは母に問いました。
腹が立つし、悔しいわよ、でもどうしようもない・・・と母。
セゲはこんな時ネイルケアをしていたと言いました。何も知らずに・・・。
どうして黙ってたの私を親不孝者にしないで
あれが最後の電話だったら、私は一生自分を恨んだ
セゲは大声で叫び、泣きました。
「ごめんね。ただ母さんはあなたを悲しませたくなかった・・・。」
「何故私の事ばかり考えるのよ。自分の事を考えてよ。」
だって娘なんだもの。たった一人の娘なんだもの・・・と母。
抱き合って泣きました。
泣けて良かったです。
ドジェがお見舞いに来ました。
「健康でいてね。あなたが好きだから。娘の恋人だから言ってるんじゃないの。幸せになってほしい。プレゼントありがとう。」
母は穏やかに微笑みながら言いました。
ドジェも静かに話をしました。
「私の代わりにあの子の手を握ってあげて。バトンタッチしたわよ。」
セゲは出来る限り母と一緒に過ごしました。
わき役だというのが、幸いしました。あまり撮影が無いからです。
写真を撮り、動画を取りあいました。
死は遠い存在のようで常に傍にいます。気が付くと傍らにぴったりと付いていて逃げられません。だから、何度も言い合いました。
「愛してる。」
と。
キンカンの服が編みあがりました。
ある日、母の病院に行こうとしたセゲ。
変身してしまいました。年配の女性に・・・。演じているのは、ラ・ミランさん。
こんな時に、こんな大事な、一分一秒を惜しんでいる時に・・・。
セゲはショックを受けました。
死にゆく母に娘のこんな姿を見せることは出来ません。
ウミに代わりに行ってもらいました。
ウミは、突然撮影が入ったと嘘を言いました。
セゲは自分の部屋に籠って、ひたすら待ちました。元の自分に戻るのを。
絶望感と焦りでじりじりしながら。
少しでも早く元に戻してくださいと、神に祈りました。
ドジェから連絡が入りました。
変身したことを知ったドジェ。
“セゲ”と呼んで・・・とセゲ。
ドジェは優しく呼びました。
その時、ウミから連絡が入りました。
駆け出しました。もう姿がどうのと言ってる場合じゃありません。
意識の無い母の手をセゲが握ると、母の意識が戻り、セゲを見ました。
泣いてるセゲを見て、どなた?・・・と言いました。
でも、次の瞬間、目を大きく見開きました。目の前の女性がセゲだと気付いたのです。
娘の苦しみを今初めて知りました。
自分の罪を娘が罰として受けてる・・・と思った母。でも、友達みたいで嬉しい・・・と言ったのです。
「今度は母さんがもっと早く気づいてあげる。だから、来世でも母さんと親子になろう。また娘になってね。母さんがもっといい母親になる。」
私の顔を見て行って・・・とセゲ。
「目を閉じても、あなたの顔が見える。」
そして、母は息を引き取ったのです。
医師たちが駆け付けました。
縋りついて無くセゲを、セゲだとは思えないわけで、奇異な目で見ました。
私が後の事を・・・とウミが病室からセゲを外に出しました。
セゲがロビーで立ち尽くして泣いているところにドジェが。
ドジェは、その女性がセゲだと、一目で見分けました。
抱きしめました。
お葬式に、セゲは遺族として臨みませんでした。
イ監督をはじめとした仕事の関係者がたくさん訪れます。怪しまれないためにも、そうするしかありませんでした。
セゲは、トイレで泣きました。
たった一人の母を見送ることもできないのかと。
その時、チェ・ユリがトイレに入って来ました。
一人号泣するアジュンマを見て、ちょっと引いた表情を浮かべました。
で、そのまますぐに出て行ったのですが。
直後に忘れ物を取りに引き返した時、セゲがトイレから出てくるのに出くわしたのです。
アジュンマの姿はありませんでした。
ちょっと引っ掛かったようです。
セゲ・・・もとに戻ったのです。
もう少し早ければ・・・とセゲは思いました。
セゲの隣にドジェは並んで立ちました。
別れた筈なのに・・・と参列者がひそひそ噂しました。
それを気にしたセゲに、ドジェが言いました。
「今一番つらいのは君だ。バカだな。人を気遣ってる場合か。」
サラも来ました。
丁寧に一礼し、言いました。
「これからどうするつもりですか?お母さんが亡くなってしまって。」
冷たく聞こえる言葉でした。咎めようとしたドジェに、サラが言いました。
「お決まりの慰めの言葉には温かみがない。私はそうだった。頑張って、元気を出してと言う言葉より“これからどう生きていくんだ”そういう言葉の方が心に残った。」
私を嫌ってると思ってた・・・とセゲ。
「兄の好きな人だから。だから来た。一応は兄だから。」
悲しみに寄り添ってくれたこと、忘れません・・・とセゲ。
「忘れたっていい。言うまいと思ってたけど、やっぱりいうわ。頑張って。本心です。」
サラの心がこもっていました。
サラはウノとあれ以来初めて会いました。
「彼女は平気なふりをするわ。自分の傷を自ら話題にして、笑い話にするかもしれない。それは本心じゃない。私がそうだった。お友達を愛で包んであげて。神に仕える人でしょ。」
サラはウノにそう言って、帰って行きました。
セゲは気丈に喪主を務めていました。眠る事も、泣くこともしませんでした。
「泣いて。」
と、ウミが言いました。私が泣かずに傍にいるからと。
「僕が堪えるから、お前たちが泣け。」
ウノが言いました。
セゲとウミは、声を出して泣きました。
ウノが二人を抱きしめました。いい友達です、ホント。
母さんは知ってたのかな・・・とセゲはドジェに言いました。
「知らなかったと思う。一目見て分かったんだ。僕がそうだったから。」
と、ドジェは言いました。
ああ、あそこで僕の大切な人が泣いていると一目で分かった・・と。
「母さんがいなくなって、どうしようと思ったけど、一人じゃなかった。ウミがいてウノがいて、あなたがいる。私は一人じゃない。それでも、母さんに会いたい。」
セゲが言いました。
私は何をしたんだろう、なんで私なんだろう、私は何の罪を犯して、母の最期を自分の顔で看取れなかったんだろう・・・とセゲは呟きました。
元の姿に戻らなくなったら?
別人のまま事故にでも遭って別人のまま死んだら、誰にも気づかれずに、それが怖い。
「その時は、僕が見つける。そして手を握る。」
ドジェが言いました。