「警官」をテーマにした書き下ろされた作品集。
7人の作家が、それぞれに全く違う雰囲気の作品を書いています。
コロナ禍に口々に言われた“自粛”を思い出させられた作品があるかと思えば、「上級国民」と言う単語を初めて知った交通事故を思い起こさせる作品あり。
とにかく、全く違う切り口、雰囲気の作品たちです。
それぞれ短編なので、あっという間に読み終わります。
「警官」をテーマにした書き下ろされた作品集。
7人の作家が、それぞれに全く違う雰囲気の作品を書いています。
コロナ禍に口々に言われた“自粛”を思い出させられた作品があるかと思えば、「上級国民」と言う単語を初めて知った交通事故を思い起こさせる作品あり。
とにかく、全く違う切り口、雰囲気の作品たちです。
それぞれ短編なので、あっという間に読み終わります。
都会から離島に研修医としてやってきた新実。
真面目で、医師としての使命感に燃える新実は、それまで自分が学んだり見聞きしてきた医療とは全く違う医療に戸惑います。
積極的な治療こそが、医師としての役目だと新実は考えていました。
しかし、この離島では、無理な延命や無理な治療はしないと言う考え方が根付いています。
人は死ぬものなんだと言う意識が、島民の中にも医療従事者の中にも根底にあるのです。
ここで言う無理な延命や無理な治療というのは、私たちが考える普通の医療の姿です。
つまり、早期発見のための検診とか、予防とかですね。
作品の中で指摘されているように、検診や予防による良い点は声高に主張されていますが、それによる弊害等のマイナス面は語られていないのが現状です。
だからと言って、検診を否定するわけでも予防を無駄だと言うわけでもありませんが、プラス面とマイナス面の両方あることに気が付かされたことは、とても良かったと思いました。
新実も、戸惑いながら、悩みながら、自分の歩むべき道を探します。
素朴な離島の島民たちとの触れ合いから、何かを学んでいく新人医師の物語という私の想像は、あっさり覆されてしまいました。
なるほどと、思わされる内容でした。
お勧めです
過酷な戦国時代を生きた佐々成政の人生の1ページを描いた作品。
織田信長や豊臣秀吉、そして徳川家康のような、トップランナーではなく、彼らに追い越されて行った多くの武将の一人です。
戦国時代を描いたと言うと、何々の戦いと言った華々しい題材を思い浮かべるのですが、これは違います。
今のように装備の整った状況においても、冬山登山は危険がつきもの。
なのに、佐々成政は、少人数の供と道案内の者を従えて、冬の立山を超えたのです。
目的はただ一つ。
徳川家康に会い、共に秀吉を倒そうと説得すること。
結果的に、目的は果たせませんでしたが、冬山を超えるということで、別の生き方を学ぶことになります。
想像も出来ない厳冬の立山越えと、そうせざるを得ない領主としての信念が伝わりました。
案外、さらっと読めました。
大河ドラマ「光る君へ」でも、まひろの従者として出演している矢部太郎氏の著書。
認知症専門医である長谷川嘉哉氏の著書を漫画化したものです。
認知症専門医が診て来たたくさんの認知症患者とその家族の物語を、柔らかなタッチの絵で描いています。
ほんわかして、くすっと笑えてしまうようなエピソードですが、私はあまり笑えませんでした。
笑うには、身につまされるエピソードばかりで。
まだ笑えるほどに過去になっていないようです、私は。
振り返ってみると、私が介護に関わるようになった時は、いきなりMAXのレベルでした。
この漫画のように、少しずつ、少しずつ介護される側も介護する側も慣れて行くならともかく。
いきなりのピークに、介護の何たるかも、認知症の何たるかも知らないまま、学べないまま、ぽんと託されてしまったので。
今なら、あの時よりは少しはお互いが楽に向き合えるかもしれません。
子育てと同じように、大きく言うと人生が人それぞれなように、介護も人それぞれ。
良いとこどりでやっていけたら、それに越したことは無いと思います。
この作品の中で、一つほっとしたのは、先生は介護者の方を向いてくれているということ。
介護者の心身が大事と言う言葉。
私が介護している時は、誰もそんな言葉をかけてくれませんでした。
介護される者第一であるべきだと言うケアマネや親族の主張が唯一無二の正解だと思われていましたから。
介護する者・・・それも一番関わる者は、身を削る思いで当たるのが当然・・・なんてね。
もしかしたら、今でもそうなのかもしれませんが。
物凄く荒んだ気持ちで毎日を暮らしていたのは確かです。
いくら積まれたとしても、あの頃の経験は二度としたくないです。
人間として徳が積まれる・・・なんて言うのは、経験の無い人のその場しのぎのセリフだと私は今でも思っています。
この先どれほどの時間が残されているか分からないけど、あの10数年を、返してほしいと心底思います。
こんな思いをしないために、この漫画が役立つかもしれません。
入門書のようなモノです。
江戸の町に“三年長屋”と呼ばれる長屋がありました。
3年住めば、願いが叶うと言う言い伝えがあるからです。
長屋の奥には、家主が彫ったと言う河童の像が祀られています。
住人は、きゅうり等のお供えをしながら、毎日拝んでいます。
その長屋の差配をしているのが、主人公の左平次。元は武士で名を古川左衛門と言いました。
元々、正義感が強く、藩の不正が許せず、抗議した時、父親はそれを見て見ぬふりをしてくれたのにと言われるのです。
その瞬間、左衛門は、藩を捨てました。
浪人の生活は苦しく、その中で妻を失ってしまいます。
そして、唯一の心の支えだった幼い娘とも生き別れとなってしまうんです。
絶望の淵にいた彼を町人左平次にし、差配を任せたのが、お梅と言う家主でした。
長屋には、様々な人が住んでいます。
それぞれに性格も仕事も違うけれど、共通しているのは、一生懸命に生きていると言う事。
彼らの世話をしつつ、左平次も自分を取り戻していきます。
長屋の住人にとっての“河童”が何なのか、幸せとは何なのかを、考えさせられる物語です。
最初は、ちょっとまどろっこしい進みに飽きそうになりましたが、読み進めるうちに、どんどん目の前に長屋の情景が浮かぶ気がして、いつの間にか、私も三年長屋に入り込んでいました。
真梨幸子氏の著書。
いやもう、深夜に読むものじゃありませんよ
ゾクゾクしてしまいました。
ところで私、何故か主人公の作家を、女性だと勘違いしたまま読んでしまいまして。
ラストになって初めて、男性作家だったんだと気付く始末
「フシギ」などと言うカタカナの題名なので、軽い感じの内容かと思いきや。
充分怖い思いをさせてくれました。
スリラー好きな方にはお勧めです。
「変な家」に続く不可解な間取り図の謎に挑む作品。
全部で11の謎が紹介されています。
前作より、今回の方が私は面白かったと思います。
11別々の謎が、最後には一つに繋がると言う、思いもよらない展開ですからね。
途中で、
「ん」
と言う感じで、繋がりを感じ始め、ラストには、
「なるほどね」
と言う感じ。
前作より、こちらをお勧めします
池内紀氏の著作。
著者は、70歳になった頃から、手帳に日々気が付いた事を書き留めるようにしたそうです。
なにせ、
“老いるのは初めての経験”だから。
“未知の冒険が始まる”のだから。
確かに
結構、あちこちで頷ける話がありました。
世間でよく言う“体は老けても心は老けてない”と言う言葉。
それは錯覚だと著者は一刀両断。
心は老けて無いと思う事自体が老化の印だと言います。心も老けるからこそ、人生の別の局面が見えてくるのだと。
老いたからこそ、初めて若さがわかるのだと。
なるほど
TV等で老いの問題を取り上げる事も多いですが、たくさんの老人を取材してはいるけど、まとめるのは老人ではありません。せいぜい50代くらいの人たち。
だから、ある程度問題に接近出来ても、核の部分は作っている人には理解出来ないわけです。
老いの問題は老いて行く自分が一番詳しいわけで。自分の老いを通して老いて行く問題を学べてるわけです。
『誰もが自分のスペシャリストになる』
なるほど
笑えて、頷いて、でも少々意見を異にするところもあって、新たな考え方、見方を気づかせてくれる本でした。
有馬美季子氏の著書。
お葉は幼い頃、流行り病で両親を亡くし、奉公に出ました。
奉公先を紹介してくれた親戚の者は、体よくお葉を売り飛ばしただけでした。
お葉は5年間のタダ働きをすることになってしまったのです。
後になってそれを教えたのは、奉公先のお内儀とその娘。
綺麗で優しそうに見えた二人ですが、本当は正反対の意地悪さを持った者たちでした。
お葉は、2人から散々に虐められました。
自分は何の価値も無い人間なんだと刷り込まれ、生きる気力を失くしてしまいます。
結局、お葉は川に身を投げてしまうのです。
助けてくれたのは、町医者道庵。
不愛想な道庵は、お葉に失った我が子の姿を重ね合わせたのか、必死に治療してくれました。
道庵がしたのは、体の治療だけではありません。心の治療をもしてくれたのです。
道庵だけではなく、周囲の心温まる人たちのお陰で、人を信じることをお葉は思いださせてもらいました。
お葉の再生の物語です。
とても心が温まります。
世の中にはいろんな人がいるけれど、こちらの心の持ちようで、環境も変わっていくのかもしれないと思わせてくれました。
「Ⅹー01」が何なのか、そして、由宇とラタの関係は
・・・と、気になって気になって
永依国は、ラタとリャクランの働きで、一度は強大国との戦に勝利を収めますが、国力の違いは歴然としていて。
滅亡までの時間を少し延ばしたに過ぎませんでした。
軍師リャクランは、勝利の影響が残っているうちに和睦する事を提案します。
ところが、相手が和睦の条件として提示したのは、ラタとリャクランの命でした。
愚かな永依国の王と側近は、その条件を飲みました。
それによって永遠の平和が得られるなどと、信じてしまったのです。
戦乱の世に、そんな約束など、守られる筈がないと、考えなかったのです。
ラタとリャクランは、義父である将軍とリャクランの実父ハマと共に、最後の一戦を交える覚悟をしました。
一方、由宇が意識を取り戻したのは、無機質な部屋。
そこで、由宇は父が自分に残した手紙を読みました。
『Ⅹー01とは、狂気の機密計画だ。・・・』
為政者たちが考え出したのは、高性能の兵器となり得る人を生み出す計画でした。
兵器となるべく人を育てるというのではなく、生まれながらに兵器と言える人を作り出すことなんです。
それは、ラタのDNAを手に入れた時から始まりました。
そして生まれたのが、由宇だったのです。
由宇には“親”と呼べる者はいません。
由宇の中に眠る兵士としての能力の開花は15歳頃と見られていました。
由宇に愛情を持った父が、普通の人として由宇を育てたいと思い、同じく研究者だった母と共に、研究所を脱走。ひっそりと田舎に隠れ住んだのです。
が、それは上の者にはお見通しだったようです。
能力の開眼間近な由宇をとりもどすべく、襲い掛かって来たというわけでした。
しかし、この時、由宇の間近には、甦ったラタとリャクランが既に潜んでいたのです。
その昔、リャクランに父のハマが言いました。
「お前の運が良ければ、甦る事が出来る。俺の力でどこまでお前たちを飛ばせるか・・・。」
その言葉が本当だったということになります。
ただ、由宇はラタのクローンではないと、ラタは言いました。ラタにはない能力・・・治癒能力を持っていますから。
DNAを取り出したのは、外国で発掘された墓に残っていた黒髪と骨片からでした。
もしかしたら、それはラタと血縁関係にある者のモノだったのかもしれません。
ラタは、このⅩー01プロジェクトを完全に潰すと決意。
そして、新たな“永依国”を作ると言いました。武力ではなく、外交で語り合って行ける国を・・・。
由宇はラタについて行きたいと言いました。
つづく・・・です。
続きがあるの
あると思って、想像を巡らすのも、良いかと思いました。
児童文学にくくるのはもったいない作品だと思いました。
「Ⅹー01 1」は、電子図書館でレンタルしました。
が、「2」と「3」が電子図書館にありません。
“?”・・・と思い、市の図書館の在庫を検索してみると、あった
で、即、借りに行って来ました。久々のリアル図書館です。
この作品が置かれていたのは、児童図書のコーナー。児童書でしたよ
どうりで、硬くなった頭でも理解が簡単で、読み進めるのもあっという間だった筈です。
でもね、大人の私でも、本当に面白く読むことができています。
ラタは、「永依」と言う小国の女戦士。
身分の低い両親の長女として生まれました。
父は彼女に神話に登場する「破壊神」の名“ラタ”をつけました。
父親の死後、偶然出会った将軍の養子となります。養女ではなく、息子として受け入れられたのです。
戦士として類まれな技量や精神力を身につけ、12歳で初陣を迎えました。
敵は、永依の隣国で巨大な勢力を持つ勃国。
そこで、ラタは“破壊神”と言う名にふさわしい勇猛な戦いぶりをしめし、その時からラタの名は恐れと共に知られる事になって行きました。
一方、由宇は中学3年生。
田舎に両親と住み、親友たちと他愛もない話に笑い転げるような日々を過ごしていました。
ところが、由宇が15歳の誕生日を翌日に控えた日に、父が急死するのです。
その時、父は由宇に謎の言葉を残しました。
「Ⅹー01・・・。ラタ。」
その意味を母親に問いましたが、母は知らないと言うだけ。
それが嘘だと、由宇はすぐに察しました。
父の葬儀が終わった夜、突然、静寂が破られました。
何者かが由宇たちに襲い掛かって来たのです。
命からがら逃げだした由宇。
一緒に逃げた親友は殺され、途中で母も倒れてしまいます。
母は、由宇に言いました。
「Ⅹー01は人間が創り出した最も大きく、激しい恐怖だ。」
襲って来た敵に対して、由宇は無意識に戦います。自分でもそんな自分が信じられません。
いやもう、面白いですよ、ホント
あさのあつこ氏の著作。
女優の浅野温子さんと同姓同名なので、一瞬、“???”と思いましたが、別人でしたね。
舞台は、2つの全く異なる時代、場所です。
それが、パラレルワールドなのか、或いは、別の時間を行き来するタイムトラベルなのか・・・。
『1』では、まだ分かりません。
この作品には、『2』そして『3』があるようなので、続けて読みたいです。
物凄く興味を惹かれる展開です。
主人公は、“ラタ”と“由宇”と言う2人の少女。
どちらも、意味も分からず、ましてやそれが名前とは知らず、耳にします。
そこで続く・・・ですよ。
気になる
豊田正義氏の著書です。
「硯」「目覚まし時計」「アルバム」・・・。
最悪の地上戦があった沖縄に、今も眠る遺骨たち。
そして、遺骨とともに掘り起こされる遺品の数々。アメリカ兵に奪われた家族の歴史を語る品々。
それらがどのような歴史を目撃してきたかを、物語の形式で伝えてくれる作品です。
泣けました。
本当に泣けました。
誰が何と言おうと、どんな理由があろうと、戦争はダメです。
今、世界各地で起こっている紛争の責任者たちの胸倉を掴んで叫びたい気持ちです。
和久田正明氏の著書。
お鹿の捕り物シリーズ2作目です。
今回も、緻密な筋書きで、飽きることなく最後まで一気に読みました。
大店の女番頭の一人息子が誘拐されました。
お鹿たちが必死に行方を追うのですが、間もなく、息子は無残な遺体となって、女番頭の家に投げ込まれるのです。
お鹿は、事件を追ううちに、女番頭自身の素性に疑問を抱きます。
そこから、事件は思わぬ展開を見せるのです。
このシリーズ、本当に面白いです。
お勧めですね
長月天音氏の著書。
都会の路地裏・・・ビルやマンションの立ち並ぶ通りから一本入った裏通りに「キッチン常夜灯」はあります。
シェフのケイとソムリエの千花の2人で営んでいる小さなレストランです。
営業時間が夜の9時から朝までと言うちょっと変わったお店。
主人公のみもざは、チェーン店のファミリーレストランの店長。
望んで店長になったわけではないみもざは、その重みと仕事の忙しさから、心の余裕をなくしていました。
追い打ちをかけるように起こったのが、住んでいたアパートの上の階の火事。
幸い、みもざの部屋は焼けはしませんでしたが、消火活動によって水浸しとなり、家財道具の全てを失ってしまいました。
部屋の修理や火災保険等の手続が済むまでの間、会社の寮に住むことになっただけでも、幸いと言えましょう。
その寮の近くにあったのが、「キッチン常夜灯」でした。
料理の美味しさは言うまでもなく、ケイと千花の優しさにみもざは少しずつ癒されていきます。
常連客それぞれの思い、境遇も知り、人生勉強も出来ました。
そうやって、少しずつ少しずつ、みもざは成長していきました。
心とお腹を癒してくれる料理は、読むだけで目の前に情景が浮かぶようです。
みもざの悩み、常連客それぞれの事情は、特別とは言えない事かもしれません。
一生懸命仕事をした結果終電を逃した人、早朝から仕事を始める人のために、ケイと千花は心を込めた料理とおもてなしで待っていてくれるのです。
事情を問いただすこともありません。
ただ、受け入れてくれるのです。
なんか、自然に心が温かくなり、涙が出そうになりました。
お勧めですね
こういうお店に出会いたいと、昔、思っていました。
一人でも家に帰るように気軽に行けて、知らない美味しい料理、ちょっと贅沢な料理を出してくれて、何も聞かれず、ただ落ち着いて食事のできる店・・・。
これから出会う事が出来れば、人生がもっと豊かになるように思いました。