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「夜が明ける前に王宮を去れ。二度と余の目の前に現れるな。」
と、サンが言いました。
ドギムは呆然としたまま、サンの前からいなくなりました。
ドギム、案外気持ちは穏やかでした。
こんなことがあった以上、今後サンの前では冷静でいられないと思ったからです。
泣きたくないからと、ギョンヒたちにも会わずに、本当に翌早朝、ドギムは王宮を出て行きました。
その直後、サンが宮女たちの仕事場に突然現れました。
ドギムはいるのかと、サン。キツイ口調です。
ソ尚宮は、一瞬、ムッとした表情を浮かべました。しかし、ぐっとこらえ、冷静に、でも皮肉を込めて言いました。
「王命に従い、王宮を去りました。」
サンは、ドギムの部屋に案内させました。
小さな部屋でした。一目で見渡せるほどに。
「この目で確かめたかっただけだ。もうどこにもいないことを・・・。」
すがったりせずに、命令に従ったドギム。それがドギムだとサンは思いました。
ドギムの部屋に、ヨンビンの書が置いてありました。
王宮の物なので、持って出る事は出来ません。だから、置いて行ったのです。
手に取ってみると、中に別の書物の破り取られた1ページが挟まれているのに気が付きました。
忘れていました、サン。
昔、英祖の出自について書かれていた“史記”を持っていたことで、英祖から激怒されてしまったことがありました。下手をすると、世継ぎの地位まで危なくなるほどの剣幕でサンを問い詰めた英祖。
しかし、それが書かれたページが破り取られているのを見て、サンが敢えて破ったと英祖は考え、サンもそうだと答えました。
結果、孝行者だと英祖が褒め、敵対勢力の策を失敗させたのですが・・・。
勿論、自分が破ったわけではなく、てっきりドンノのしたことだと思い込んでいました。
ドンノもそうだと言いましたし。
でも、そのページを見た時、サンは、どのような経緯だったのかは分からないけれど、本当はドギムの手柄だったと確信したようです。
1年が経ちました。
ドギムは本の筆写で生計を立てていました。
ある日、ドギムは偶然、街でドンノと再会しました。
辞職をした形だから、ドンノは無職の世捨て人的な状況にあるということのようです。
相変わらず、毒舌は変わりません。表情は昔のように明るくなっています。
ドギムを皮肉るように言いました。揀拓令が出たな・・・と。
つまり、サンは側室を迎えるつもりだと言う事です。
もう妹のことも、ドギムの事も忘れたと言う事だ・・・とドンノは言いました。
流石に、動揺を隠せないドギムでした。
狩に出かけていたサンは、途中で雨に降られてしまいました。
で、近くに妹チョンヨン公主の屋敷があったので、そこに泊まらせてもらうことにしました。
その偶然によって、ドギムと再会することになりました。
ドギムはチョンヨン公主の屋敷に住まわせてもらっていたのです。
昔から親しい間柄でしたからね。
チョンヨン公主は、ドギムにもう一度宮中に戻って貰いたいと考えているようです。
しかし、ドギムは、追放された身だからと、サンに挨拶に行くことも拒みました。
ここで、チョンヨン公主が教えてくれました。
追放処分にしたわけですが、サンはドギムに余計な苦労をしてもらいたくないと、チョンヨン公主に引き受けるよう指示していたのです。なにせ、ドギムには行く宛てが無かったのですから。
ドギム、思いもよらないことに、驚きましたが、一方で嬉しくもありました。
そして、反省しました。
自分が如何に酷い言葉をサンに投げつけたか・・・と。
自分は強がっていても、サンの手の内にいたんだと知りました。
サンが、ヨンビンの書の中に挟まれていた文書について、ドギムに尋ねました。
しかし、ドギムが口ごもったのを見て、問うのを止めました。
二度と現れるなと言う命に背いて申し訳ありません・・・と、ドギムは頭を下げました。
そして、サンは妹の屋敷に今後も来ることもあるだろうから、次からは、見て見ぬふりをしてほしいと言いました。
あくまでも縁を切ろうとするドギムの言葉に、サンは腹が立ちました。
「誰に向かって申して居る」
すると、ドギムはまたもサンに食って掛かりました。
「ならば、罰をお与えに。此度こそ、容赦なく罰すればよいのです」
ならば解かねば・・・と、サンがドギムの服の結び紐に手を伸ばして言いました。
一度お手付きとなったら、もうただの宮女ではいられなくなります。
その後、側室の称号を授からなければ、部屋にこもり無為な歳月を過ごすことになってしまうのです。
他の宮女たちからは蔑まれます。
「お前にはそれが死より恐ろしい罰だろう。」
ドギムは、図星だと思ったようです。言葉も出ませんでした。
サンは、その後、泊まりを止め、チョンヨン公主の屋敷を出て帰路につきました。
王宮に戻ったサンを待っていたのは、次期側室に内定している和嬪でした。
和嬪は、領議政の姪だそうです。
強気で勝気な女性です。少なくとも、サンは、全く気に留めてはいません。
突然、ドギムに復帰の命令が下りました。
ドギムは、ドンノに会いに行きました。
伝えたいことがあったのです。
以前、宮女の拉致事件の時、ドギムはドンノに言い放ったことがありました。
もしかしたら、ドンノが妹を入内させなければ、こんなに早く死ななかったかもしれないと。
でも、元嬪が亡くなったのは、ドンノのせいではないと言いました。運命だったんだと。
ドンノはその言葉が心に沁みました。おそらく、一番欲しかった言葉だったのかもしれません。
王宮に戻りたくないと言うドギムの手を取りました。
戻りたくないのなら、逃げようと言いました。
勿論、ドギムにはその言葉が本心からだとは思えません。
これまでも、ずっとドンノはドギムに対してライバル心を燃やして来ました。サンを巡っての。
でも、それはもしかしたら、ドンノ自身もドギムを想っていたと言う事なのかもしれません。ドンノ自身は認めたくはないでしょうが。
今、ドギムに一緒に逃げようと言ったのは、王ですら手に入らないドギムと言う存在を手に入れたいと言う欲なのでしょう。
ここに至っても、ドンノはプライドを捨てませんでした。ドギムへの想いを大したものじゃないと言いました。
「あなたは、私が死なず、息を繋ぐ程度の慰めとなるだけだ。もし私が死んだら、思いだしてくれ。私を殺したのは、あなただと。」
笑顔を見せながら言うので、ドギムにはそれが心からの本心だとは思えませんでした。
サンは新しく入内した和嬪に尽くそうと決心しました。
ドギムの代わりには誰も慣れないけれど、それが自分の責務だと思ったのです。
ところが、和嬪に仕える宮女の中に、ドギムがいることを知ったのです。
やはり冷静ではいられません。
和嬪は敏感にサンのドギムへの眼差しを感じ取りました。嫌な予感がしますよ。
ドギムの復帰、サンの命令じゃありませんでしたね。大妃でもありません。
誰の命令
和嬪は、床入りの日取りが決まったから、サンに知らせるようにと、深夜にドギムを使いに行かせたり、寝所の支度をさせたり、丁寧な言葉の裏に何か意地悪な雰囲気が隠れてる気がします。
サンは、忘れられないドギムが突然現れたことで動揺し、不承不承王宮に戻って来たと言うドギムに、更に気分を害しました。
ならば、一生ここにいろと、言いました。
「王を見る事しか許されず、慕いもしない余を見て朽ちるがよい。それなら罰になる。」
ドギムは必死に冷静を装いました。
和嬪は、日取りの通知を渡さずに戻って来たドギムを折檻しました。
サンが、ソ尚宮たちを外させて、ドギムと二人きりで話をしたことも、既に耳に入っていました。
ドギムは、痛みを必死に耐えました。
ドンノの死が伝えられました。自害したのです。
ドンノは遺書の中で、英祖の禁書の一件を打ち明けていました。サンを救ったのは自分ではないと。
破ったのは、幼い宮女で、おそらく今も破り取った紙片を持っている筈・・・と。
“私はそれが誰か分かる気がします”
そして、最後に書いてありました。
“王様もどうか己の心に正直に”
サンは泣きました。
突き放したドンノではありますが、確かに彼は自分にとって唯一の友だったと思いました。
その唯一の友に、自分は最善を尽くしたのだろうか・・・と。
サンは、和嬪の元を訪れ、挨拶だけで帰ろうとしました。
内官が、ドンノの死を告げたら、和嬪は追放された臣下に過ぎないのに・・・と呟きました。
こういう一言で、その人の性根が分かるというもの。
サンは嫌な顔をしました。
サンは、ドギムに禁書の一件を聞こうと思いましたが、和嬪は用事で実家に行かせていると言いました。
その直後、どこからか、洗濯をしている音が聞こえてきました。
王宮ではこの時期、夜に洗濯の仕事はさせてはいけないと言う決まりがありました。
マズイ・・・と言う和嬪の表情を見て、サンは何かピンとくるものがありました。
やはりそうでした。洗濯をさせられていたのは、ドギムだったのです。
和嬪が嘘をついたことになります。
サンは激怒しました。
和嬪は、サンの前では反省した様子を見せましたが、ドギムへの憎しみはいっそう強くなってしまったようです。
なんと、ドギムを復帰させたのは、サン母でした。
ドギムだけがサンを幸せにできるとサン母は信じているのです。
サンの心を分かっていますから。
人は誰もが、サンが王である事で満足しています。
でも、母は愛する一人の人間としての息子に言ってあげたいのです。
「王様、どうかお幸せに。サン、幸せになりなさい。」
母にそう言われても、サンはどうすればよいのか分かりませんでした。
ドギムが自分を拒み続けているのだから。
1人王宮の中を歩いていたサンは、ドギムが1人で泣いているのを見かけました。
放ってなどおけません。
ドギムは、ドンノの死を聞いたばかりだったのです。
「1人で泣くな。いっそ余のために泣け。余が見守れぬ時や気づけぬ時に1人で泣くな。これは命令だ。」
サンは、禁書の一件を聞きました。
やはりドギムでした。いつもドギムだったんだと思いました。
「お前に謝る事は出来ないが、別の言葉はかけられる。ありがとう。何度も余を救ってくれて。余が知らぬところでも守ってくれた。ありがとう、ドギム。」
もう取り返しがつかないのか?と、サン。
そのまま背を向けようとしました。
立ち去ろうとしたサンの袖を掴んだドギム。この一瞬だけ、ドギムは正直になれました。
サンはドギムをそっと抱きしめました。
会いたかった・・・と。
やっと・・・ですね。