マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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中畑町の水口マツリ

2016年01月28日 08時50分05秒 | 奈良市(旧五ケ谷村)へ
4月の第一日曜日に苗代を作る。

苗箱を並べ終わったら春日神社でたばったごーさん札を立てると聞いていたが見つからなかった。

話しによればごーさん札は正月元日に奉られるようだ。

ごーさん札は前年末の大晦日まで村神主や年寄りが作っているらしい。

それはともかく、翌週の日曜日であれば数軒が苗代をしてお札を立てると云う婦人の話しを信じてやってきた奈良市五ケ谷の中畑町。



先週も拝見したレンギョウは後方に土蔵を入れ、間近に寄って撮っておいた。

辺りを見渡せば白い幌を被せている処がある。



近づいてみれば黄色花のスイセンを添えて立てていたごーさん札があった。



その場にあった半紙。



中央が窪んでいる。

おそらくモチを供えていたのでは・・。

1月18日にトンドを行っていた中畑町。

その日、村神主のご厚意でいただいたごーさんがある。

村人が持ち帰ったごーさん札は水口に立てていたのだ。

到着した時間は午後2時。

昼頃に済ませたようだ。

ウルシの木の先をT字型に割って挟む。

稲穂付きの松苗とともに苗代水口に立てる水口マツリ。



ここでは洗い米を撒いていた。

お札は広げることはできない。

1月18日に貰ったお札で確認する。

版木で刷ったと思われる「春日神社 八阪神社」のごーさん札。

牛玉の朱印を押しているが、左右にある文字は判読不能だ。

五ケ谷村史によれば隣村の米谷町に「薬師さんのオコナイ」がある。

現在では上ノ坊と呼ばれる寿福寺で行われる。

悔過法要の際に「ダンジョウ」作法もあるようだ。

米谷のお札は「壽福寺」の文字。

右に「牛」に「宝印」型。

左は「寶」と「下」の文字であることから推察するに同様の文字であると考えられる。

お札の「神社」文字から考えて、廃絶した寺行事を宮座が継承するようになったのであろう。

数軒が水口マツリをしていると聞いていた中畑町。

他にもあるかも・・と思って散策する。

当地は急坂。

汗が流れるこの日は暑い。

急坂で息切れする。

苗代作りを終えて休憩中と思われる処ではごーさん札は見られない。

満開になっていたサクラがあった。

近いようだが急坂を登る足に力がはいらない。



見張り番かどうか知らないが、停めてあった運搬車も入れて撮っていた。

第一日曜にすると話していた婦人の家を探す。



ふと振り返ってみればソメイヨシノが咲いていた。

前週に来たときは気がつかなかった場だ。

時期は過ぎていてサクラは散り状態。

目を凝らしてみれば右下にごーさん札がある。

もしやこの付近であろうと思って家を探せばI婦人がおられた。

話しによれば孫たちに手伝ってもらって5日に苗代を作ったという。

終えてイロバナを添えてお札を立てた時間は午後1時ころ。

私が到着した時間は3時だった。

一足遅かったのだ。

案内してもらってその場に立ち入る。



イロバナを立て直してくれた状態で撮らせてもらった。

そこには散った桜が広がっていた。



I婦人は続けて話す。

稲籾は3月31日ころ、水に浸けて含ませた。

「カマス」の袋に入れて水に浸ける。

水はお風呂の残り湯を使う場合もある。

モミオトシは苗箱が流れる機械で落とす。

大学を卒業して農協に勤めた孫娘が手伝ってくれて、苗箱を田んぼに運んでくれたそうだ。

ちなみにI家の稲作は2品種。

粳米はヒノヒカリで糯米がアサヒモチ。

苗箱はそれほど多くなく70枚程度になるそうだ。

水口マツリの場で婦人と立ち話をしていたらもう一人のS婦人がやってきた。

歳は83歳だ。

もう一人は82歳。

モンペにヒッパリ姿の高齢者はと元気が良い。

どこから次の話題に移ったか、判らないがお盆の在り方を話される。

お盆の8月14日に「サシサバ」を食べているというのだ。

訛って「サッサバ」という食べ物は塩漬けしたサバをカンカラカンに干したもの。

両親が揃っている家では開きの「サシサバ」をもう一尾のサバ頭に挿しこむ。

平坦盆地部の大和郡山や天理市・斑鳩町で聞き取りした婦人は80歳越えの15人。

懐かしい味は忘れられないと云っていたが、戦前の幼少期の体験である。

今でもその「サシサバ」を食べているという中畑町在住の二人の婦人。

あまりにも塩辛い「サシサバ」。

家族はその味に遠慮される。

仕方がないから隠れて食べていると話す。

「サシサバ」は赤黒い方を「酢」に浸して柔らかくなれば塩抜きをする。

それを食べるSさんは「しょっぽくて辛い」と云った。

天理本通りの商店街で売っているから買っているという「サシサバ」。

魚屋さんが「こんなん入ったで」と声をかけられたら、ついつい買ってしまうそうだ。

需要があれば供給がある。

お盆前に調査したい「サシサバ」売りの店である。

「サシサバ」は家の風習。

山添村では今でもそれをしている家がある。

その様相はブログで紹介している。

なお、県立民俗博物館で行われた平成23年10月の「私がとらえた大和の民俗」写真展でその在り方を写真で紹介したことがある。

「サシサバ」の話題提供してくださったもう一人の婦人。

昼頃に苗代作りを終えてごーさん札を立てた。

これからイロバナも飾るという。

苗代の場は運搬車が置いてあった場よりも上にあると案内してくださる。

その場は息子さんがシシ除けの電柵を設えている最中だった。

撮り難いだろうと一旦外してくれる。



イロバナを添えて半紙に包んだ洗い米を供えた場は水口の入口。

来年は出口にしたいと話していた。



見届けた息子さんは再び電柵を張り巡らした。



S家の稲作品種はヒノヒカリ。

80枚ほどの苗箱にモミオトシをしていたそうだ。

5日に立てたと話していた婦人がこの場にやってきた。

ここでも盛り上がる民俗話し。



出里の福住・上入田も同じようだという。

都祁・白石ではイノコノクルミモチはしているが中畑では見られない。

だが、柳生・忍辱山ではしていたという婦人たちの記憶はメモしておこう。

ここら辺りはアライグマの被害が増えつつある。

出没するシカは7頭もおったらしい。

「オゴロ」或は「オンゴロ」と呼ぶモグラは捕まえたら一匹200円で買い取られる。

そういえば区長家にはモグラ納めの箱があった。

生きていても死んでいても買い取るそうだ。

(H27. 4.12 EOS40D撮影)


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