マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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峰寺当家の祝い唄

2012年12月25日 07時48分33秒 | 山添村へ
大正4年に記された『東山村神社調書(写し)』文中の社記によれば祭祀の日は旧九月二十七日が神前で行われる祭儀の日だった。

いつの時期であるのか聞き取りはできていないが、現在は10月15日である。

その調書によれば「祭儀を終えて退社した渡り衆は当家に上がり込む。その際には竹枝に御幣紙を付箋したものを手にした人が当家の家先で出迎える。そのときに御幣付きの竹を一本ずつ渡り衆に手渡す。先導しながら当家の家に上がり込む」。

「あきのくに いつくしまの べんざいてんの ねじろやなぎ あらわれにけり げにもそよそよ いざやおがまんを繰り返し唱和しながら上がり込む」。

これを「踊り込み」と呼ぶ。

高膳の盛られたお米と小豆を手にする楽人たち。

竹を振りながらそれらを撒き散らす。

「祭り日には毎年能師を招いて能楽を奏する例」とするとある。

翌日の旧二十八日には「帰り夜宮と称して御幣元より当家へ向け楽人を向う為七度半の使いを立て、是より御幣元宅へ楽人着座し大の御幣弐木を調製し、その日の午後は御幣元となる出生男子母と共に先登し、父を御幣を男子の頭上に差掛け、次に楽人の一老が御幣を構え各楽人が次につく。神前に礼拝儀式を行い、終りて帰途に御幣元宅より竹枝に付箋もの10本を構えて出迎えた」。

そして同じように「あきのくに いつくしまの べんざいてんの ねじろやなぎ あらわれにけり げにもそよそよ いざやおがまんの歌を繰り返し歌いこみつつ座に着いた」。

さらに「座に着いた楽人は酒肴を供させられ一天四海波の謡を唄い、一同起立して御幣元宅を退座した」。

それから「当家へ帰り楽装を脱衣し、生心落としと称して酒肴の饗応を受けた」とある。

六所神社で神さんに奉田楽を奉納した渡り衆は再び来た旧道を戻っていく。

奉納を終えたにも関わらず鳴り物を鳴らしながらである。

渡り衆にとっては祭りはまだ終えていない。

奉納を終えた渡り衆を迎える当家。

親戚筋の人が一人、一人に幣を付けた竹を手渡す。

そして提灯を手にして先導する。

「あきのくに いつくしまの びざいてん ねじろのやなぎ あらわれにけり げにもそよそよ いざやおがまん いざやおがまん」と唱和しながら縁側から座敷に上がり込む。

座敷には高膳に盛られたお米と小豆。

それを手にして右回り。

竹を振りながら「ふーくのたーね(福の種) ご-ざった ご-ざった  なーんのたーね(何の種) まーきましょ ふーくのたーね まーきましょ たからをまーきましょ」と目出度い台詞を詠いながらお米と小豆をばら撒く。



調書に書かれてあった「踊り込み」の様相である。

これは「ウタヨミ」とか「オドリコミ」とされる当家祝いの歌である。

五穀豊穣の目出度い台詞が当家に響き渡ること3周。

隣村の室津や桐山でも同じような所作の「オドリコミ」である。

座敷は福の種が一面に広がった。

その場を奇麗に方付けて慰労の場。

装束も仕舞われた当家の座敷はご馳走の皿がずらりと並ぶ。

奉納のすべてを終えた舞人の席は慰労を込めた膳が盛りだくさん。



当家当主は座席に渡り衆に対して厚く御礼を申し述べる。

渡り衆は当家のもてなしで膳をよばれるが家人はそうではない。

家で作った料理を他の部屋でよばれている。



昆布巻き、アゲとゼンマイの煮もの、コーヤドーフにマツタケメシなどオードブルの盛り合わせである。



宵宮もそうだったが祭り祝いのご馳走もよばれることになった両日の取材。

この場を借りて御礼申しあげる次第である。

渡り衆の慰労の場では大きな皿に盛った焼き鯛も召された。

それはダイビキだったようだ。

大皿に盛った鯛を引くということから「ダイビキ」と呼んでいると話す。

拝見することはできなかったが、その鯛は姿を替えて再び登場する。

半身を食べた鯛に皿は一旦引き上げられる。

それはもう一度焼かれる。

しばらくして出てきた鯛の皿。



そこに並々と熱いお酒を注ぐ。

皿から溢れんばかりの量だ。

それを持っていく手伝いさん。

一老の席に持っていった。

受け取った一老は酒を飲む。

次は二老へ。



八老まで順に次々と回す鯛の皿。

これを「タイシュ」と云う。

飲むときには一同が歌を唄う。



調書に書かれているように本来は四海波などの謡曲であるが唄える人はいない。

歌はなんでもいいのだと大漁唄も出る。

「あれわいせー これわいせー」と手拍子で囃子たてる作法は「ザザンダー」。

祝いの席の目出度い回し飲みの歌唄いは東山中で広く行われている。

(H24.10.15 EOS40D撮影)


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