2022.9 山梨・昇仙峡を歩く
武田神社をあとにして県道31号線、県道6号線を西に走り、笛吹川に合流する荒川に沿った県道7号線を北上する。山が迫ってくる。県道7号線は昇仙峡ラインと呼ばれ、荒川上流にはおよそ6kmに渡る渓谷=昇仙峡が続く。景勝地として人気だが、訪ねるのは初めてである。
県道7号線=昇仙峡ラインは荒川に架かった長潭橋を渡ると、荒川沿いのルートと東のグリーンラインに分かれる。荒川沿いルートは平日上りだけの一方通行、土日祝日車両通行止めになる。グリーンラインを走る。グリーンラインからは渓谷は見えない。
荒川に架かる静観橋を渡り、昇仙峡ロープウェイの駐車場に車を止め(写真)、昇仙峡ロープウェイでパノラマ台に向かった。往復1300円のロープウェイは、乗り口の仙娥滝駅あたりの標高が700m、降り口のパノラマ台駅あたりが1010m、標高差310m、全長1015mを5分で上る。
ロープウェイから眺めると、荒川ダム・能泉湖が見える(写真)。ロック式ダムのようで、湖手前の斜面が長い石積みになっている。
能泉湖の先は緑の山また山が限りなく続いている。緑の山あいが湖の源流であろう。
パノラマ台駅に着くと、展望台からたなびいた雲の上に勇姿を見せる富士山を遠望できる(写真)。富士山の遠望だけでもロープウェイで上ってきた甲斐があったと思う。左右対称の稜線が実にきれい、しばし眺める。
展望台から山道が延びている(写真)。15分ほど歩くと標高1058mの弥三郎岳に登れるらしい。弥三郎岳までの標高差は50mほど、楽に登れそうである。山道は岩盤のように堅く、乾いた表層の砂が滑りやすい。ゆっくり歩く。
岩の隙間や岩の切れ目の表土から樹木が勢いよく伸びていて、木の生命力に感心させられる。木々のあいだから山並みが遠望できるが、山道は狭く崖が深いので気を抜けない。
10数分歩くと巨大な岩盤が立ちふさがる(次頁写真)。この岩盤が弥三郎岳山頂らしい。岩盤に凹みがえぐられていて、鎖を頼りに岩盤を登る。岩盤に根付いた松の木が、まるで鳥居か三門のように伸びだしている。松の枝をくぐり、弥三郎岳山頂に出る。
驚いたことに、巨大な岩盤の頂部はお椀を伏せたように丸くなっていた。手すりはない。丸くなった岩盤頂部は滑りそうで、膝の不安があると足がすくむ。
なんとか踏ん張り、360度の風景を眺める。ほぼ真南に富士山が雲から頭を出している(写真)。西には甲斐駒ヶ岳?・・、北には八ヶ岳?・・、東には甲武信ヶ岳?・・の山並みがぐるりと囲んでいる。見下ろすと山裾に街並みが見えている。
360度の展望を眺めるが、足下が落ち着かない。深呼吸もそこそこに、おそるおそる岩盤を下る。松の枝をくぐり、鎖につかまり降りきった。
山道を引き返す。見晴らしのいいところで、同年配の夫婦が眺めを楽しみながら持参のおにぎりを食べていた。ホッとしたせいか空腹を感じた。昇仙峡ロープウェイを下り、駐車場近くの食事処をのぞいたが、昼どきのせいか混み合っていた。
車で静観橋まで下る。静観橋手前に仙娥滝入口があり、隣に食事処があったので、食事処に車を入れる。昇仙峡は蕎麦と水晶の里だそうで、手打ち蕎麦を食べる。
仙娥滝入口から渓谷に沿って遊歩道が整備されている。遊歩道を歩き始めると石の鳥居が建っている。昇仙峡マップには昇仙峡ロープウェイのさらに北に夫婦木神社、金桜神社が記されているから、渓谷沿いの遊歩道は神社の参道だったかも知れない。
遊歩道は岩肌を見せた崖が迫っている。少し下ると豪快な音を立てる滝が現れた。仙娥滝である(写真)。地殻の断層を荒川が流れ落ち、高さ30mの滝になったそうだ。しぶきが飛んで来そうな勢いがある。マイナスイオンをたっぷり吸い込む。
遊歩道をさらに下り、荒川に架かった昇仙橋を渡る。遊歩道は対岸に移る。荒川の両側は切り立った岩盤である。
見上げると切り立った岩が天を突くように見える(写真)。昇仙峡マップには覚円峰と書かれている。昔、畳数枚の広さの頂上で僧侶覚円が修業したので名づけられたそうだ。先ほど登った弥三郎岳山頂をイメージすると、気持ちを集中しないと頂上から滑り落ちるであろうから、修業の厳しさが想像できる。
川には大きな岩がごろんごろんしている(写真)。今日の荒川は岩に遠慮するように白いしぶきを上げながら流れている。だが大雨で勢いのついたときは、流れが岩を砕き、岩を転がすのであろう。荒川と名づけられたのが納得できる。
石門と呼ばれた岩が遊歩道を覆っている(写真web転載)。左の崖から岩盤がはがれ落ち、はがれた岩盤を右の大岩が支えているように見える。
記念写真にカメラを構える人が多いが、触らぬ神に祟りなし、急ぎ足で石門を抜ける。
石門の先に長田円右衛門の碑がある(次頁写真)。1800年代、山を切り、谷を割って昇仙峡新道を切り拓いた人物だそうだ。荒川両岸の岩盤を見ると、新道開削が困難を極めたであろうことが想像できる。
碑の先は柵で立入禁止になっていた。落石の恐れがあるそうだ。石門のような岩盤が剥落してきたら逃げようがない。素直にUターンし、石門を抜け、切り立った岩盤を眺め、覚円峰を見上げ、仙娥滝でマイナスイオンを浴び、車に戻る。
昇仙峡は6kmに渡る渓谷美がうたい文句なのに、通行止めで20分、1kmほど=往復35分、2kmほどしか歩いていない。昇仙峡マップを見ると、昇仙峡の始まりは長潭橋あたりで、橋の先に昇仙峡口バス停、橋の手前に天神森バス停と天神森市営無料駐車場がある。
グリーンラインを下り、天神森市営無料駐車場に車を止める。ここから荒川に沿った平日一方通行、土日祭日通行止めの道路を歩く。道路は一方通行だがすれ違える広さがある。グリーンラインができる前は、ここが県道7号線=幹線道路だったようだ。
仙娥滝あたりは荒川両側の切り立った岩盤が迫っていたが、天神森あたりは切り立った岩盤はなく、斜面は林で覆われ、川沿いに大岩、奇岩が続いている(写真)。大岩・奇岩には亀石、大砲岩、オットセイ岩、トーフ岩など、言われればそう見えなくもないと思える名がつけられている。
名前のついた大岩・奇岩を眺めながら15分ほど歩く。仙娥滝あたりの遊歩道は大勢が散策していたが、天神森側は誰とも会わない。単調な風景を15分=往復30分ほど歩いて車に戻った。
今日の宿は湯村温泉である。県道7号線を下り30分ほどで宿に着いた。湯村温泉は弘法大師が1200年前に開湯し、武田家も湯治に利用したといわれる。泉質はナトリウム・塩化物泉である。塩分は殺菌効果があるから、武田家の武将は戦いの傷を湯村温泉で癒やしたのかも知れない。
透明で、臭いはほとんど感じない。塩分のせいか肌がすべすべする。弥三郎岳を登った足をよく揉みほぐす。夕食では山梨のワイン蒼龍と地酒七賢をいただいた。快食、快飲し、快眠する。 (2023.6)
武田神社をあとにして県道31号線、県道6号線を西に走り、笛吹川に合流する荒川に沿った県道7号線を北上する。山が迫ってくる。県道7号線は昇仙峡ラインと呼ばれ、荒川上流にはおよそ6kmに渡る渓谷=昇仙峡が続く。景勝地として人気だが、訪ねるのは初めてである。
県道7号線=昇仙峡ラインは荒川に架かった長潭橋を渡ると、荒川沿いのルートと東のグリーンラインに分かれる。荒川沿いルートは平日上りだけの一方通行、土日祝日車両通行止めになる。グリーンラインを走る。グリーンラインからは渓谷は見えない。
荒川に架かる静観橋を渡り、昇仙峡ロープウェイの駐車場に車を止め(写真)、昇仙峡ロープウェイでパノラマ台に向かった。往復1300円のロープウェイは、乗り口の仙娥滝駅あたりの標高が700m、降り口のパノラマ台駅あたりが1010m、標高差310m、全長1015mを5分で上る。
ロープウェイから眺めると、荒川ダム・能泉湖が見える(写真)。ロック式ダムのようで、湖手前の斜面が長い石積みになっている。
能泉湖の先は緑の山また山が限りなく続いている。緑の山あいが湖の源流であろう。
パノラマ台駅に着くと、展望台からたなびいた雲の上に勇姿を見せる富士山を遠望できる(写真)。富士山の遠望だけでもロープウェイで上ってきた甲斐があったと思う。左右対称の稜線が実にきれい、しばし眺める。
展望台から山道が延びている(写真)。15分ほど歩くと標高1058mの弥三郎岳に登れるらしい。弥三郎岳までの標高差は50mほど、楽に登れそうである。山道は岩盤のように堅く、乾いた表層の砂が滑りやすい。ゆっくり歩く。
岩の隙間や岩の切れ目の表土から樹木が勢いよく伸びていて、木の生命力に感心させられる。木々のあいだから山並みが遠望できるが、山道は狭く崖が深いので気を抜けない。
10数分歩くと巨大な岩盤が立ちふさがる(次頁写真)。この岩盤が弥三郎岳山頂らしい。岩盤に凹みがえぐられていて、鎖を頼りに岩盤を登る。岩盤に根付いた松の木が、まるで鳥居か三門のように伸びだしている。松の枝をくぐり、弥三郎岳山頂に出る。
驚いたことに、巨大な岩盤の頂部はお椀を伏せたように丸くなっていた。手すりはない。丸くなった岩盤頂部は滑りそうで、膝の不安があると足がすくむ。
なんとか踏ん張り、360度の風景を眺める。ほぼ真南に富士山が雲から頭を出している(写真)。西には甲斐駒ヶ岳?・・、北には八ヶ岳?・・、東には甲武信ヶ岳?・・の山並みがぐるりと囲んでいる。見下ろすと山裾に街並みが見えている。
360度の展望を眺めるが、足下が落ち着かない。深呼吸もそこそこに、おそるおそる岩盤を下る。松の枝をくぐり、鎖につかまり降りきった。
山道を引き返す。見晴らしのいいところで、同年配の夫婦が眺めを楽しみながら持参のおにぎりを食べていた。ホッとしたせいか空腹を感じた。昇仙峡ロープウェイを下り、駐車場近くの食事処をのぞいたが、昼どきのせいか混み合っていた。
車で静観橋まで下る。静観橋手前に仙娥滝入口があり、隣に食事処があったので、食事処に車を入れる。昇仙峡は蕎麦と水晶の里だそうで、手打ち蕎麦を食べる。
仙娥滝入口から渓谷に沿って遊歩道が整備されている。遊歩道を歩き始めると石の鳥居が建っている。昇仙峡マップには昇仙峡ロープウェイのさらに北に夫婦木神社、金桜神社が記されているから、渓谷沿いの遊歩道は神社の参道だったかも知れない。
遊歩道は岩肌を見せた崖が迫っている。少し下ると豪快な音を立てる滝が現れた。仙娥滝である(写真)。地殻の断層を荒川が流れ落ち、高さ30mの滝になったそうだ。しぶきが飛んで来そうな勢いがある。マイナスイオンをたっぷり吸い込む。
遊歩道をさらに下り、荒川に架かった昇仙橋を渡る。遊歩道は対岸に移る。荒川の両側は切り立った岩盤である。
見上げると切り立った岩が天を突くように見える(写真)。昇仙峡マップには覚円峰と書かれている。昔、畳数枚の広さの頂上で僧侶覚円が修業したので名づけられたそうだ。先ほど登った弥三郎岳山頂をイメージすると、気持ちを集中しないと頂上から滑り落ちるであろうから、修業の厳しさが想像できる。
川には大きな岩がごろんごろんしている(写真)。今日の荒川は岩に遠慮するように白いしぶきを上げながら流れている。だが大雨で勢いのついたときは、流れが岩を砕き、岩を転がすのであろう。荒川と名づけられたのが納得できる。
石門と呼ばれた岩が遊歩道を覆っている(写真web転載)。左の崖から岩盤がはがれ落ち、はがれた岩盤を右の大岩が支えているように見える。
記念写真にカメラを構える人が多いが、触らぬ神に祟りなし、急ぎ足で石門を抜ける。
石門の先に長田円右衛門の碑がある(次頁写真)。1800年代、山を切り、谷を割って昇仙峡新道を切り拓いた人物だそうだ。荒川両岸の岩盤を見ると、新道開削が困難を極めたであろうことが想像できる。
碑の先は柵で立入禁止になっていた。落石の恐れがあるそうだ。石門のような岩盤が剥落してきたら逃げようがない。素直にUターンし、石門を抜け、切り立った岩盤を眺め、覚円峰を見上げ、仙娥滝でマイナスイオンを浴び、車に戻る。
昇仙峡は6kmに渡る渓谷美がうたい文句なのに、通行止めで20分、1kmほど=往復35分、2kmほどしか歩いていない。昇仙峡マップを見ると、昇仙峡の始まりは長潭橋あたりで、橋の先に昇仙峡口バス停、橋の手前に天神森バス停と天神森市営無料駐車場がある。
グリーンラインを下り、天神森市営無料駐車場に車を止める。ここから荒川に沿った平日一方通行、土日祭日通行止めの道路を歩く。道路は一方通行だがすれ違える広さがある。グリーンラインができる前は、ここが県道7号線=幹線道路だったようだ。
仙娥滝あたりは荒川両側の切り立った岩盤が迫っていたが、天神森あたりは切り立った岩盤はなく、斜面は林で覆われ、川沿いに大岩、奇岩が続いている(写真)。大岩・奇岩には亀石、大砲岩、オットセイ岩、トーフ岩など、言われればそう見えなくもないと思える名がつけられている。
名前のついた大岩・奇岩を眺めながら15分ほど歩く。仙娥滝あたりの遊歩道は大勢が散策していたが、天神森側は誰とも会わない。単調な風景を15分=往復30分ほど歩いて車に戻った。
今日の宿は湯村温泉である。県道7号線を下り30分ほどで宿に着いた。湯村温泉は弘法大師が1200年前に開湯し、武田家も湯治に利用したといわれる。泉質はナトリウム・塩化物泉である。塩分は殺菌効果があるから、武田家の武将は戦いの傷を湯村温泉で癒やしたのかも知れない。
透明で、臭いはほとんど感じない。塩分のせいか肌がすべすべする。弥三郎岳を登った足をよく揉みほぐす。夕食では山梨のワイン蒼龍と地酒七賢をいただいた。快食、快飲し、快眠する。 (2023.6)
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