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【DOL】国民投票で国論二分の大問題を決めることのリスク

 ダイヤモンド・オンライン『山崎元のマルチスコープ』に、「国民投票で国論二分の大問題を決めることのリスク」と題する記事を書きました。

 英国のEU離脱を問う国民投票で「ブレグジット」が可決されました。
 この結果が、英国及び世界にどのような帰結をもたらすのかは、今のところ「よく分からない」と言うしかありません。
 しかし、ブレグジット以降の金融市場では、どこかの国でEU離脱に向けた国民投票の「気運が高まる」だけで資本市場が反応を始め、大手金融機関のバランスシートに生じた修復不可能な歪みが表面化してしまう可能性があります。
 世界経済は、言わば、いつ発作が襲うか分からないような慢性病の病巣を欧州に抱えており、致命的な発作につながりかねない症状の進行を見せたのが、今回のブレグジットの可決です。

 国民投票後の英国民の間では、EU離脱への賛否を巡って深刻な対立感情が残ったようにも見えますし、スコットランド独立問題が再燃する可能性も生じています。いずれも、キャメロン氏が国民投票という手段を採らなければ、直ちに表面化することは無かったはずです。
 国論を二分するような問題を国民投票に掛けてはいけない、ということなのか、国論が二分される大問題である以上国民投票で決めるのが正しいということなのかは、政治家の信条に関わる問題です。
 キャメロン氏は、国民を説得できるはずだと考え、まさか負けるとは思っていなかったのでしょう。

 今回の英国の「民意」には、二種類の説明の可能性があります。

 一つは、個人間の大きな経済「格差」が顕在化して、固定してきた、という印象を多くの人が持つ場合、「経済全体にとって得なこと」が選択されなくなる可能性が、大いにあるということです。
 可能性のもう一つは、自分も損をすると分かっていても、儲けている連中が損をすることが望ましいと思う、一種の処罰ないしは嫉妬の感情を持ったことが挙げられます。

 今回の英国の状況は、次の大統領選挙に向けて米国が直面している状況と似ている可能性がありますし、経営者の報酬ばかりを引き上げる一方、ROE向上に圧迫されて一般社員の賃金が上がりにくい現在の日本企業と社会にあっても、遠からず問題となる状況かも知れません。
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