3月4日、参議院予算委員会で一般質疑をしました。当初安倍総理大臣出席ということで質問内容を作っていましたが、予算委員会理事会でこの日は麻生財務大臣以下担当大臣に対する質疑ということで、ちょっと調子がくるってしまいました。というのは、成長戦略、規制改革などの場合、担当役所が重なりその調整をするためには、総理大臣に質問し、答弁を求めることが短時間に効率よく役所間の調整をすることにつながるからです。
この日の質問項目は、①ICT社会における成長戦略として ②最近の金融、株式、資源市場の動向と政府の対応でした。
ICT社会における成長戦略に関しては、日本の半導体、通信機器産業の競争力衰退事例を参考に、日本の自動車産業の課題を議論しました。世界的水平分業と標準化、ブランド化、システム全体を管理する基本ソフト(OS)における競争力などの点で劣後したスマートフォーン生産・販売などの失敗を繰り返さないために、次世代自動車育成への課題を議論しました。特に電気自動車及び完全自動運転が実現した場合、自動車の生産、販売、サービスが「スマートフォン」と同様の競争環境になる可能性があります。特に誰が完全自動運転のOSを支配し、誰が自動車の企画設計を行うかによって、日本の既存自動車メーカーが単なる部品供給者や委託生産者の地位に甘んじる可能性があります。
政府では、自動運転の特区を作りましたが、各役所の縦割りやジュネーブ条約により、レベル4という完全自動運転の法律的な枠組みがありません。どのように法的枠組みを作っていくか、また自動運転の規格標準化のために必要な国際会議への支援体制を質問しました。米国運輸局では、グーグル自動運転人口知能(AI)を運転者として認定しようとしていますが、ジュネーブ条約上の運転者は自然人である必要があるか、それとも人工知能を認めるかに関してはまだ確定していないというのが外務省の見解でした。日本は、このジュネーブ条約の解釈や修正を行う委員会の正式メンバーではなく蚊帳の外でしたが、やっと次回の会議からの正式参加が決まったばかりです。その意味で、民間の自動車メーカーを支援する国の体制、特に日本の意向を国際標準に打ち出していく政府の体制は米国やドイツ、フランス等に比べてまだまだであることを認めざるを得ません。政府の成長戦略とは、このような面でも改善すべきということを主張しました。
成長戦略としては、他に教育における黒船といわれる「MOOC(大規模オンライン講座)」への政府の支援策を議論しました。更に海外からの観光客の増加、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会を前に航空保安における国の責務の強化を議論しました。
次の最近の金融、株式、資源市場の動向と政府の対応に関しては、日本銀行のマイナス金利政策導入とその効果を検証しました。金融機関にとっては、突然のマイナス金利の導入となり、マイナス金利に対する金融機関のシステム対応が追い付かなく一部混乱が見受けられました。またMMFなど金融商品の一部は販売中止に追い込まれています。更には、年金会計で予定利率をマイナス金利を採用した場合の会計やシステム対応など種々複雑な問題があることを指摘しました。欧州中銀の場合、マイナス金利採用に当たり、かなり前からその可能性を言及して、混乱を回避しようとしていましたが、黒田日銀総裁は、サプライズを演出するという策に今回は溺れた感があります。実際株式市場や為替市場においてはサプライズ効果はほとんどなく、日経平均や為替相場は行って来いで市場の不安定さがますばかりでした。
マイナス金利の効果に対しても議論しました。黒田日銀総裁は再三にわたってイールドカーブが低下して貸出が伸びると説明していますが、住宅ローン金利は低い金利への借り換えが主であり、また金利が低下しても企業の資金ニーズの伸びは今のところ見られないという状況です。それより350兆円に上る大企業の内部留保金を使わせるための直接的な効果として、企業の大口預金にマイナス金利を付けた方が有効です。この点、内部留保を使わせるべきだが持論の麻生大臣に質問しましたが、金融行政を統括する金融大臣も兼務している麻生大臣の物言いは慎重でありましたが、最終的にはメガバンクがマイナス金利を導入することは容認するとの発言を引き出しました。
この項目の最後ですが、マイナス金利付き量的質的金融緩和を始めたわけですが、日本経済と日本国民に大混乱や塗炭の苦しみを押し付けることなく出口戦略が可能か議論しました。金利が2%上がるだけで27兆円の日銀の損失が発生し、銀行は役14兆円の損失。ほとんどの新規国債は日銀が買っていますが、それを買わなくなった時、値段が下がる可能性がある国債をだれが大量に買うのか、その時国債の暴落につながり、金利は更に上がり、日銀と銀行の損失は急拡大ということに対して、どのようなソフトランディングがあるか議論する予定でした。途中で時間となり、この続きは財政金融委員会で議論したいと思います。
フィッシャー・ダラス連銀総裁は、イーグルスのホテルカリフォルニアの歌詞を念頭にホテルカリフォルニア的金融政策のリスクに言及した。「あなたはいつでもチエックアウトできる。でも二度とここから離れられない。」 任期が後二年になった黒田総裁は、2018年春にはチェックアウトできるかもしれませんが、日本銀行は二度とここから離れることができないということの恐ろしさを感じざるを得ません。
新聞報道等
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