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2%物価目標の正体は、コスト・プッシュ・インフレと資産インフレ。その時、生活は?

2013年05月03日 | Weblog

  黒田日銀総裁就任後に打ち出された量的・質的金融緩和の発表から一ヶ月が経過しようとしているが、金融市場、為替市場、株式市場は落ち着きを取り戻し次の展開を模索しようとしている様に見える。

 異次元緩和に対して、先ず金融市場が反応し、その後実物経済にまで金融緩和の効果が及んで来るのか慎重な観測が必要である。そこでマスコミ等であまり報道されない側面の経済分析を少し展開しようと思う。

 先ず今年の後半には、消費税引き上げの閣議決定が行われ、来年4月より消費税が3パーセント上がることになる。約8兆円の増税である。またアベノミクスにより、為替が20パーセントほど円安に振れ、このことにより約12兆円(輸入金額75兆円で外貨建ては約8割、輸入量は一定という単純化した場合の計算)ほどの輸入価格の上昇要因となる。消費税と輸入価格上昇の合計が、20兆円ということから、日本の現在のGDP475兆円にとり4.2パーセントのコスト・プッシュ・インフレの要因となる。勿論これらのコスト・プッシュ要因は、様々な企業や団体などの生産、流通、販売などの過程で合理化、利益減少などの要因で吸収され、100パーセント最終消費財に転嫁されることはないが、転嫁の度合い次第では、それだけで2パーセントのインフレ目標が達成可能となる。一方、転嫁できない分のコスト上昇は、競争力の劣る中小零細企業が負担することになり、円安不況、消費増税不況になる恐れがあることだ。

  次に、リーマンショック以降今も続く日本経済の需給ギャップ対策に関連してである。黒田日銀の異次元の量的・質的金融緩和が、円安や消費税引上げによる4.2%のコスト増加要因をある程度転嫁できるよう総需要を喚起するための政策ということであれば、異論はない。しかしその副作用も十分に認識しておく必要がある。日銀の緩和政策は、超金融緩和と2%のインフレ目標ということで、マイナスの短期金利を作ることに他ならない。マイナスの金利は、高いレバレッジ(大量に資金調達をすること)が可能な資産家、大手企業、ヘッジファンド等には大変有利である。マイナスの金利で資金を調達して、その資金が株式市場やJーREIT等の不動産市場に流入すれば資産インフレを起すことになる。資産インフレは、家計や企業の購買力を増加させ、景気の刺激に一役買うことになろう。一方、デフレ下で知らず知らず預金の価値が上がっていた預金者にとっては、反対の結果となる。国民全体の純預金が、1150兆円に達するが、マイナス2%の実質金利で23兆円のインフレ増税となり、純預金総額とほぼ同じ総額の公的債務(1100兆円)の実質金額の減少となる。

 ここまでコスト・プッシュ・インフレと資産インフレを説明し、二つのパスを通じてインフレ目標2%が、2年後に達成する道筋を分析した。果たして、この目標が期限内に達成できるかは今後の日銀の政策次第であろうが、これらの政策を通じてどのような社会的影響があるか分析しておくことは、我々政治家にとって重要な課題である。

 私が重要であると主張するのは、コスト・プッシュ・インフレを負担する人と資産インフレによるプラスの影響を享受する人が違い、その結果社会の格差を拡大し、社会の安定性を阻害する可能性があることである。私は、デフレや超円高からの脱却のための量的・質的金融緩和に決して反対する立場ではないが、異次元緩和には強烈な副作用があることを認識して、その副作用が社会的弱者に最も強く及んでいくことを放置しないように主張するものである。米国で一時流行した「1%vs.99%」といったウォールストリートや超金持ちに対する一方的な批判に、組するものではありませんが、長期かつ行き過ぎた金融緩和には、「資産上位1%対残りの99%」といった社会の分断を生むリスクがあることを承知して、異次元緩和という劇薬を使う必要があると黒田日銀総裁に警鐘を鳴らしたい。その意味で、黒田日銀総裁の口から異次元緩和の出口戦略や金融システム不安解消策など、具体的な政策をもっと聞きたいものである。また安倍政権には、本格的な中小零細企業対策、社会保障や社会的弱者対策を期待する。


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