前参議院議員大久保勉 公式ウェブサイト

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巨額の年金資金が消失したAIJ投資顧問問題とその広がりを考える。

2012年02月25日 | Weblog
 昨日突然明らかになったAIJ投資顧問会社の企業年金2000億円が消失した問題の対応に追われました。この問題は、AIJ投資顧問の不正運用の問題にとどまらず、年金の老齢化と運用環境の悪化等による年金財政悪化が背景にあり、どうしても高い運用利回りを謳うオルタナティブ運用の新興投資顧問会社に頼らざるを得ないことにあります。昨年の財政金融委員会で、倒産したダビンチ投資顧問の不動産エクイティに年金の大半の資金を投資して多額の損失を出した九州の年金基金の問題を採り上げました。その後金融庁や厚生労働省と総合型厚生年金基金の運用の問題に関して問題提議をし続けていました。しかし今回の事件を見て、金融庁、特に厚生労働省年金局の対応の遅れや不作為に憤りを超えて、呆れている状況です。
 おそらくAIJ投資顧問の問題は、他の問題に波及して社会問題になると見られます。先ず金融庁が一斉検査を行う投資顧問会社の中に、AIJ投資顧問と同じように不適切な運用報告、不正な運用、資金の流用等を行っている会社が出て来るかどうかで、この事件の損害の大きさが決まります。次に投資顧問業は、規制緩和で免許制から登録制に変わりましたが、日本の金融行政そのものが性善説の伝統で運営されており、欧米の性悪説に基づいた多大な権限・人員を擁する証券等監視委員会を持っていないことです。その結果新興投資顧問業の実態が本当に掌握されているか疑問です。
 更に厚生労働省に関連しますが、資金を運用委託した企業年金基金の制度的な問題です。トラック、タクシー、ガソリンスタンド、建設、製造業、自動車整備、繊維工業、家具、ダンボールなどそれぞれの都道府県業界の中小企業で構成する企業の厚生年金基金制度は、高度成長期に作られましたが、業界の老齢化、運用環境の悪化があります。また相変わらず社会保険事務所等から年金基金へ専務理事等で天下りしますが、これらの人々は年金制度の専門家であっても、資金運用は全くの素人である点です。更に年金基金の理事長や理事は、業界団体の役員が自動的に就任することが慣例で、年金基金の運用はほとんど信託銀行等の受託金融機関に任せになっているか、投資顧問会社の高い利回りという謳い文句を何ら専門的な検証もせず資金をつぎ込んでいるというのが実態です。また90年代からの規制緩和の時流に乗り、安全運用・分散投資規制が事実上撤廃される一方、米国では年金の受託者責任、プルーデントマンズ・ルールなど年金の受給者を権利を守るエリサ法制(従業員退職所得保障法)が確立しているのに、日本の厚生労働省や金融庁は、日本版エリサ法制を確立するのを放置し続けたことが問題です。私は、日本版エリサ法制に関して、一年以上も厚生省年金局や金融庁に問題提議をしていますが、ほとんど手がついていないことが厚生労働省のある課長と確認して、昨日明らかになりました。
 最後になりますが、今回の問題の最大の犠牲者は、トラック、タクシー、ガソリンスタンド、建設、自動車整備等の全国何処にでもある典型的な中小企業の従業員やその退職者、そして社長さんです。突然一通の手紙が来て、「あなたの年金は、来年から月々○万円減額になります。」とか、「業界の年金基金は解散することが決定されましたが、解散にあたり貴社では従業員一人当たり○百万円、合計○千万円万の拠出金を払ってもらうことになります。もし一括して払えない場合には、10年間で分割返済を認めますが、一括返済できなかった他社分の支払いも担保するために全債務の残高○○億円に関して連帯保証を入れてもらうことになります。」といったことが現実になる可能性があることです。最悪の場合には、年金債務の支払いのために倒産、廃業を余儀なくされる中小企業が出てきて、ある地域では生活圏に一件もガソリンスタンドやタクシー会社がなく、住民の生活にも影響が出てくることです。その意味では、企業年金基金の問題を厚生労働省年金局内で放置させることなく、与党が確り対策を練っていく必要があると痛感しています。来週か、再来週には、政策調査会の下に何らかのワーキング・チームや検討小委員会など立ち上げ、政治主導でこの問題の対策を練りたいと思います。

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