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崖の上のポニョ


監督 宮崎駿
出演(声) 奈良柚莉愛 土井洋輝 山口智子 長嶋一茂 所ジョージ

 今まで「空を飛ぶ」にこだわっていた宮崎監督が、空を離れ、海に行った。この映画に空を飛ぶシーンはない。宮崎監督のアニメでは初めてではないだろうか。
 いちおうストーリーはある。アンデルセンの「人魚姫」をモチーフにしたもの。魚の子のポニョが、崖の上の家に住む、5歳の少年宗介と知り合い、宗介を好きになる。自分も宗介と同じ人間になりたいと、海を離れ、宗介の持つポリバケツに住む。ポニョを海に戻そうと、ポニョの父フジモトが小型の台風を発生させ、津波を起して、宗介の住む町を水浸しにする。
 と、いうストーリーはあまり気にしなくていいだろう。観客は、宮崎監督の創りだしたイメージを素直に受け止めればいい。CGを使わず手描きのアニメは「絵」が動くという、アニメの原点に回帰した素朴な味わいがある。
 宗介の住む町は瀬戸内海沿岸の町と思われる。内海だ。行き交う船も1000トン以下の小型が多い。そのおだやか海も、フジモトの魔法で、突如津波が発生して、町が海に没する。その海はデボン紀の生物が遊泳する海と化す。水没した横断歩道の白黒ダンダラの上を、ダンクルオステウスが悠々と泳ぐ。
 楽しい映画ではあるが、実はすごく恐ろしい映画だ。おだやかな瀬戸内の海も、ひとつ間違うと、牙をむいて襲ってくる。しかも、その海はデボン紀、カンブリア紀といった古代から連綿と続いている海なのだ。人間ごときがかなうはずがない。
 宗介がポニョと知り合ってなかったら、町は水没しなかっただろう。宗介の父耕一は内海航路の貨物船の船長だが、耕一の船「小金井丸」は八〇〇トンぐらいの鋼船なのだが、この程度の船なら、あんな大きな津波ならいちころだ。助かったのは奇跡だ。
 海は恐ろしいのだ。「触らぬ神に祟りなし」宗介はポニョに出会わなかった方が良かった。海にすむ美しいミノカサゴは猛毒を持っている。南の海にいるかわいいきれいなタコ、ヒョウモンタコは猛毒のテトロドキシンを持っている。解毒剤はない。かわいいタコだと思って手を出し、噛まれると、呼吸困難、心肺停止、死ぬ。
 知らない海の生き物には絶対に手を出してはいけない。
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