雫石鉄也の
とつぜんブログ
いらっしゃいませ
「お待ちどうさま」
ウェイトレスがビーフシチューをは持ってきた。ここのビーフシチューは肉がたっぷり入っている。濃い茶色のデミグラスソースの中には、大きな肉とじゃがいも、にんじん、玉ねぎといった野菜がゴロゴロ入っている。
「パンはすぐお持ちします。サラダはサラダバーでどうぞ」
パンが来た。パンは焼きたてらしくまだ熱い。ここのサラダバーは、野菜もドレッシングも多くの種類が用意してあり、目移りして楽しい。パンも自由におかわりできる。何種類ものパンをバスケットに入れて、持ってきてくれる。
「ごゆっくり」魅力的な笑顔を見せてウェイトレスが去って行く。ウェイトレスの笑顔も大きなサービスだ。この店はどのウェイトレスも魅力的な笑顔だ。
空の皿がテーブルに並んでいる。
「お下げいたします」
ウェイトレスが皿を下げる。皿が完全に空になれば、すかさず彼女たちが下げにくる。1卓のテーブルがあいた。次の客が案内されてくる。土曜日のお昼。家族連れが来る。小さな女の子と、もっと小さな男の子。お姉ちゃんと弟だろう。あと、お母さんとお父さん。家族4人テーブルに着く。メニューを囲んでワイワイ。「あたし、お子様ドリア」「ぼく、ハンバーグがいいな」「おれはステーキ。250gのサーロインだ」「わたし、エビフライランチ」
その家族の様子を見て、ウィトレスがやってくる。
「お決まりですか」
レストランに入って、なにを食べようか。迷っている時間が最も楽しい。この店はそういうこともよく判っている。客が決断した瞬間を絶対見逃さない。絶妙のタイミングでオーダーを聞きに来る。
オーダーが調理場に通って、料理が出来てもすぐ出さない。ここの調理場は極限まで調理が省力化合理化されているので、調理そのものの時間は非常に短い。ハンバーグ程度なら5分ほどで完成する。
料理を待っている時間も楽しいものだ。どんな味なのか楽しみ。ワクワク。このワクワクも大切なサービス。客の様子を子細に観察し、絶妙のタイミングで料理を出す。1秒遅れれば客は「まだかな」と思う。絶対、そう思わせない。
時間だけではない。料理そのものも完璧に計算されつくされている。このレストランに入った瞬間から、客ひとりひとりは特殊なセンサーで観察されている。もちろん客はそのことは知らない。センサーで得られた情報はデータ化され調理場のコンピュータに自動的に入力される。
料理の温度、食材の大きさ、そして味付け。それぞれの客の好みに100%適応した状態で料理は提供される。
最初のセンサーは店入口のマットだ。客がマットを踏むとあらゆるセンサーのスイッチがON。その客が最大限満足して支払いをすませ、店を出るまでが完璧に計算される。
風が吹く。店の駐車場のいちょうの木の葉が舞う。そのうちの数枚が店入口のマットの上に落ちる。ずいぶん久しく客が来ない。入口を入ったところの順番待ちの椅子も空だ。そこにいる案内係のウエィトレスは、無表情で立っている。彼女が笑顔をしなくなってかなりの時間が経過している。
ピ。入口センサーに反応があった。瞬間、案内係のウエィトレスが笑顔になった。
「いらっしゃいませ」
「お一人さまですか」
「ご案内いたします」
「メニューでございます」
なかなかオーダーを取りに行けない。不思議な客だ。あれから5時間。テーブルの上にはメニューがポツンと置かれている。
店の入り口で犬が1匹死んでいた。
もう、かなり前だ。いつぞやのクリスマスの1か月後、世界中で白い雪が降った。それから人類はインフルエンザにかかった。すべての人が死にいたるインフルエンザであった。
そのレストランは、いつ客が来てもいいように、ウエィトレス、ウエィター、レジ係、厨房のシェフ、すべてのスタッフが待機している。
「いらっしゃいませ」
案内係が笑顔で出迎えた。マットに上にはいちょうの木が倒れていた。そとはひどい風だ。
ウェイトレスがビーフシチューをは持ってきた。ここのビーフシチューは肉がたっぷり入っている。濃い茶色のデミグラスソースの中には、大きな肉とじゃがいも、にんじん、玉ねぎといった野菜がゴロゴロ入っている。
「パンはすぐお持ちします。サラダはサラダバーでどうぞ」
パンが来た。パンは焼きたてらしくまだ熱い。ここのサラダバーは、野菜もドレッシングも多くの種類が用意してあり、目移りして楽しい。パンも自由におかわりできる。何種類ものパンをバスケットに入れて、持ってきてくれる。
「ごゆっくり」魅力的な笑顔を見せてウェイトレスが去って行く。ウェイトレスの笑顔も大きなサービスだ。この店はどのウェイトレスも魅力的な笑顔だ。
空の皿がテーブルに並んでいる。
「お下げいたします」
ウェイトレスが皿を下げる。皿が完全に空になれば、すかさず彼女たちが下げにくる。1卓のテーブルがあいた。次の客が案内されてくる。土曜日のお昼。家族連れが来る。小さな女の子と、もっと小さな男の子。お姉ちゃんと弟だろう。あと、お母さんとお父さん。家族4人テーブルに着く。メニューを囲んでワイワイ。「あたし、お子様ドリア」「ぼく、ハンバーグがいいな」「おれはステーキ。250gのサーロインだ」「わたし、エビフライランチ」
その家族の様子を見て、ウィトレスがやってくる。
「お決まりですか」
レストランに入って、なにを食べようか。迷っている時間が最も楽しい。この店はそういうこともよく判っている。客が決断した瞬間を絶対見逃さない。絶妙のタイミングでオーダーを聞きに来る。
オーダーが調理場に通って、料理が出来てもすぐ出さない。ここの調理場は極限まで調理が省力化合理化されているので、調理そのものの時間は非常に短い。ハンバーグ程度なら5分ほどで完成する。
料理を待っている時間も楽しいものだ。どんな味なのか楽しみ。ワクワク。このワクワクも大切なサービス。客の様子を子細に観察し、絶妙のタイミングで料理を出す。1秒遅れれば客は「まだかな」と思う。絶対、そう思わせない。
時間だけではない。料理そのものも完璧に計算されつくされている。このレストランに入った瞬間から、客ひとりひとりは特殊なセンサーで観察されている。もちろん客はそのことは知らない。センサーで得られた情報はデータ化され調理場のコンピュータに自動的に入力される。
料理の温度、食材の大きさ、そして味付け。それぞれの客の好みに100%適応した状態で料理は提供される。
最初のセンサーは店入口のマットだ。客がマットを踏むとあらゆるセンサーのスイッチがON。その客が最大限満足して支払いをすませ、店を出るまでが完璧に計算される。
風が吹く。店の駐車場のいちょうの木の葉が舞う。そのうちの数枚が店入口のマットの上に落ちる。ずいぶん久しく客が来ない。入口を入ったところの順番待ちの椅子も空だ。そこにいる案内係のウエィトレスは、無表情で立っている。彼女が笑顔をしなくなってかなりの時間が経過している。
ピ。入口センサーに反応があった。瞬間、案内係のウエィトレスが笑顔になった。
「いらっしゃいませ」
「お一人さまですか」
「ご案内いたします」
「メニューでございます」
なかなかオーダーを取りに行けない。不思議な客だ。あれから5時間。テーブルの上にはメニューがポツンと置かれている。
店の入り口で犬が1匹死んでいた。
もう、かなり前だ。いつぞやのクリスマスの1か月後、世界中で白い雪が降った。それから人類はインフルエンザにかかった。すべての人が死にいたるインフルエンザであった。
そのレストランは、いつ客が来てもいいように、ウエィトレス、ウエィター、レジ係、厨房のシェフ、すべてのスタッフが待機している。
「いらっしゃいませ」
案内係が笑顔で出迎えた。マットに上にはいちょうの木が倒れていた。そとはひどい風だ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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落ちよりも、あまりに徹底したレストランの仕組みの話が怖った。ちと偏執的な感じがして、
これはマッドサイエンスものかと思いきや、
静かな落ちに終わる。
今年は僅かになりました。私はあと2日です。
明後日は半ドンみたいなものですが。
管理人さん、オペがあるから、よいお年を…てのもアレなんですが。来年は晩酌を楽しめるようになるから、やはり年になりますよ。
年を超えると、こちらのブログに投稿させて頂いて一年を越します。
また来年も宜しくお願いいたします。
私は、年明け早々手術です。1週間程度入院します。
では、アブダビさんも良いお年をおむかえください。
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