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マイ・フェア・レディ



監督 ジョージ・キューカー
出演 オードリー・ヘプバーン、レックス・ハリスン、スタンリー・ホロウェイ

 映画には2種類ある。現実をリアルに描いて、人間の業や社会の矛盾を観客につきつけて、考え込ませるもの。現実とはまったく違う、映画ならではの、夢のような世界をめくるめく映像で見せて、観客を一時、浮世の憂さから解放してくれるもの。本作は典型的な後者だ。20世紀初頭のイギリスの上流階級の世界を見せてくれる。
 下町の花売り娘イライザは言語学者ヒギンズ教授と知り合う。教授は友人のピカリング大佐と賭けをする。この下品な娘を半年で立派なレディに変えて見せる。イライザは教授の猛特訓を受ける。言葉使い、礼儀作法、立ち振る舞い。見事レディに変身したイライザは社交界にデビューする。
 お話はよく知られたストーリーだ。おとぎ話といっていい。下町のはすっぱな娘が、美しきレディに変身する話だ。ところがヘプバーンは映画の最初から最後まで美しい。花売り娘を演じていても、言葉使いこそ乱暴だが、可憐で美しい。なんの作品だったか忘れたが、吉永小百合がヤクザの娘を演じたことがあった。ヤクザっぽい言葉使いでタンカをきったりするが、吉永がそんなことをすると、見ていてなんだか痛々しかった。ヘプバーンの花売り娘も、ぜんぜん下品に見えない。逆に可愛い顔で乱暴な言葉を使うのがかわいい。
 圧巻はアスコット競馬場のシーン。イライザが社交界にデビューする場面だ。小生は学生時代に競馬場でアルバイトしていたから知っているが、日本の競馬場はご家族向けの行楽地の側面もあるが、濃い緑のジャンパー着て耳に赤鉛筆はさんだおじさんたちの鉄火場でもある。イギリスの競馬場は上流階級のサロンである。
 アスコット競馬場のシーンになると、画面がストップモーションで止まっている。登場人物、特に女性は白と黒を基調としたファッション。奥から着飾ったイライザが出てくる。白の黒の衣装。薫り立つようなヘプバーンの美しさだ。
 面白いのはヒギンズ教授のキャラ。決して人格者ではない。マザコンで、ひょっとするとゲイの気があるかも知れない。女嫌いの独身主義者。イライザのことを実験動物としか見ていない。その上自分に好感を持っている女性の気持ちが判らない朴念仁。
 ヘプバーンを楽しむ映画だといっていい。ともかく可憐で美しい、しかもけっこう演技がうまい。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
セリーヌ (減二)
2012-03-19 22:54:09
オードリーもいいけど、私はセリーヌがいいな!!
http://www.youtube.com/user/giailsoledalgange?feature=mhee
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間違えました。 (減二)
2012-03-19 22:57:33
間違えました。
なぜか、自分をコピーしてしまいました。

セリーヌです。
http://www.youtube.com/watch?v=WHmOJFqlYdg&feature=slpl
 
 
 
減二さん (雫石鉄也)
2012-03-20 04:47:50
そうですか。
 
 
 
プリンセスと花売り娘 (メリー)
2012-03-20 21:06:48
栗原小巻さんがイライザを演ったとき、。(歌が下手すぎたということはあったけど)同じようなことを言われたのを思い出しました。そのとき、南部圭一郎先生が、「後半のレディになってからの説得力が大事なのだから、彼女のようなプリンセス型を起用するのは正しい。」と言われたのが印象に残っています。
日本のオードリィ・吉永さんのおかしみは、彼女が周囲の状況を敢然と無視して「建前」を貫くところに生まれるので、「白雪姫」は悪くない企画だったとは思います。ただ、それが思いつきだけで脚本がもっと練られなかったのが失敗の原因だと思います。
 なお、ストップモーションは、コヴェントガーデンの朝のシーンでも使われていて、こちらの方が出来は良いと思いました。ジョージ・キューカーが舞台的効果をよく生かしている好例です。
 
 
 
メリーさん (雫石鉄也)
2012-03-20 21:33:56
そうですね。この映画の場合、前半の下町のはすっぱ娘と、後半のレディなら、後半の上品さの方が重要ですね。だから、柴咲コウのようなはすっぱな女優を使わない方がいいですね。そういう意味からこのヘプバーは適役でした。
ヘプバーンや吉永さんは、大竹しのぶのような演技者ではなく、スターですね。どの映画でもヘプバーンはヘプバーン、吉永さんは吉永さん。彼女たちは別に演技しなくても、個性だけで売り物になるので、スターではないでしょうか。
 
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