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バネ足ジャックと時空の罠


 マーク・ホダー  金子司訳   東京創元社

 大英帝国蒸気奇譚なるシリーズ名である。その名の通りの本家家元定番王道のスチームパンクである。舞台はもちろん19世紀英国はビクトリア朝である。
 主人公は「アラビアン・ナイト」の翻訳者として知られる、サー・リチャード・フランシス・バートン。高名な探険家にして言語学者、剣を取っては練達の剣豪。文武両道の豪傑である。
 このリチャード・バートンが首相から直々の依頼を受ける。バネ足ジャックなる怪人の正体を探ってくれ。協力者はマゾの詩人とスコットランドヤードの窓際警部。
 まずはビクトリア女王暗殺という大事件が異変のきっかけだった。人狼(ルーガルー)が人を襲い。竹馬に乗ったバネ足ジャックなる怪人が跳梁跋扈。このバネ足ジャックは、次々と10代の少女を襲う。どうもただのロリコン変態ではないみたい。この複数の被害少女にはある共通点が。
 石炭を燃料とする蒸気機関がメインの動力源の19世紀ロンドン。汚染された空には回転翼で空を飛ぶ椅子や飛行船。蒸気動力で走る馬車や自転車。おかしげな進歩をしているのは機械工学だけではない。優生学によって奇天烈な生き物が道具に使われている。飛行船を引く巨大白鳥。通信用には伝言インコと伝言犬がある。伝言を頼むと相手に確実に伝言してくれるのだが、少々欠点が。伝言犬は伝言すると猛烈な食欲を発揮する。山ほど餌を食べさせなくてはいけない。伝言犬に伝言を頼むとお金がかかる。伝言インコは、頼まれた伝言だけではなく余計なこともいう。悪口雑言、罵詈雑言、誹謗中傷、思いっきり汚い言葉で悪口をいいたおす。伝言インコに伝言を頼むとハラが立つのだ。
 で、敵というのがマッドサイエンティストのチャールズ・ダーウィン。あの進化論のダーウィン。ダーウィンの仲間にフローレンス・ナイチンゲールがいる。あのクリミアの天使のナイチンゲールである。彼女はクリミアから帰ってから人体改造にいそしむアブナイ看護師となっていた。
 そしてこれらの異様な19世紀ロンドンに出没するのが怪人バネ足ジャック。はたしてバネ足ジャックの正体やいかに。バートンはジャックの尻尾を捕まえられるのか。

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コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
ほう… (アブダビ)
2015-10-22 11:36:03
これも読書予定に入れます。
気になるのがリチャード・バートンが主役な事です。探検家で千夜一夜物語の編者ですね。アフリカでヒヒだか何だかの群れに入り込み「猿語辞典」を作るとか、上品ぶるビクトリア朝の風潮を無視して生きた。

SFのフイリップ・ホセ・ファーマーだったかリバー・ワールド・シリーズてのがあり、その第一巻の「果てしなき河よ我を誘え」はバートンが主役でした。

果しなく長い河の畔に、誕生から死滅までの全人類が再生していて…バートンはその謎を解明するため川を下るのでした…
 
 
 
アブダビさん (雫石鉄也)
2015-10-22 11:55:29
これのサー・リチャード・バートンは少々斜に構えてましたが、いちおうちゃんと主役をつとめてました。
ファーファーの「リバーワールド」興味はあったのですが、残念ながら未読です。
このシリーズ、2巻目が出ています。
 
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