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とつぜんコラム№84 醜い勝者と美しい敗者

 小生が、最近一番感動した言葉はこれだ。
「お前で打たれて良かったよ。なあ球児。お前で終われて良かったよ・・・」
 2008年セリーグクライマックスシリーズ。阪神VS中日。1勝1敗でむかえた第3戦。0対0のまま9回。表の阪神のマウンドは当然のごとく守護神藤川球児。引き分けでもレギュラーシーズン上位の阪神が第2ステージに進出できる。
 代打立浪にヒットを打たれ、迎えたバッターは中日の四番タイロン・ウッズ。ここは敬遠でもOKの場面だが、藤川、勝負に出てストレートを投げ込む。ウッズ、フルスイングでこたえる。ボールはスタンドに。結局、このツーランホームランが効いて、阪神はクライマックスシリーズを敗退。岡田前監督の最後の試合となった。そして、試合後に岡田さんが藤川にかけた言葉が上記の言葉である。
 ここに小生は、二人の男の美学を見た。試合の閉めは、この投手と決めたら、その投手と心中する覚悟の監督。逃げない。ストレート勝負と決めたら、たとえ相手がどんな強打者でもストレートを投げ込む投手。結果はご存知の通り。
 醜い勝者がいる。また、美しい敗者がいる。醜い勝者とは、手段を選ばず、確実に勝ちに行き、勝つ勝者を醜い勝者と定義しよう。美しい敗者とは、勝つ手段を選び、そして敗北した者だ。醜い勝者に美学はない。美しい敗者には美学はある。
 あそこで、岡田前監督が敬遠のサインをだし、藤川もそれに従って、ウッズを歩かせていてば、阪神は勝っていたかも知れない。しかし、それは醜い勝者となるだけだ。そして、今ごろ小生は、阪神VS西武の日本シリーズを観ていたかも知れない。それはそれでうれしいが、冒頭の感動的な言葉は生まれなかっただろう。
 小生はなぜ阪神タイガースに魅せられるのか。それはタイガースには敗北の香りがするから。V9時代の巨人は強かった。石橋を叩いても渡らない、という川上監督のもと、日本一を9年連続したわけである。そんな球団を応援して面白いだろうか。こんなのべつまくなしに勝っている球団にロマンはない。美学はない。ただ勝利があるだけである。
 タイガースは最近でこそ強くなったが、1985年以来、23年間一度も日本一になっていない。つまり、優勝はするが、ポストシーズンで必ず負けているわけである。敗北をしっている勝者がタイガースなわけ。敗北を知っているからこそ、勝利の喜びもひとしおなのだ。とはいいつつも、小生は阪神が暗黒時代に逆戻りして欲しいと思っているわけではない。勝ってもらいたい。それも美しく勝ってもらいたい。ようは美しい勝者になってもらいたいのだ。間違っても醜い勝者にはなってもらいたくない。それならば美しい敗者でいて欲しい。かといって、暗黒時代のような醜い敗者には絶対なってもらいたくない。阪神ファンは巨人ファンより、ちょっとだけ、わがままで欲張りで、複雑で、美学にこだわるのだ。小生だけかも知れないが。
 だいたいが勝者は醜いものだ。豊臣VS徳川、新撰組VS薩長、義経VS頼朝、白虎隊VS官軍、阪神VS巨人。ロマンがあるのはどっちだ。美学があるのはどっちだ。
「勝者には勝利以外なにもやるな」というではないか。
 麻生のおっさんなど、生まれた時から勝者で、ずっと勝者で育って、自民党内で冷や飯を食ったかもしれないが、クビになりハローワーク通いなどしたことがないだろう。帝国ホテルのバーでは飲むが、ワリカンで梅田の松葉で、串かつをつまみに立ち飲みしたことはないだろう。漫画愛好家らしいが、本当に漫画の面白さが理解できるのだろうか。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
敗者に美学 (giants-55)
2008-11-08 11:13:15
書き込み有難う御座いました。

藤川投手に掛けた岡田前監督の言葉、ジャイアンツ・ファンの自分も目頭が熱くなりました。辛い中でも他者を労われる気持が持てる。良い監督でしたね・・・。

以前の記事「ならぬ事はならぬものです」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/69e4f2f933c09bbb508851aebb82a0bf)でも触れた様に、自分は勝者の側よりも敗者の側に美学&シンパシーを感じる事が多いです。「では、何故ジャイアンツ・ファンなのか?」と問われましょうが(笑)、それは何よりも王選手が大好きで、彼が所属していたのがジャイアンツだったからという理由。彼が他チームに所属していたならば、恐らくジャイアンツでは無いそのチームのファンになっていた事でしょう。

書き込み戴いた件ですが、確かに生徒達がトイレ清掃を担当する事で、その業務に従事していた方の仕事を奪ってしまうという部分は在りますね。その辺“も”しっかり教えるのが、教育の一環というのは同感です。
 
 
 
giants-55さん (雫石鉄也)
2008-11-08 16:49:44
私、ヘソ曲がりというか、判官びいきというか、滅びの美学好きというか、ひかれ者の小唄というか、敗者好きとは妙な性格と、自分では思っています。
 
 
 
敗者の美学 (すみもと)
2008-11-09 01:13:28
私は元阪神ファン。そして、事情があり今は優勝から遠ざかっているカープファンです。
常勝チームには、本当に勝利しかもたらせられない。しかし、優勝・日本一から遠ざかっているチームには、必ず敗者の美学があります。カープはクライマックス進出を逃しましたが、今年限りの広島市民球場最終戦で「日本シリーズ目指して、再びここ(広島市民球場)へ帰ってくる」とファンに誓いました。

麻生のおっさんは、安酒を買って、家で飯や沢庵・梅干を酒の肴にしている低所得者層の気持ち何ぞ分からんでしょう。
 
 
 
すみもとさん (雫石鉄也)
2008-11-09 04:32:22
「かなら~ず、ここへ、帰ってくると、手をふる人に、別れをつげ~て」
広島市民球場最終戦、「宇宙戦艦ヤマト」で応援していたのに、残念でしたね。
来年は、阪神、巨人、広島でCSをやりたいですね。
私、落合は好きではありません。
 
 
 
勝っちゃった (片桐哲)
2008-11-09 22:14:51
正直な話、今年は巨人の方が強いと思ってたんだけど。
いやいや、世の中、なにが起こるかわからんね。
 
 
 
片桐さん (雫石鉄也)
2008-11-10 04:30:32
西武、日本一、おめでとうございます。
ま、私としては、できたら原さんに、華を持たせてあげたかったのですが・・・。
 
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