雫石鉄也の
とつぜんブログ
さよならジュピター
監督 橋本幸治
出演 三浦友和、ディアンヌ・ダンジェリー、マーク・パンソナ、森繁久彌
「小松左京に出会う会」にて鑑賞。この映画は小松さんが、製作、原作、脚本、総監督という立場で関わっている。日本で本格的なSF映画を作りたい。という小松さんの念願が叶って出来た映画である。小松さんがなみなみならぬ情熱を注いで創った映画だ。しかし、不入りで興業的に失敗で、映画としても失敗作といわれていた。実は、小生、この作品を観るのは今回が初めて。
観た。う~む。確かに失敗作である。失敗作ではあるが日本で創るSF映画としてはこれが限界ではないか。小松さんの情熱に反することをいうが、日本で本格的なSF映画は無理ではないか。「本格的なSF映画」の定義にもよるが、ハリウッドで創っているSF映画「スターウォーズ」「未知との遭遇」のような映画を「本格的SF映画」であるならば無理という意味である。でも「スターウォーズ」は「本格」的SF映画というよりも、スペースオペラ、スペースファンタジーである。「未知との遭遇」「ET」などのスピルバーグ映画は、「本格」とはいいづらい。このブログで何度かいっているがスピルバーグはSFが判っていない。ハリウッド製で「本格的」SF映画といえるのは「2001年宇宙の旅」「ミクロの決死圏」「ブレードランナー」ぐらい。また日本映画でも、「本格」的ではないかも知れないが、「日本沈没」「生き物の記録」「ゴジラ第1作」などは立派なSF映画だと思う。では何がSFの「本格」かというかだが、それはいずれ「とつぜんSFノート」でじっくり考察してみたい。
で、結論として、この映画。小松さんの目論見どおり本格的SF映画になっている。今のところ、宇宙を舞台にした日本製本格的SF映画はこれだけだろう。
この時もいったが映画は、客に無機物に感情移入させることができる。本作の場合、木星という太陽系最大の惑星に感情移入させることに成功している。惑星に感情移入させる。この映画の背骨がSFである証左といえよう。このあたりはさすがに小松さんが総監督にあたったからだ。スピルバーグとは違うのである。では何がいけなかったのか。脚本がダメだった。小松SFの映画化では「日本沈没」(1973年版)が最高傑作ではないか。あの映画のシナリオは名脚本家橋本忍があたっている。本作では小松さんが自分で書いている。八面六臂あらゆることに才能を発揮する小松さんだが、残念ながら映画のシナリオは素人。漫才の台本は山ほど書かれているが。やはり橋本忍のような専門のシナリオライターに脚本を頼むべきであった。
人類は太陽系全体に生活圏を広げていた。外惑星用の第2の太陽が必要になった。そこで木星太陽化計画が進行。ところがブラックホールが太陽に向かって来ている事が判明。太陽系の危機。木星太陽化計画を変更。木星を核融合させ爆発させてブラックホールの軌道をそらせようとの計画に。ところが過激な自然保護団体が木星爆破計画反対を唱えて、様々な妨害工作をする。
木星爆破計画の現場主任の本田と、自然保護団体のマリアは恋人同士。「ロミオとジュリエット」のセンを狙ったらしいがさすがに不自然。警戒厳重な爆破計画の現場にたびたびテロリストが潜入して悪さをするのはおかしい。よっぽど無能な警備担当者。太陽系の命運を賭けた計画にそんな無能な警備をおくはずがない。と、つっこみどころはたくさんあるが、そもそも、このマリアなるキャラクターはいらないのでは。それよりも、木星内部にある宇宙人の宇宙船と思われる「ジュピターゴースト」のエピソードをふくらませて欲しかった。SFファンは人間のドラマよりそっちの方が興味がある。
特撮、CGは非常に良く出来ていた。見応えのある宇宙のシーンが楽しめた。
最後、エンドロールが終って「終」の字が出たあと。大きなサプライズが。レポートで書いたが、小松さんが生き返った。タバコをモクモクさせながら、こういわはった。
「「タバコは身体に悪いていうけどなぁ、生きている方がもっと身体にわるいで~」
レンタルビデオの「さよならジュピター」にはこのサプライズはない。このイベントに出た人だけ楽しめたのである。うらやましいやろ。へへへへ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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トラックバック有難うございました。
>小松さんが生き返った。タバコをモクモクさせなが
>ら、こういわはった。
>「「タバコは身体に悪いていうけどなぁ、生きている>方がもっと身体にわるいで~」
うらやましいですね~。
すみません、よく知らないんですけど
CG合成ですか?それともロボット?
米朝師匠のアンドロイドなら知っているんですが。
どちらにせよ、素敵ですね。
>何がSFの「本格」かというかだが
ご考察結果を楽しみにしています。
ただ、自分もスピルバーグ監督が
SF(マインド)を知らないというのは
わかる気がします。
ステージでスモークがたかれ、こういうテロップが映写されただけです。
この映画、確かにCGは非常に良く出来ていて、宇宙のシーンは迫力がありました。
友人に小松左京研究会の男がいまして、その男がこの映画の製作を手伝ったそうです。
で、その男から聞いた話です。小松さんの替わりに言い訳します。
小松さんが最初に考えたシナリオは、東宝の意向もあって、だいぶん変えられたそうです。
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