役者と観客そして曳山が一体となる祭りには人々を熱狂させる奥深い魅力があると思っております。
帆が上がり本来の美しさを見せた「猩々丸」
「長浜曳山まつり」の曳山は全てが趣向を凝らした立派なものだ。
全国に曳山祭りは数々あれど、その山車上で芝居を行うものは数少ない。
「長浜曳山博物館」の資料によれば、全国で20ヶ所程度らしい。
後宴の日は自町で数回のこども歌舞伎を上演する。
観光客に見せるためよりも、自分たちの祭りを楽しむ数少ない貴重な時なのかもしれない。
テレビやインターネット、さらにスマホで外出先でも手軽に映像が楽しめる便利な時代ではあるが・・・
曳山舞台で演じられる歌舞伎をまじかに体感する喜び、これが祭り好きにとってはたまらない。
夜が更けて曳山は幻想的な提灯に彩られる。
幸運にも「猩々丸」の千秋楽に立ち会うことができた。
役者は最後の舞台を慈しむように演じ、若衆も祭りの終焉を意識する。
流れる三味線は哀調の旋律。
祭り期間中にこなした舞台は10回。
見得を切るのもこれが最後。
最終公演が終われば観客に餅投げのサービス。
フィナーレは労いの言葉とともに役者全員に花束が、千川貴楽先生の粋な計らいだ。
最後に曳山は山蔵に曳き入れられ扉が閉ざされる・・・余情残心。
2015年4月 滋賀県長浜市