2017年8月 愛知県名古屋市
雨に濡れた屋根瓦に幟が映え、芝居小屋から灯りが漏れる。
各務の舞台に小気味よい三味の音が流れてまいりました。
夜桜が美しい江戸は吉原仲ノ町。
踊りの稽古から置屋へ帰る舞妓と吉原の見回り番人が桜浮かれのひと時です。
手古舞衣装は古き良き江戸情緒の名残。
どこからか餅屋も登場し春の夜を盛り上げます。
本物の餅投げに観客も大喜び。
さて、ここからが物語の本番です。
遠からんものは音にも聞け! 近くは寄って目にも見よ!
原作は鶴屋南北・・本花道と仮花道を使って上演される「浮世柄比翼稲妻 仲ノ町鞘当の場」
雲に稲妻、雨に濡れ燕と伊達な羽織と着物に身をつつんだ二人が舞台中央で深編笠を外し、
凄味をきかせる不破伴左衛門。
名古屋山三は二枚目で美男子。
七五調の粋な決め台詞はこのお芝居の聞かせどころ。
役者絵から抜け出たような伊達男と色男、各務の団十郎に菊五郎と呼びたくなる。
伴左衛門は山三の恋人傾城葛城に横恋慕していたのでついに斬り合いが始まりました。
筋は単純だが、ここが歌舞伎の様式美。
空もおぼろに花の雲~ その稲妻か濡れ燕~
艶やかな留女お福の舞姿に大向こうが唸ります。
最後は絵面の見得。
おひねり袋の顔面直撃を巧みにかわす役者陣でした。
2017年10月 岐阜県各務原市
長年にわたり上演されてきた時代物の傑作「絵本太功記 尼ヶ崎閑居の場」
子供歌舞伎の舞台でも度々上演されるスタンダードな演目です。
武智十兵衛光秀の一子、十次郎。
許嫁の初菊と三々九度の後、出陣の身支度を済ませ束の間の名残を惜しみ、
討ち死にの覚悟で出陣してゆきます。
夕顔棚のこなたより~
現れ出でたる武智十兵衛光秀。
尼ケ崎の閑居にひそむ宿敵真柴筑前守久吉をねらって竹槍を突き入れたが、なんとそこにいたのは光秀の母皐月。
瀕死の皐月は光秀を諫めるが信念を曲げない光秀は聞く耳をもたない。
戦場で奮戦するも深手を負って戻って来た十次郎。
敗色濃厚な戦の様子を語りつつ、
父の身を気遣いながら息絶えてしまいます。
悲しみの場面から一転、花道を使って繰り広げられる戦国時代絵巻。
農村歌舞伎では最大規模の皿回し式舞台、用意されたおひねりのお菓子も最大規模。
ここは美濃各務の夢舞台。 あなたは男の子、それとも女の子? 君の名は?
拙者は加藤虎之助正清! そうか、虎さんか・・ いい芝居するね。
最後は引張りの見得。
男女混合で演じる舞台は見る者の妄想を掻き立てます。
昔と今を繋ぐ子供歌舞伎の役者陣に拍手!!
2017年10月 岐阜県各務原市