旅の衣は鈴懸の 旅の衣は鈴懸の 露けき袖や しおるらん
時しも頃は 如月の 如月の十日の夜 月の都を立ち出でて
これやこの 行くも帰るも別れては 知るも知らぬも 逢坂の 山隠す 霞ぞ春はゆかしける
波路はるかに行く船の 海津の浦に 着きにけり
屈指の名曲とされる詩情豊かな長唄に誘われ、
「孔雀山」の外題は「勧進帳」 弁慶、富樫、義経の虚々実々とした駆け引きは緊迫感に満ち、日本人が最も好む歌舞伎の様式美であろう。
見れば 大勢の山伏たち 一人たりとも通すこと まかりならぬ~!!
なんと 勧進帳を読めと 仰せ候や
白紙の勧進帳を堂々と読み上げる弁慶、盗み見ようと近づく富樫・・・緊迫の場面です。
ちょっと待った!! それなる強力 止まれとこそ!! 判官殿に似たると申すもの候ふほどに 留めもうした!!
強力を義経かと疑われるや弁慶は金剛杖で主君の義経を叩きのめします。
今は疑い晴れ候 とくとく いざない 通られよ 主君を打ってまでその命を助けようとする弁慶の深き心を察した富樫。
ある時は 船に浮かび風波に身を任せ またある時は山脊の馬蹄もみえぬ雪の中
海少しある 夕波の 立ちくる音や 須磨明石 弁慶の涙を見て義経は労をねぎらい自分の置かれた境遇を嘆く。
湖北の染五郎と呼びたくなる義経の気品。
富樫は無礼のお詫びに酒をふるまう、弁慶は人の情けを感じつつ豪快に盃を飲み干すのであった。
鳴るは滝の水 日は照るとも 絶えずとうたり とくとく立てや たつかゆみの 心ゆるすな 関守の人々 弁慶が見せる延年の舞。
虎の尾をふみ 毒蛇の口を逃れたる 心地して 陸奥の国へぞ下りける
2019年4月 滋賀県長浜市