ファンタジアランドのアイデア

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ムスリム過激派の動向と中国の治安 アイデア広場 その 413

2018-10-27 17:55:37 | 日記

 最近2つの報道から、連想したことがあります。一つの記事は、2015年に拘束されたジャーナリスト安田純平さんの解放が確認されたものです。現地では、アサド政権の攻勢で情勢が緊緊迫し、人質の拘束継続が負担となったようだと伝えています。この状況の中で、トルコやカタ一ルの働き掛けに反体制の過激派勢力が応じたと見られています。安田さんを拘束していたのは、アルカイダ系の過激派「ヌスラ戦線」の組織です。拘束されていた地域は、シリア内戦で最後に残った反体制派の主要拠点でした。アサド政権は、この最後の拠点を奪還するために、包囲を進め、総攻撃が近いとみられていた時期に解放されたわけです。反体制派は行き場を失い、トルコ経由で脱出を図ろうとしているのかもしれません。
 もう一つは、中国の最高決定機関である「全人代」が、自治区内の下級政府に職業技能教育訓練センターを設置するよう求めているという記事でした。中国当局は、ウイグル族など少数民族を対象に、思想教育を行う再教育施設を設置しています。この職業技能教育訓練センターは、強制的に収容し、再教育施設にあたるものとされています。中国共産党と国民党の内戦時代は、少数民族の自治を認めるという美名を掲げていました。でも、今はそれをかなぐり捨てる共産党の姿があるようです。
 そこで、これからのシリア反体制派と中国のイスラム政策がどのように関連していくのかを考えてみました。1978年から1989年にかけてソ連(現在のロシア)はアフガニスタンに侵攻していました。この侵攻に対して、ムスリムの慈善団体は、ソ連と戦うムジャヒデーンに資金を供給し続けました。熱心なムスリムは、所得の2.5%を人道的な目的のために上納する習慣があるのです。1980年代にムシャヒデーンが、やがてアルカイダ組織になったことはよく知られています。この時期、1979年にイランのパーレビ王朝は崩壊しました。アメリカが支援していた王朝が、ホメイニ氏によるイスラムの宗教勢力により敗れ去ったわけです。ソ連がアフガニスタンで敗れ、イランでアメリカ支援の王朝が敗れるという事件は、ムスリムの過激派に自信を持たせることになります。
 ソ連が、アフガニスタンを撤退した後、ムスリムの義勇兵が向かったのはボスニア内戦でした。彼らは、民族浄化の名の下で虐げられたボスニアのムスリムを救援に向かったのです。1992年のこの内戦では、多くのアラブ人がイスラム教徒側の義勇兵として現地入りして戦っています。ボスニア内戦の義勇兵にも、ビンラディンは資金援助を行っていました。一部のムスリム慈善団体は、意図的にアルカイダに資金を提供していたのです。余談ですが、資金はハワラと呼ばれる規制の緩いイスラム金融システムを通じて移動していきます。ハワラは、信頼関係に基づいているのです。世界的な送金サービスとして安上がりで高効率な金融システムといわれています。今回安田さんの解放に、トルコとカタールが関わったとの報道がありました。カタールは、液化天然ガスの輸出で得た豊富な資金を過激派支援に振り向けていると言われていました。カタールは、過激派支援をしているとサウジアラビアやエジプトから非難され、断交されている状態にあります。アルカイダは体育系ではなく同好会サークルのような間口の広いネットワークといわれています。あの崩壊したイスラム国(IS)も、以前はアルカイダの一派に属していたほどです。離合集散の激しい組織ともいえます。そのような組織に対して仲介のできる人物や国は限られているようです。今回は、ヌスラ戦線がシリア追い詰められた状況とカタールから援助を受けていた関係、そして身の安全から安田さんの解放にいたったとされています。
 アルカイダの活動は、常にムスリムが迫害されている地域に向けられます。中国のウイグル自治区のムスリムが、迫害されているとなれば、この地区にムスリムの戦士が集結する可能性も出てきます。ISやアルカイダ系のテロ組織が、次に向かう先はフェルガナ盆地と多くの専門家は見ています。タジキスタンとキルギスにはさまれたフェルガナ盆地が、次の活動拠点になるとみているわけです。この地区は、麻薬の流通経路として、資金や武器の調達に困らない地域なのです。
 ウイグル族の多くはイスラム教徒で、漢民族民族中心の中国とは異なる文化を持っています。中国当局は、ムスリムの服装や髪形なども厳しく統制してきました。当局の締め付けに、ウイグル族の反発は強まります。こうした反発については、テロなど過激思想の影響として取り締まりを強化することになります。結果として、職業技能教育訓練センターに強制収容され、ウイグル語の使用を禁じられ、思想や行動を矯正して社会復帰をさせられることになります。ウイグル族をめぐって、アメリカ議会は「空前の弾圧」として中国を非難しています。アメリカ議会は、中国が100万人のウイグル族を不当に再教育施設に収容していると非難しています。一方、中国は、このセンターが過激思想の影響を受けたとみなした人を強制的に収容する施設であり、法的根拠に基づいていると主張します。
 蛇足ですが、フランスのの国営放送は、中国の国内安定維持費が軍事費を上回ったと報道しています。中国の軍事費は18兆円と言われていますから、治安警察の維持費に18兆円をかけていることになります。このお金のいくらかをウイグル族の生活向上のために使えば、不満や紛争は防げるように思えます。自由で豊かな地域には、過激派が進出し難いものです。ウイグル族に対する北風の政策を、温かい太陽政策に切り替えてほしいものです。結果としてお互いが、ウインウインになれるように思います。