ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

水素エネルギーを貯蔵し運ぶ技術   アイデア広場 その408

2018-10-16 16:17:11 | 日記

 世界最大の鉄道ショー「イノトランス」が、ドイツのベルリンで開かれました。このショーで、大手メーカーに共通したのコンセプトは、デジタル化と環境配慮の2点だったようです。環境に配慮する最終兵器である水素を燃料とする列車が展示されました。短距離区間ですが、すでに営業運転をしているとのことです。以前は、いかに速く走るかが、話題の中心でした。でも、今の時代は、最高速度などを話題にする関係者はいないそうです。いかにして環境に配慮したクリーン列車を走らせることができるかが、課題になっているのです。
 そこで、水素で走る列車とその燃料である水素の運用について考えてみました。EUでは、水素を燃料にした列車が走るようになりました。でも、この燃料の水素は工業用に生産されたもので、本当に環境に優しいというわけではありません。従来より50%程度環境負荷を軽減しているというものです。いずれ、再生可能エネルギーによって、水素を生産する計画のようです。そうなって始めて、100%環境負荷を軽減することになります。日本もいずれ水素を中心とした、エネルギーシステムを構築することになります。資源のない日本において、身近に大量にある資源が水素なのです。水と電気さえあれば、電気分解で水素が生産されます。再生可能エネルギーで電気を作り、その電気で水素を生産することは、十分に可能です。そして、その水素が石油のようにエネルギーを供給する仕組みを実現していくわけです。
 日本の再生可能エネルギーの価格は、海外に比べ割高になっています。そこで、海外において手つかずの地域にある再生可能エネルギーの活用が考えられます。例えば、南アメリカの南端に位置するパタゴニア地方です。アルゼンチンとチリにまたがるこの南端の地方は、1年中強風が吹くことで有名です。この強風のために、生活には不向きとされていた地域です。時代が変わり、技術が進歩すると、この不毛の地が宝を生む土地に変身することになります。風力発電のメッカになる可能性が出てきました。パタゴニアの潜在風力エネルギー量は、日本の年間電力需要の12倍に相当する量なのです。パタゴニアの風力発電で生産した水素を、日本に運ぶ計画が議論されています。
 水素を「貯める」て「運ぶ」ことができれば、福音になります。再生可能工ネルギーの利用を、さらに拡大できるのです。現在は、水素をタンカー規模で貯蔵輸送する技術の開発段階になっています。2020年には、オーストラリアが褐炭から製造した水素を日本に輸送試験を計画しています。オーストラリア政府が、強く推進している計画の一つです。褐炭という低品質の石炭を、有用な水素に変えて、各国に輸出する仕組みを構築しているのです。水素タンカーが実現すれば、水素を貯蔵する技術と運ぶ技術の2つの実用化に目途が着きます。次は、国内にガソリンスタンドと同じように水素ステーションを設置することになります。そこでも、タンカーの水素を貯蔵する技術と運ぶ技術が活かされます。パタゴニアの風車が回っている限り、日本の燃料は安全に供給されるというわけです。
 蛇足ですが、パタゴニアの風は強く、従来の風力発電用の風車では故障が多くなるということです。風に強い風車を作れるメーカーとの協力が必要になるでしょう。現在アルゼンチンは、通貨危機などに陥っています。この危機に支援をさしのべておくことも、後々の経済協力関係を維持する上で大切になるかもしれません。
 余談ですが、電気分解や工場から水素を生産する方法よりも、太陽光から直接水素を生産する方式があればベターです。このベターな方法が、模索されています。地球上もっともありふれた水や太陽光から、水素を生み出す方法があるのです。これは、光触媒を利用する方法です。簡単にいえば、光と触媒があれば、水素が作れるというものです。触媒の基礎研究では、日本が優れているようです。実用化ができれば、ノーベル賞ものでしょう。太陽光を利用して水を分解すれば、化石燃料に頼らずに水素を生成することができます。この方式の最大の利点は、水素を生成する工程において環境に負荷をかけなくて済むことです。光を用いた水分解では、副生成物として二酸化炭素などの温室効果ガスが出ることはありません。こんな研究にお金をかけて進めてほしいものです。