日本国内の介護大手が、相次ぎ中国事業への進出や拡大に動いているようです。ニチイは、12月大連で20床規模の介護施設の運営を始めます。続いて、2019年5月には北京で200床規模の介護施設の運営を始める計画です。ニチイの日本国内施設は、158床が最大なのです。いかに北京の施設が、大規模なものか理解されるでしょう。上には上があるもので、関西大手の業者は青島に、3000室規模の巨大な高齢者住宅を20年に着工する計画のようです。この3000室規模は、日本の介護事業者が運営する高齢者住宅としては最大規模となります。
そこで、日本の介護業者がなぜ中国に進出するのか、その勝算はあるのかを考えてみました。中国では、政府が介護分野への民間参入を促し始めたのです。従来は、介護分野は国有企業がこの事業の主な担い手でした。中国は、金融分野や保健分野に関して遅れているところがあります。急速な高齢化には、国営企業より民間企業の対応が早やかに対応できると判断したと思われます。中国政府が2020年をメドに、介護保険制度の導入を目指すことも、日本の介護業者が進出する動機になっているようです。日本の企業は、保険制度と結びつけたきめ細かなサービスで実績があります。その面では、中国での評価も高いのです。現地のニーズを把握し、日本式の強みと組み合わせてサービスをを提供する仕組みを構築しているようです。
近年は、中国国内の異業種のほかアメリカやフランスの介護事業者も参入する情勢になっています。2015年に1.3億人だった中国の65歳以上の人口が、2025年に2億人になります。そして、2036年に3億人を突破し、中国は超高齢社会とされる21%となります。つまり、介護の面においても、医療の面でも、そして、認知症の面でも、中国はこれから巨大なマーケットのなるわけです。欧米大手や現地勢が、この分野になだれ込んできています。中国の介護の質は、近年格段に上がっています。日本式の優位性を、各国が進出する中国においても保ってほしいものです。
日本の企業は、入居費は月1万元(約16万円)程度を想定し、高所得者層をターゲットにしているようです。中国はGDPが世界2位になったといっても、個人所得はまだまだ日本より少ない状態にあります。その中でも、所得の多い富裕層や中間層以上に焦点を合わせているわけです。ニチイは、中国において高齢者の自宅で世話する訪問型サービスだけを手がけてきました。今後は、高齢者が長期滞在する住宅型と訪問型の2つの機能序持つ大型施設を中心に事業を進めるようです。
介護においては、中国特有の難しさがあります。高齢者を介護する役目は、家族が行うべきだという意識が強いのです。日本にもこの意識がありましたが、介護施設の普及とともに次第に薄れてきています。家族が介護する意識が強く、訪問型サ一ビスにしても滞在系の介護にしても、受け入れる土壌のが育っていないのです。長い目で見れば、介護サービスを受け入れる流れになると見られます。時代の変化と意識の変化から生じる人々のニーズの把握が、これからの勝敗のカギを握るようです。
余談ですが、日本では高齢者の自立支援を重視する方向で介護を行います。でも、中国では至れり尽くせりを求める高齢者が多いのです。このギャップをどのように埋めていくのかが、一つの試金石になるかもしれません。