現代の社会で求められているものは、ちょっと人と異なる発想を持つということのようです。人と同じことを考える頭脳は、これから相対的に重要度が低くなります。人と異なる発想やアイデアを出すためには、情報を少し加工する知恵を身につけることです。同じ内容の仕事を、2人が同じようにしている限り付加価値はつきません。例えば、淡水魚の鯉を、ブラジルから空輸で日本に輸入する仕事があります。この鯉が輸送中に一定の割合で死んでしまうケースがありました。一人は、一定の損失を考慮して発注していました。もう一人は、鯉の空輸の際、水槽にピラニアを入れておく手法を取り入れました。すると、鯉の生存率が高くなり、利益が増える結果になりました。頭の中で、ひと手間かけると有用な情報が加工されて出てきます。一般にストレスは、悪だという考え方があります。しかし、ストレス理論を知っている方は、ストレスがある場合、生きる力を増大させることも理解しています。ピラニアは鯉にストレスを与え、空輸の間は生きのびる力に変えていたわけです。
そこで、人と異なる発想やアイデアを出し続ける方法を考えてみました。多くの情報が、常に流れています。刻々と流れる情報は、増大しながらなおかつ速度を上げながら流れる社会になっています。今までは、日本という限られた地域の情報だけでした。でも、今は世界中から情報が流れてきます。以前は、語学ができなければ理解できなかった情報が、翻訳アプリを使うとある程度分かるようになっています。言葉も映像も、ほぼ自由に読んだり見たりすることができるようになっているのです。そこには、他人とは関心の異なる情報が無数に存在し、その組合せは無限大になるほどです。これらの情報には、誰でもがアクセスすることが可能になっています。
ただし、アクセスするには、時間が必要です。この時間の確保が、なかなか難しいのです。そんな中で、自由に時間を使える人達が時間貴族と呼ばれています。この貴族の大部分は、高齢者層になります。自由な時間の確保に苦労し、努力する現役の社員層に対して、高齢者層は時間貴族と呼ばれているわけです。高齢者層は、多くの経験の蓄積があります。ここに異質の情報をインプットすれば、異質の発想やアイデアが出てくることは容易に想像できます。もう一つは、情報機器の使い方です。高齢者は、最新の情報機器の使い方に不慣れです。もし、時間貴族がモバイル機器を使いこなすことができれば、有力なアイデア製造機になります。
アイデアを作りだすことは、楽しいものです。楽しければ、脳はドーパミンを放出します。この物質が出てくれば、やる気が出てきます。時間貴族が、モバイル機器の操作に習熟し、情報を自由に操作するようになれば、楽しい時間を過ごすことができるようになります。楽しい時間を多くの人が過ごせるようになることが、社会を豊かにすることにもなります。高齢化社会の生産性の向上は、時間貴族の双肩にかかっているのかもしれません。