世界の人口は現在の76億人規模から、2050年までに100億人規模になるとみられています。養殖魚は、餌の量が鶏や豚といった畜産より少なくて済むため、コストパフォーマンスが優れています。タンパク質を供給する食材として、魚は世界で人気が急上昇しています。世界の天然物の漁獲量は2010年入ってから9000万トン前後で推移しています。魚の種類によっては、持続不可能という不名誉な烙印を押されているものもあります。そのような中で、2015年の世界全体の養殖漁の生産量は1億万トンを超え、存在感を増してきています。
そこで、養殖の今後について考えてみました。天然物の漁獲量だけでは、世界の需要に対応できない状況になってきました。困ったことに、天然物の水産物は、魚の種類によっては枯渇する懸念も出てきています。世界的に水産物の需要が高まるなか、養殖の生産量は伸びているわけです。課題もあります。餌の不足が、養殖経営の足をひっぱているのです。国際的にも、養殖を効率化することの重要性は増しています。餌の量を最適化することで、世界の食料不足の解消にも貢献する姿が世界各地で見られます。
その一つに、インドネシアにおいて、情報技術を活用し魚に与える餌の量を最適化する方法があります。養殖魚は、空腹になると活動的に泳ぎ、波を立てる性質があります。この性質を利用した養殖用の自動給餌システムを開発し、販売を始めたのです。給餌時間になると、センサーが働き始めて波の立たち方を測ります。波が一定の閾値を超すと、自動的に餌を蒔くように機械が動きます。魚が満腹になると、自動的に給餌を止やめるという優れものです。魚と水の動きにより、魚の空腹度合いを計測しているわけです。
このシステムは、魚やエビの養殖業者が餌を与える時間と量をスマホアプリで設定できるのです。設定に合わせ、電動の給餌機が養殖池に均等に餌まく仕組みになっています。価格は監視ソフト込みで、12kgの餌が入る給餌機が約5万6千円です。餌の量は30%程度減り、ナマズが成魚になるまでの期間も短くなったそうです。人手をかけず、コストを安く、持続可能な生産が、求められています。日本の技術に固執することなく、良いものを取り入れる姿勢も必要になるようです。