国内の電池メーカーが、電気自動車用向けにコバルトを極力使わない電池の開発に取り組んでいます。テスラに電池を供給してきたパナソニックは、3年以内に電池のコバルト使用量を半減させる計画です。将来は、電池のコバルト使用量をゼロに目標を置いているようです。EVの生産コストのうち、リチウムイオン電池は30~40%を占めています。その電池のコストを、コバルトは10%を占めているのです。コバルトを使わない電池ができれ
ば、EVの普及に弾みがつくようになります。
そこで、電気自動車の電池に必要なリチウムやコバルトについて考えてみました。中国企業の「爆買い」で、コバルトの争奪戦が激しく、価格が2年で3倍近くに高騰しています。コバルト生産量の60%が、コンゴ民主共和国で産出されています。アフリカの資源に関しては、中国が強い権益を作り出してきました。中国による買い占めによって、安定供給が不安視される局面も出ていたようです。日本企業が、コバルトの使用を減らす電池開発に取り組む理由も、その辺にあるようです。もう一つの理由があります。コバルトには、価格以外にも安定調達の不安定要因があるのです。コンゴのコバルトは、児童労働で採掘された原料も流通しているといわれています。世界は、児童労働や人権を軽視した労働で生産された資源を極力避けて、排除する流れになっています。コバルトには、このような負のイメージがついているのです。
かっては、金より高かったプラチナの価格が安くなっています。排ガス不正問題が響き、需要の4割を占めるデイーゼル車の白金の触媒需要は先細りです。ディーゼル車の触媒向けの需要減が響き、国際相場は14年ぶりの安値をつけました。世界的なディーゼル車離れは、市場環境を想定以上の速さで変えています。急激な白金の相場下落は、南アフリカ共和国の鉱山労働者を直撃しています。この国の鉱山会社に、労働者の大規模リストラを迫り始めています。プラチナ供給の70%を占める南アフリカ共和国の通貨ランド安を加速させているのです。
銅や白金のように需要が減る鉱物がある一方、コバルトのように求められる鉱物もあります。現在最も求められているものは、リチウムです。EVが環境に優しい自動車として認められてきたころから、多くの専門家が世界全体のリチウム埋蔵量の見積もりを試みてきました。現在では、チリやオーストラリア、そして中国などで採掘されています。この鉱物の価格も上昇基調です。しかも、EVの促進計画が政策として発表されるたびに、高騰と下降を繰り返しています。自動車を現在のレベルで使用するためには、10億台のEVが必要になります。リチウムの特殊な採掘方法からは、一挙に多くの採掘量を増やすことはできません。一時的に不足することも、過剰になることもあります。むしろその繰り返しを続けながら、リチウム電池の安定供給を行うようになることでしょう。日本は、資源を確保する一方で、電池の品質向上を図る開発を続けることになります。少ない資源という条件、世界が納得する労働条件という中で、効率的な電池の開発取り組むわけです。