<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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昔大ヒットした電子玩具「たまごっち」を大量に売って巨大な利益を得たバンダイは、まだまだ儲けようと思って増産したところ売れ行きがピタッと止まった。このため利益を出すはずが大量の在庫を抱えることになり大きな損を出したのだという。
ホントかどうかはわかない。
あくまでも噂の範囲だが、その情報を入手したのが確か私が学生時代にアルバイトをしていた玩具店だったので間違いのないと私は勝手に思っている。

このようにブームになったからと作り過ぎやブームの終息時期を誤って商売に失敗したという話は結構耳にする。
昨年社会現象になるくらい世界的に大ヒットした「ポケモンGO」は今やプレイしている人の姿を見かけるのは稀である。
もしポケモンGOがアプリではなくてリアルな製品であったら、製造元のソフト会社は大損こいていた可能性があり、一過性のブームは恐ろしいものだとつくづく思った。

ブームに翻弄されて儲けをふいにしてしまうという現象がある一方、確固たるビジネスモデルがちょっとした新技術やサービスの登場で急激な危機に陥ってしまうという例も少なくない。
伝統と歴史を持った大企業とて同じである。

その代表的な例がもしかするとコダック社かも知れない。

コダック社は写真用フィルムの世界的大御所で第二位の富士フィルムを大きく引き離しプロからアマまでその品質は世界中の写真家を魅了していた。
私が芸大の学生時代、写真実習の先生は、
「富士で撮った写真は発色が良くないので、認めません」
と断言したぐらいだった。
素人にプロの毛の生えたような学生だった私は、
「そこまで言わんでもええんちゃうの。品質、そんなにわからへんし」
と思ったものだ。
でも目が肥えてくると確かにコダックの方が発色や質感が勝っていると思えるようになった。
もしかすると暗示だったのかも知れないが、今もそう思っているのだ。

そのコダック社がまさか倒産してしまうとは誰が予想したであろうか。
フィルムの要らないデジタル写真の登場は、コダックを死に追いやるに十分なインパクトを備えていたのだった。

フィルムに固執しすぎて倒産したコダックとは全く反対の政策をとったのが第二位の富士フィルム。
ここはフィルム事業を応用して化粧品を始めた。
フィルム屋さんが化粧品?
だれもがそう思った。
でもそれはほんの1つに過ぎなかった。
液晶テレビのフィルムも始めた。
いろんなことを始めたので、今や本業の写真用フィルムの売上は全体の2%程度しかないという。
その結果、今や世界的な総合化学メーカーへと生まれ変わり次は何を繰り出してくるのか注目される企業になっている。

そういう事例をかき集め、分析し、解説しているのが「ビッグバンイノベーション」(ダイヤモンド社)だ。

数年前に読んで感心した「キャズム」なんて世界はすでにない。
マニアックを好む初期購買者だけが製品に注目し、次の前期購買層に至るまでには「谷間がある」なんてことがもう無いという。
現代の商品のヒットは瞬間的な爆発であり、その急激な売上上昇時にすでに企業は勇気ある撤退と併せて次の一手を用意しておかなければならないという。
それをグラフにするとサメの背びれににている。
それほど市場は大きく変化しているという。

先日、大手自動車メーカーのデザイナーの話を聞く機会があったのだが、
「販売した車の評判を気にしますか?」
との質問に、
「新車は販売したあくる日には売れるのか売れないのかがもうはっきりします。考えながら待つなんて時間はありませんよ。」
と答えた。
なんと新車の発売は発売した翌日ですでに決着はついていて、その後はその流れの通りになるという。
ネット社会の俊足性というか、仕組みというか、実に驚きだ。

物事には流行り廃りがある、というもののその時間はあまりに短く、そして儚い。

読んでいると空恐ろしくなってくる一冊なのであった。

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