<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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仕事の関係でよく図書館を利用する。
仕事で、というと司書か何かアカデミックな仕事をしているように勘違いされる恐れがあるので予め断っておく必要があるのだが、会社が書籍購入費をなかなか出してくれないので、図書館を利用する。
図書館を利用しているというのも、企画開発の仕事をしているので、インターネットだけでは掘り出せない情報が図書館には詰まっており、かつ、娯楽も豊富だし無料なのでよく利用しているのだ。

よく利用するのは地元の市立図書館と大阪市立中央図書館と台東区立中央図書館と某大学図書館である。
地元の図書館は家に近いから利用するのだが、中規模の街で予算もなく、祭りには異常に熱心なのだが教育には無頓着なところがあり、蔵書が少なくもっぱら暇つぶし的存在となっている。

大阪に住んでいるのに台東区立図書館の利用が多いのは、私の定宿の近くにこの図書館があり、雑誌読み放題、区立なのに流石に東京、大きい図書館なので蔵書も豊富。
夕方早めに仕事が引けたりすると都民の皆様の図書館を府民の私が利用させていただいているのだ。

で、最も頻繁に利用するのが大阪市立中央図書館。
さすがに大阪市立ということもあり蔵書も豊富。
外国文献もたくさんあり、最大の特徴は大阪関連の資料が多いことと、ビジネス関連の資料も豊富であることだ。
私の大阪の事務所は難波にあるので、中央図書館のある西長堀までは地下鉄で2駅。
便利といえば便利だし、たまに「めんどくさく」なることを除けば、なかなか重宝な図書館だ。

大阪の図書館といえば、もちろん最大は大阪府立図書館で、学生の頃や、社会人なりたての頃は淀屋橋にある中之島図書館をよく利用したものだ。
今、府立図書館は東大阪の荒本というところにほとんどが引っ越してしまい、利便性が著しく損なわれているが、中野島の図書館も健在で、こちらはビジネス書を中心に商都大阪の企業サポートに軸足をおこうとしているようだ。

中之島図書館は実は図書館というよりも建築物として有名で、明治の終わり、寄付だけを元手にすべての健在をイギリスから取り寄せて建築された完璧なルネッサンス様式の欧州伝統建築なのである。
従って初めてこの図書館を訪れた学生の頃は、
「おお、なんて威圧的な建物なんや」
と入りにくかったことこの上なかったのだが、今や大阪だけではなく、日本を代表する近代建築の一つとなっている。
古いのに、頑丈で阪神大震災でもびくともしなかった優れものなのだ。

この図書館の建物を図書館以外に使用しようという計画が持ち上がっている。
計画を出したのはなにわの暴れん坊市長、橋下徹。

「建物が古く書籍に理想的な空調設備もままならない。書籍のことも考えると、この伝統建物は図書館である必要があるのかどうかも考える必要がある」

この発言が物議を醸し、元司書や教育関係者、そしておなじみの市民団体がクレームを付けて集会を開いたという。
古い図書館を図書館で無くすのはけしからん、という趣旨のようだ。

これはこれで一理ある。
100年以上も図書館として大阪の街に腰を据えテクタこの伝統ある図書館を図書館でなくするのは甲子園球場をサッカー場に買えるようなものだ、といいたいのだろう。
「市民から寄贈された貴重な井原西鶴の本もある」
とは集会に参加した地元私立大学の先生の話。
そんな府民に親しまれた図書館をカフェや美術館にするのはケシカランというわけだ。

でも、貴重な本を「空調設備が充分でない図書館」に保管してもいいものだろうか。
私は今度の市民の運動が、なんとなく理屈に合っていないような気がしてならない。
貴重な本は空調設備が完璧に整えられた、例えば国立国会図書館や正倉院宝物殿のようなところで保管されるべきで、古い建物に保管するのは不適切なのは間違いない。
大阪府立中之島図書館が重要文化財だから図書館として使い続けなければならないという考えそのものが、いつもフレキシブルに物事を考える大阪らしくない、どこか官製的考え方だ。
しかも、今回は官である市長のほうが柔軟に議論しようとしているのではないのだろうか。

元中之島図書館でオシャレなコンサート。
ルネッサンス様式のモダンな建物に洒落たレストランと、ハイテクライブラリー。
そんなイメージを持つことがどうしていけないことなのか、私には分からない。

ちなみに教科書に出てくる正倉院の建物には宝物はひとつも入っていなくて、鉄筋コンクリートの完全空調全館金庫状態の建物に宝物が入っていることは多くの人が知っている。
宝物はいつでも見ることはできないが、書籍は電子化すると中身を読むことはいつでも可能だ。

古い図書館の使い途。
むしろコンクールを開いて全国からプランを募集したら、こういう市民集会も影を潜めるのに違いない。

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