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週刊新潮に「JR三越伊勢丹の大阪店が苦戦」という小記事を見つけた。
私の地元大阪では「そんなん、わかっとるわ」という内容の経済記事だが、ついに全国的なニュースに発展しつつあるようだ。

大阪は現在、百貨店の超激戦地区になっている。
梅田地区、心斎橋地区、難波地区、阿倍野地区。
どこも老舗の百貨店と電鉄系百貨店が客集めに奔走しているところだ。

従ってどこもかしこもすごい競争にさらされているのだが、一人負け組なのがJR三越伊勢丹。
日本を代表する百貨店。

大阪駅前周辺は今、グランフロント大阪という関西の大手企業が結集してトライしているビジネス&アカデミー地区の開業をこの26日に控えて活気に満ちている。
三越伊勢丹はその大阪駅のターミナルの一部でも有り、そのグランフロントに直結していることもあるところに位置している。
店の前を通る人の数は西日本ではトップ。
首都圏でも大阪駅前を通過する人口よりも多いのは多分、新宿だけかもしれない、
それだけに三越・伊勢丹という百貨店業界のチャンピオンが苦戦しているというニュースは、全国的には「なぜなんだ?」という波紋を呼んでいるようだ。
その苦戦も、目標額の6割しか達成していないとなると、生半可な疑問ではなくなってくる。

このJR三越伊勢丹大阪店の苦戦と正反対なのが阪急百貨店梅田本店。
昨年末にリニューアルグランドオープンを果たした、電鉄系百貨店の日本最古参。
売りあげは好調で、目標の1.5倍。
同じグループになったコンセプトのちょっと違う阪神百貨店と相乗効果を出している。
大阪ではキタは阪急、ミナミは高島屋と大丸・そごうというのがショッピングの伝統で、それだけに阪急百貨店のブランドイメージは首都圏では想像できないだろうが、トップでもある。
残念ながら大阪から老舗のそごうが無くなってしまったのだが、それだけに残った大阪の百貨店は生き残りをかけた様々な工夫を凝らしている。

そう、「凝らしている」のが大きな特徴なのだ。

JR三越伊勢丹にはこの「凝らす」という工夫が大きく欠けているのだという。
日本最大の売上を誇る伊勢丹新宿店のノウハウを、そのまま大阪店に持ち込んだら成功するという見込みの甘さは、このブランド百貨店にはあったのだというのだ。
実は、その大きな「凝らす」の違いを昨日参加したとある勉強会で具体的に知ることになった。

その違いとはなにかというと、店内で展開するイベント数である。
三越伊勢丹は大阪に出店するにあたって伊勢丹の誇るPOSシステムを持ってして品揃えを豊富に、完璧にもっていったという。
品数豊富だと必ずお客さんはそのお店を訪れて買い物に勤しんでくれると考えたのだ。
なんといっても大阪を中心とする関西の買い物客は「関西人はケチンボ」という一般的な印象とは正反対で、平均購入額は首都圏を大きく上回る上顧客なのだ。
だから欲しい商品が見つかると、三越、伊勢丹のブランド価値も相俟って絶対に勝者になると踏んだらしい。

一方、阪急百貨店は伝統的な独自の方法でこの東京資本の巨人を迎え撃ったのだという。
それはイベントの連発。
その数、半端ではない。
勉強会で聞いて腰を抜かしそうになった。
阪急百貨店の年間イベント開催数は大中小合わせるとなんと6000回を超えるのだという。
6000千回。
毎日15以上のイベントが展開されている。
1つの百貨店でそれだけのイベントを開催しているとは想像できなかった。

考えてみると、阪急百貨店の梅田本店は大阪でも他の百貨店とは大きく異る雰囲気がある。
私もそれを体験したことがあった。
それは10年ほど前、クリスマス前。
プレゼントの下見に訪れた私は阪急百貨店しか出来ない芸当を目撃したのだ。

「本日はご来店ありがとうございます。只今より、宝塚音楽学校の皆さんによるクリスマスのパフォーマンスをお届けします」

なんだ、なんだ、と思っていると、未来の宝塚スターの女の子たちが揃いの衣装でベルを手に持ち歌を歌いながら売り場を行進。
爽やかな生パフォーマンスで売り場の中をすっかりタカラヅカで包み込んでしまったのだ。
これには度肝を抜かれてしまった。
どこの百貨店にタカラジェンヌが普通にやってきて歌うお店があるのだろうか。
阪急にしか出来ない芸当。
アイドルとは違うクオリティの高さに、百貨店ビジネスのイノベーターである阪急の底力を感じた一瞬であった。

年間イベント数6000回。

関西では品揃えが多くても、オモロイ百貨店には勝てないということを、多分、ブランド王者の伊勢丹と三越は大いに勉強しているところなのだろう。

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