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水間鉄道の起点は「貝塚駅」。
南海本線の貝塚駅と接続しており、なんでも南海電鉄も水間鉄道の株主の一社なのだと言う。
だからといって水間鉄道に南海電車の中古の車両が使われているということはない。
関西ではあまりお目にかかれない、関東の方の私鉄で活躍していた車両が使われているそうだ。

水間鉄道の発車時間は南海電車の急行列車の到着時間にある程度合わせているらしく、私が南海電車を降りてから「貝塚ってどんなとこやろか」とちょっとだけ眺めている間に電車は出発してしまった。
連携がとれているというのは、ある意味私のような旅行者には至極便利の悪い不都合な内容なのであった。

かといって次の電車まで1時間も待たなければならないほどの田舎ではない。
次の列車は20分後なので、ぼんやりしているとまたまた次の列車も見送ることになってしまうので注意が必要だ。

貝塚市は大阪なんばから急行で30分以上かかる、関西ではかなりの郊外にあたる。
それでも週刊ダイヤモンドだったか、週刊東洋経済だったか忘れてしまったが、大阪で住み良い街として全国ベスト50にランクインしている貴重な街でもある。
そのランクインの理由が今ひとつわからないのが大阪府民たる私のイメージなのだ。

難波から30分。
急行は停車するが、特急は通過する。
JR線は市内を貫いて走っているが各停しか止まらない駅が2つあるだけ。
産業も強くはなく、かつて繊維業で栄えた残影がユニチカの工場跡のショッピングセンターといったところか。

従って、なぜ貝塚市がメジャーな経済誌に選ばれていたのかはなはな疑問だ。
が、そこは南隣の財政破綻寸前の泉佐野市でもなく、北隣の年がら年中祭に浮かれている岸和田市でもない。
これら両隣の街と比べると相対的に「幸せ指数」が高いだけなのかもしれないが、貝塚市はそんな注目の街でもある。

ユニチカの工場があったことからも判るように、この地域はかつての繊維業に想像を超える栄華を極めた。
だからこそ、ここには市内と郊外を結ぶための水間鉄道が敷かれたのだと思う。
なんといってもJR線より以前に開通している路線なのだ。
JR線は水間鉄道を立体交差でまたいで走っているが、JRほうが上を走っているのだ。
しかも、この夏に見た歴史展では「水間鉄道は和泉葛城山を貫いて和歌山県のかつらぎ町へ結ぶべく、昭和40年代までは実際に工事も行っていた」というほどの路線だった。5.5kmの営業区間が、もしかすると30kmぐらいに発展していたかもわからない、そんな可能性を秘めた鉄道であった。

今ではその工事が済んでいた路線の一部がニュータウンや道路になっていて、そこに住む人も、そこが水間鉄道延伸工事の遺構であることを知らないという。
ともかく貝塚市のかつての栄光の印が水間鉄道であり、その歴史を持ってして経済誌に「住みやすい街」として選定させているのかも知れない。

そんな歴史もいざ知らず、水間鉄道の貝塚駅は至ってシンプルなプラットホームひとつで2両編成の列車が止まれるだけの長さしかない、小さな駅なのであった。

改札は自動ではないものがひとつ。
駅員さんが切符をチェックする昔ながらの改札だ。
だが、驚いたことに、自動改札は設けられていなかったが、非接触ICカードを読み取るためのリーダが設置されていた。
水間鉄道ではPiTaPaやICOCA、Suicaなどの交通カードが使えるのだ。
ローカル線だと思って油断していてはいけないのであった。

今時カードを使うことのできない鉄道が都心部にあることを先日京都へ行って初めて知ることになった。
たまたま京都造形芸大へ行くことがあり、京阪電車の出町柳駅から鞍馬の山へ向かう叡山電車に乗り換えたのだが、ここがカードを使えない珍しい電車で、カードが使えるとばかり思っていた私は発車のベルと共に列車に乗ろうとしたら、カードが使えないことが判明し、切符を購入している間に電車が出発してしまうという、困った経験があったばかりだった。

従って鞍馬という観光地と出町柳という京都大学も近所にある京阪のターミナルを結ぶ電車でカードが使えないくらいなので、水間鉄道でも使えないと思っていたのだったが、そこは大阪の私鉄なのであった。

しかし、驚きはカードが使えるという、そんな基礎的なことだけではなかった。
この鉄道は赤字を少しでも減らし、存続のための様々な努力を繰り広げている、アイデア一杯の鉄道なのであった。

つづく

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