<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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先月のとある日のこと。
日本経済新聞の関西欄で大阪の道頓堀がNYのブロードウェイより古い演劇の街だったことを紹介していた。

「飲食街だと思っていた道頓堀は実は劇場の街だった」
だってさ。

正直、びっくりした。
道頓堀を大型の屋台街と間違えとる。
日経の記者は経済なかりに興味があって日本の文化には興味がないのか。
「道頓堀が演劇の街だったなんで」
というぐらいだから、
「船場が日本経済の中心地だったなんて」
と言いださないこともなく、現在のマスメディアの混迷ぶりがよく分かるところなのであった。

さて、その道頓堀。
NHKの朝ドラで女優・浪花千栄子をモデルにした「おちょやん」が放送されていることもあり今は「くいだおれ」の街と思われているが、かつては芝居の街であった。

残念ながら当時の息吹を伝えているのは松竹座のみ。
私が高校生の頃までは少なくとも演芸の角座、藤山寛美の松竹新喜劇で有名な中座、文楽の朝日座があって道頓堀東映、松竹座の映画館があった。
劇場と呼べるものが合計5館存在していたのだ。
角座は一旦映画館になったあと建て替えられ、つい数年前まで演芸場だったが折からのインバウンドに押されて複合ビルに建て替えられてしまった。
松竹芸能の芸人さんはどこで漫才や落語、マジックなどをやっているのか大いに気になるところだ。
吉本興業に移籍したのだろうか。
中座は火災に遭って、その後は劇場にされずこれも複合ビル。
文楽は(大阪の)日本橋の国立文楽劇場に引っ越して朝日座は取り壊し。
道頓堀東映も無くなって松竹座だけ建て替えられて歌舞伎がメインの劇場に生まれ変わった。

飲食の街というのはあくまでも劇場があっての飲食店だったが、それが「かに道楽」や「くいだおれ(閉店)」など料理の中身よりも看板のほうに注目が集まるような店に焦点が当てられ劇場文化は徐々に廃れてしまったのだ。
そこへインバウンドで外国人、とりわけ中国人が大挙して訪れるようになり道頓堀は劇場の街はおろか飲食街でもなく和風中華街みたいになってしまったのであった。
びっくり仰天である。
近松門左衛門がタイムスリップしてきたらきっと腰を抜かすに違いない。

私はこのような道頓堀を中心にする「ミナミ」地区が実は大阪らしさを失い、どこの街ともつかないUSJもびっくりのWorseワンダーランドに変わるにつけ足を向けなくなり、飲むのなら天神橋筋商店街か京橋(大阪の)あたりになってしまったのだ。
正直、一昨年まではミナミへ行くよりも渋谷へ行くほうが多くなったくらいなのであった。

そこへ来てコロナで外国人インバウンドが崩壊。
そしてNHKの朝ドラが道頓堀を舞台に始まり、ミナミが元のまともな大阪らしい繁華街に戻りつつある。
そこに今回の日経の記事。

大阪が実は演劇を支える文化・歴史のある街であることを大阪人自ら再認識しなければならない記事なのであった。



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