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バームクーヘンは私の大好きなドイツ菓子だ。
あの年輪状に焼き重ねられたケーキは独特の食感を持っていて、子供の頃はよく層になった部分を一枚一枚剥がしては食べ剥がしては食べていて、
「アホな食べ方しなさんな!」
と、よく親に怒られたものだ。
バームクーヘンのように層になったお菓子類はどうしても剥がしながら食べたいという欲望に駆られて、たとえばミリフィーユなんかも剥がしながら食べそうになり、
「アホなことせんといて、オッサンが」
とカミさんに叱られそうになるのだ。

層になっている構造はどのお店のバームクーヘンでも同じだが、層構造と味とともにお店の特徴を代表するのはなんといっても食感である。

バームクーヘンはそれこそお店によって食感が異なる代表的なお菓子と言えよう。
あるものはしっかりとした弾力があり、またあるものはふんわりした柔らかさがあり、また別のあるものはパサパサ感があってちっとも美味しくなかったりするのだ。

個人的な好みで申し訳ないのだが、私はバームクーヘンは神戸のユーハイムのものが一番美味しいと思っている。
さすが日本にバームクーヘンをもたらしたドイツ人カール・ユーハイムの創業による日本の老舗。
どっしりと、しかし濃厚でガッツリとした味わい。
ドイツ菓子はかの民族と同様に職人技に長けたマイスター文化を感じさせるものでなければならないのだ。
私は中でもやや円錐形になってシュガーコーティングがされたディアバームクーヘンが最もお気に入りなのだが、なかなか食べる機会に出会わないのが辛いところである。

ところで、最近バームクーヘンの類が非常に増えていて大阪でも東京でも長蛇の列ができるているお店がある。
ある店は抹茶味。
またある店はアメリカンドックのように串刺しタイプ。
そしてある店は正統派のようなバームクーヘンなのだ。
同僚に聞くところによるとその正統派みたいなバームクーヘンを提供するところは全国的に人気のあるお店で本店は関西の地方都市にあるのだという。
関西の地方都市、というところが怪しい。
ユーハイムのように神戸ではないのだ。
神戸はなんといっても洋菓子用砂糖生産の圧倒的シェアを誇る街であり、当然、神戸はバームクーヘン以外の洋菓子も美味い。
従って神戸でこういうバームクーヘンが誕生するはずはない。
大阪も洋菓子には煩いので大阪でもない。
尤も大阪は食べ物となるとあらゆるものに煩い。
京都は和菓子というイメージだが、実は京都人は伝統を重んじる一方すこぶる革新的性格を持っているので、こんなもの許すはずはない。
で、バームクーヘンの大好きな私だが、どうしても食べたくて仕方がない時に買うコンビニのバームクーヘンとユーハイム以外はあまり興味がないので暫く食べないでいたところ、先日そのバームクーヘンを食べる機会を得た。
どんな味なのか、興味津々で食べてみた。
その感想は、なんで行列を作ってまで買う人が存在するのかまったくもって理解に苦しむ「食感」なのであった。
正直、層になっていればバームクーヘンだと思っているのであれば、この店はドイツ文化を冒涜していると言える。

食感はふわふわ。
歯ごたえはまるで一般的なケーキのスポンジ部分を食べているような感触だ。
これはバームクーヘンではない、と思った。
層になっているスポンジケーキではないかと。

列を作ってる人々はどんな味覚の持ち主であろうか。
バームクーヘンは簡単なお菓子ではないことを、この人気店は知る必要がありそうだ。
それがどうしたと言われるとそれまでですが。

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