<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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カミさんと合流したのが午後11時過ぎ。
関西空港は24時間空港で数年前と違って深夜でも旅客便がびゅんびゅん飛んでいて旅行客の姿も少なくない。
尤も多いのは中国や韓国の人たちのようだが、それでも深夜にチェックインして出発、或いは深夜に到着して日本各地へ出発していく人が多いのでレストランやカフェは営業すべきところだ。
ところが午後10時を過ぎると営業しているお店が一挙に減る。
コンビニ各店。
マクドナルド。
牛丼のすき屋。
バーガーキング。
プロント。
だけだ。

私たちはできれば年越しそばでも食べたいところだったのだが、そうもいかないのでハンバーガーを食べながらのカウントダウンになってしまった。
ま、それはそれで良かったのかもしれない。
あるところでは小さなカウントダウンパーティをやっている外国人の若者のグループがいたりして雰囲気は悪くなかった。

さて、腹ごしらえができて早速出発。
ゆく年くる年をラジオで聴きながら阪神高速道路を奈良に向かってぶっ飛ばした。
ラジオでは奈良薬師寺の年越しが生中継されていて奈良の観光スポットの賑わいが伝わってくる。
これから訪れる春日大社はどんな混雑なのか、大いに気になるところだ。

大晦日から元旦にかけての阪神高速道路湾岸線はガラガラ。
ほとんど貸切状態での走行になった。
対向車線は結構な通行量だが、この時間に大阪市内に向かって走る車は無いのかもしれない。
南港大橋を渡って天保山から進路を東にとる。
眼下の暗がりの中にちょうどUSJの満艦飾のイルミネーションが浮かび上がり美しい。
USJはカウントダウンイベントが毎年開催されていてきっとすごい人数の人たちがイベントを楽しんでいるのだろうと思った。

さすがに大阪市内になると通行量も多く東へ向かう車も結構ある。
阪神高速道路東大阪線から第2阪奈道路に入る。
生駒山の長いトンネルを通過中に奈良県に入った。
関空を出発してから40分くらい。
普段は渋滞でこんなに早く来ることはできない。
宝来インターを出ると奈良のメインストリート大宮通り。
最初の高架を右に曲がるとラジオで放送中の薬師寺や唐招提寺がある。
左手は平城宮跡だ。
私の行く春日大社はまっすぐ。もう終着点はすぐそこなのだ。
私たちの周囲を走る車を見ると大阪や和泉、神戸、宮崎、品川、尾張小牧など県外のものが目立ち、地元奈良ナンバーはちらほら。
やはり年末年始で旅行や帰省で来ている人たちなのだろう。
カミさんと娘はぐっすりと眠っている。

JR線の高架をくぐると奈良市の中心部。
ここから大宮通りは上り坂になっていてすぐに右手に近鉄奈良駅が見えてくる。
現在の奈良市中心部は平城京の東の端っこに位置する。なんでこんな地形のところにあるのだろう、と気づいたのはつい最近のこと。
御所のあったところが寂れて、都の端っこが今も栄えるのは、もしかするとここに東大寺があるからかもしれないと思ったりしている。

いっぽう気になるのは人通りだった。
近鉄電車もJR線も終夜運転していて人は少なくないはずだ。
そう思いながら目を凝らしてみると、その人の数は想像以上の混雑なのであった。
近鉄奈良駅から大宮通りの歩道と奈良公園の遊歩道に沿ってゾロソロと蠢く人の流れ。
その数は観光のトップシーズンとほとんどかわらない。
真っ暗がりを大勢の行列が東大寺、春日大社方向へ歩いて行く、或いは帰っていく風景は迫力を感じるのだった。

東大寺の駐車場へ入る車で若干混雑していたが道路は歩道ほどの混雑ではなかった。
私は春日大社の南側にある高畑町の民間駐車場へ車を入れた。
ここは最近娘の大学のイベントや奈良の行事を見物に来た時に駐車する場所の1つで、今日は空いていればここにしようと思っていたところだった。
高畑町は奈良公園まで徒歩5分の立地で、閑静な住宅街。
新薬師寺や奈良町も近く、おしゃれなカフェも少なくない。
志賀直哉の旧宅もあり観光地に隣接しながら普段は静かなところでもある。
私の住みたい街ナンバーワンでもある。

私の駐車した隣には県営の駐車場がある。
どちらも満車近くで、大勢の人が奈良公園側とを行き来している。

春日大社の表参道は予想通りの大混雑であった。
「表参道は大変混雑しております」
というアナウンスが流れる。
この表参道という単語にどうも違和感があり、
ここは東京か、と一瞬錯覚してしまう。
そういえば表参道は一般的な名詞でどこの神社の正面参道は表参道。別に渋谷、原宿、表参道の表参道ではないわけで東京ブランドの恐ろしさを感じたのであった。

今回の参拝で最も気になていたのは「果たして夜中の鹿は何をしているのか」ということであった。
私はこれまで奈良の鹿というと昼間の姿しか見たことがなかった。
奈良は世界中でも稀な野生の鹿が人に懐いている都市で、広島の宮島のような例外もあるものの、大きな街の中を鹿が闊歩しているのは世界中でここだけだという。
奈良が身近な関西人にはちっとも特別なことと思わなかったのだが、インバウンドで訪れる外国人、とりわけ欧米人の驚きで初めてそれが特別なものであることを知ったのであった。
まるで浮世絵の価値を外国人に教えられたみたいだ。

で、夜の鹿はというと、昼間と同じで暗がりから人々の流れを眺めており、中には鹿せんべいをねだってくる鹿もいるのであった。

本殿まえで入場制限がかかっていて暫く待たされたものの無事に参拝を済まして帰路についた。
残念だったのは自動車で来てしまっていたことで、まさか「振る舞い酒」があるとは思わず、次回はかならず電車で初詣したいと思った、初の元旦早朝のメジャー初詣なのであった。


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