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マレーシア航空の行方不明やロシアによるクリミアの併合のニュースに隠れてしまって、すっかりその出来事が伝えられなくなってしまっているニュースがある。
それも日本にとって非常に重要なニュースだ。
どういうものかというと、
「台湾の行政府を学生が占拠」
という現在進行中の事件なのだ。
このニュースをマトモに報道しているのは産経新聞ぐらいだけなのだが、実にこの現在進行中の事件は東アジアの問題点をしっかりと炙りだしている政治事件なのだ。

そもそも、台湾の学生がなんで自分の行政府を占領しているのか。
このような過激な事態に陥っているのには理由がある。
これは40年前に左巻きの学生が東京大学安田講堂を占領して死人を出した事件とは全く違う、正反対の行動なのだ。
学生たちは、国民党の馬英九総統が中国と結んだ自由貿易協定の一種の撤回を求めた愛国心あふれた行動なのである。

「協定により台湾の中小企業が潰れてしまう!」

と学生たちは主張し、協定の撤回を求めているというのだが、そんなことだけで行政府を力づくで占領することは無いだろう。
実際の背景には、

「台湾の中国に売ろうとしている不貞なやつ。馬英九と国民党をやっつけろ」

というメッセージが込められているのだ。
なぜなら、台湾は中国ではないのだ。

台湾という国に住む国民のアイデンティティは中国人のそれとは大きく異なる。
中国では「ダマされないようにしなさい」と言って子供を送り出すという。
これに対して台湾では「仲良くしなさい」と言って子供送り出すという。
この相手を見れば「泥棒と思え」主義は現在の中国を見ているとよく分かる通り、彼の国の民度を表していると言えるだろう。
一方、相手との「和」を尊ぶその姿勢は、日本のそれと同じなのだ。

台湾は中国ではない。
むしろ、日本に近い。
それも限りなく酷似したアイデンティティを持った1つの国家であって、地理的要因と合わさって、この台湾で起きていることの意味は日本人にはマレーシア航空機の行方よりも、クリミアの併合よりも重要なのだ。

この日本と台湾の関係の重要性をわかりやすく解説してくれているのが加瀬英明著「日本と台湾」(祥伝社新書)だ。

台湾の国際的な法的立場と現実の立場の違い。
日本との歴史文化の関わりなどが、わかりやすく書かれていて東アジアの日本の立ち位置を学ぶ上でとても大切な情報が溢れている。
実は台湾は日本にとって唯一の兄弟国家であり、台湾の安全保障や経済力、台湾人の思想などが、そのまま日本の安全保障や経済、文化まで影響を及ぼす。
このことを日本人はもっと知るべきだと思っているのだが、事実はそうではない。
私自身、本書を読むことで、その重要性を確認できたようで、何かこう、スッキリした感じがするのだ。

何にスッキリするのかというと、ここ数年間というもの韓国や中国のような論理と真実と真心の通用しない国のニュースばかり目にしていると、日本は本当に孤立するんじゃないかと思うことも有り、正直気分のいいものではない。
ところが台湾という「マスコミと外務省が中国の一部」と勘違いしている独立国家は親日的であることはもちろんのこと、お互いに補完しあう非常に重要なパートナーであることを認識しなければならない。
とりわけ日本人側はそうなのだろう。
台湾における日本の存在感と同等の意識を日本人も台湾に対して持つことが重要だ。
そういう意識が歴史の歪曲や経済政策的意地悪に負けることのない根性を醸成できるのではないだろうか。

ところで、この著者の加瀬さんのような人がいることで台湾とは正式に国交がない割には、特別な協定がいくつも結ばれていることに納得したのであった。
本書には書かれていなかったが、例えば、台湾の人は日本へ来ると台湾で取得した自動車免許のまま日本国内で自動車の運転ができる。
一方、日本人も同様に日本の免許証で台湾国内を運転できる。
つまり台湾と日本の間には自動車免許に関する国境がないということは、あまり一般に知られていない。
また、現在中国人がノービザで観光旅行にやってくるが、この原因は台湾人に対してノービザを実施していたことに中国政府がクレームをつけた結果ということも、あまり知られていない。

そもそも外務省の気弱で不勉強な外交官が、台湾人とは全く別民族で他国の中国人に「同じ中国人」としてビザを免除してしまったために、大勢の日本人が犯罪によって殺され、あるいは財産を奪われる結果を生んでいる。
何度も言うが、台湾人は中国人ではない。
台湾人を中国人という人は日本人はアメリカ合衆国日本州のアメリカ人であるというのと非常に似通ったアホな感覚を持っている人だ。

本書を読んで、まともな隣国台湾をもっと知る人が増えると良いなと思った一冊なのであった。

なお、冒頭の話題に戻るが、そんなこともあったので学生による行政府の占拠事件は日本のアイデンティティを多く持った若者たちによる中華文化に対する抵抗でもあるに違いないのだ。



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