<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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朝のNHK連続テレビ小説の舞台となっている大阪府岸和田市は大阪府下では数少ない城下町の一つだ。
しかも復元されたものとはいえ天守閣があるのも珍しく、祭りと共に地元の人たちにとっては自慢のタネになっている。

私は同じ大阪でも堺市生まれの堺市育ちなので城下町にこだわりわない。
むしろ私にとっては「国際貿易で栄えた中世の自由都市」としての堺が自慢。
その特殊な歴史的位置が「城下町に対するこだわりに無感覚」な正確に影響を与えているのだろう。

とはえい、岸和田城のような立派な城郭を残しているのは府下では他に大阪城ぐらい。
同じ城下町でも高槻城や千早赤阪城はすでに書物の中の存在に過ぎなくなっていることを考えると、
「どうして岸和田にはあんな立派な城があるのか」
ということが疑問になってくる。

なお、地方の人には岸和田がどこにあるのか分からない人も多いかも知れないので、ロケーションを説明すると、大阪から和歌山へ電車に乗ると、その中間地点にあたるのが岸和田である。

この疑問を氷解させてくれそうな書籍を書店の歴史コーナーで発見した。
大阪の歴史研究の人たちが執筆編纂した「岸和田古城から城下町へ」(和泉書院)で、パラパラとめくると南北朝以来の大阪南部の歴史研究書としてなかなか面白そうだった。
さっそく購入しようと、裏を見たら価格がなんと¥3880もしていたのだ。
正直1冊4000円近くもするような本は、仕事で必要でもない限り購入することはめったにない。
こういう書籍は大学の図書館で借りてくるか、馴染みの大阪市立中央図書館か台東区立中央図書館で読むのが適当なのでそうしようと思っていたのだが、なんとなくどうしても読みたくなり、2ヶ月ほど悩んだり、新しい本を購入するのを控えたりして無理をして購入したのであった。

結果、買ってよかったと思うパーセンテージは70%なのであった。
なぜ30%後悔したかというと、やはり地元の歴史研究家の方が執筆者の中に多く、少しく文章が読みづらい、というか読む人のことを考えていないのではないか、と思える所が少なくなく、読むことそのものに苦心することも少なくなかったからなのであった。

それにしても内容自体はかなり良いもので、大阪の南部、いわゆる和泉国と呼ばれる地域の勢力争いについてよく知ることのできる貴重な本なのであった。
地名のいわれも面白く、岸和田が海岸にやってきた和田氏から来たという通説が間違いであるという話も面白いのはもちろんのこと、堺から和歌山にかけてのパワーバランスについても、私が地元のため結構楽しめるものなのであった。
中世以前は、岸和田ばかりではなく、堺から南部には数多くの要塞に該当する城が存在したことも注目に値するのだった。

私が最も興味を惹かれたのは、前述の岸和田城の存在だった。
江戸時代、岸和田藩は尼崎藩と共に大阪城を守護する役割を担っていたということを本書で初めて知り、あの立派な城郭の存在理由を納得することができた。
江戸時代の重要な行政および軍事的拠点なのであった。

なお、本書で示されていた大阪三国(摂津、河内、和泉)のうち、河内だけ城下町が無い事への解答はついに知ることができなかったのが、少し残念ではあった。
いずれにしろ貴重な郷土史研究本であることは間違いない。
ちょっと値段が高すぎますが。

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