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ホーチミン市。
漢字で書くと胡志明。
ベトナム民主共和国建国の父であるホーチミンの名前をそのまま街に付けてしまった、いわばベトナム版レニングラード。
ホーチミンその人はベトナム戦争終結を待たずに他界。まさか自分の名前が南ベトナムの首都に付けられるとは想像だにしなかっただろう。
尤も、赤い本家のレニングラードはソ連崩壊後まもなくサンクトペテルブルグという、かつてロシア皇帝ニコライが君臨した古都の名前に戻されてしまった。
今や世界の人々には「サンクトペテルブルグ」が通り名。20代以下の若い人たちに「レニングラード」といっても「新しいケーキ屋さん?」って程度でどこのことやら分からないかも知れない。

一方、レニングラードが無くなってもホーチミン市は健在だ。
ただしこっちの困ったことは市民の方が「ホーチミン市」なんて名前を認めていないらしく、今も地元では「サイゴン」と呼んでいる。

当たり前だが関西空港の出発ロビーの表示板の行き先表示は「サイゴン」ではなくて「ホーチミン、胡志明」。
ベトナム航空機は関西空港の北ウィングからの出発だ。
シャトルを降りてベトナム航空の出発ゲートに足を向けるとエメラルドグリーン色したA330の機体がボーディングブリッジに接続されていた。

「わー、きれいなヒコーキや。」

と娘のホニョ。
初のベトナム旅行に胸をときめかせニコニコ顔ではしゃぎまくり。

「A330はこの前、海の上で行方不明になったフランスの飛行機と同じ機種だよ」

と言えないのが辛いところだ。

最近のベトナムブームを反映してか、出発ロビーは人で溢れていた。
とりわけ乗客には若い人が多く、雰囲気はまるでプーケットやバリ、ハワイへ向う便を待つロビーのよう。
ベトナムはすでにリゾート地なのかもしれない。
チェックインカウンターでも満席の案内をしていたから、きっと関空ホーチミン線は黒字路線に違いない。
便数も増えるわけだ。
だた乗る人が多いからといってA330に乗るという不安感は払拭されない。
JALとのコードシェア便なんだからJALの機材を使っていただきたいものだ。

搭乗が開始されて機内に入ると、エアコンの吹きだし口から水蒸気が濛々と吹き出されていた。
外と中の湿度と温度違いで空気の中の水分が結露して吹き出されているんだろう、なんてことはわからないでもないけれども、乗っているのがA330。

「あの煙、なに~。」

と訊ねるホニョに、

「あ、あれは水蒸気やから心配ないで。」

と言っている私にもなんとなく煙に見えていたのは黙っていた。

つづく

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