平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

中学校の思い出

2019-02-20 20:25:15 | その他

中学校を卒業したのはいつだっただろうか。 
思い出せないくらい昔の話だ。 

私は、田舎の小さな小中学校に通った。 
同級生に、達ちゃんという、女の子がいた。 
彼女は、先天性心臓弁膜症に罹っていた。 
きれいな血がつくれないので、いつも顔は紫色だった。 
知能の発達や身体の成長にも支障をきたした。 
達ちゃんは、医師から「長く生きて20年」と診断されていた。 
彼女は、そのことを知っていたのだろうか。 
いつもさびしそうだった。 

中学2年のときこんなことがあった。 
担任の荒木先生が一人の男子生徒に向かって声をあらげた。 
その男子生徒は、幼児のころに罹患した小児麻痺の影響で知能に少し障害があった。 

まさし、お前は、なぜ宿題をしないのか。  
なぜ、勉強を一生懸命やろうとしないのか。 
達ちゃんを見てみい。 
達ちゃんは二十歳までしか生きれんのぞ。 
でも、達ちゃんは、学校が好きだから、 
クラスの友だちが好きだから一生懸命勉強をする。 
宿題も欠かさずやってくる。 
テストもいくら頑張っても10点か20点しか取れないけれど、ひっしにテストを受ける。 
それに比べてお前はどこが不自由だというのか。 

普段は温厚で笑みを絶やさない先生だが、その日は違った。
私は、これほど感情をあらわにした先生をみたことがなかった。
先生は目に涙をためていた。
教室は静まり返った(その日、達ちゃんは休んでいた)。
まさしはポカンとしていた。 

先生には子どもがいなかった。 
だから余計に、達ちゃんがかわいくて、不憫でならなかったのだろう。 
運動場で撮った卒業写真には、先生と達ちゃんが手をつないで写っている。 

それから5年後、達ちゃんは医師の見立てどおり二十歳で短い生を終えた。