無罪判決が出された村木厚子厚労省元局長の強さと言葉の美しさに感動した
「郵便不正をめぐる厚生労働省の偽証明書発行事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚労省元局長・村木厚子被告(54)(起訴休職中)が10日、大阪地裁で無罪の判決を言い渡された」(読売新聞)
予想通り、一昨日、村木厚労省元局長の無罪判決が出た。判決以前から、無罪がこれほど明白だった事件はあまりない。昨日発売の雑誌「文藝春秋」10月号には、村木元局長の独占手記が掲載されている。また今週号の週刊文春には、江川昭子さんの「村木厚子厚労省元局長 検察に屈しなかった壮絶な454日 でっあげ、歪曲、虚偽の自白・・・」が掲載されている。裁判長は、判決で「犯罪の証明がない」とまで言い切っている。
この事件の報道に最も熱心で、詳しく伝えたのは朝日新聞だ。一昨日の朝日にはこんなやりとりも掲載されている。
検事「今回の罪は大した罪ではない」
村木氏「大した罪とはどんな罪ですか」
検事「殺人や傷害だ」
村木氏「(偽の証明書を発行したとする)恋に狂って相手の男を射した方がましです」
否認を続けると、この検事は「私(村木氏)の指示がきっかけで、事件が起こってしまった」という供述調書を勝手に作って読み上げ、「署名しますか」と迫った。
「恋に狂って相手の男を射した方がまし」との発言には驚いた。村木元局長の厚生官僚というその立場と、その発言のミスマッチに驚くとともに拍手喝采だ。厳しい取り調べの中で、よくあのような発言が出てきたなと思う。
さて、この村木元局長の判決について、弁護団は「『密室の取り調べで迫真性のある調書をつくり、複数の調書を組み合わせて有罪にする特捜部の問題点を指摘した』と評価」している(朝日新聞聞より)。まさにその通りだ。
裁判所から、事件の構図をことごとく否定された特捜部。自白のねつ造など未だにこうしたことが行われているのかと、ショックでもあり怒りを禁じ得ない。
昨日のNHKテレビ「追跡!AtoZ」で、「村木元局長“無罪”」が取り上げられている。その中で、村木元局長は次のように語っている。「捜査ができるのは警察と検察だけ。そこが“やった”と決めつけたら、真実を探し出してくれる人がいなくなる」と。
村木元局長は、「無罪判決」後の記者会見では、「これ以上、私の時間を奪わないで」と語っている。切実で、素敵な言葉だ。村木元局長の夫も、「控訴は絶対にしないでほしい。もし控訴となると、妻の職場復帰がまた遅れる。妻は50代半ばで、時間があまりないのです」と語っている。50歳代、まさに仕事の仕上げの時期であり、この言葉は重い。絶対に控訴しないで欲しいし、決してするべきではない。
今回の件を教訓に、特捜部は今後絶対に冤罪を出さないように厳しく反省し、努力して欲しいと願う。と同時に、密室での取り調べを全面的な可視化し、さらに言えば他の諸国に例があるように、弁護士を立ち会わせる等の導入を急ぐべきと考える。裁判員裁判の前になすべきことのように思われてならない。