ツーリスト・キャンプ・ゲルに向かう途中、いくつかのゲルが見えた。
ガイドのペジェーが「馬乳酒を作っている所」という。
それを聞いて、モンゴルを知らないぼくは「清酒会社」を連想。
かみ合わない質問をした後で、モンゴル知らなさすぎを思い知った。生まれ育った環境が違えば、常識のありかも異なってくるから、なんでそんな質問をと驚かれることになる。
そんなんで常識がないから、ウランバートルのデパートで馬乳酒を購入しようとふと思ってしまったりもする。
春から秋にかけての日の長い時期になると、馬は繁殖期を迎える。暖かい時期に受胎して、11ヶ月後の暖かくなる時期に生まれるのが馬の繁殖サイクルだ。したがって、主に夏が母馬の授乳の時期。
馬乳が採れるのも夏の間だけのこと。
それに冬は雪で閉ざされ、エサが不足する。なので、ひと家族で飼える馬の頭数も限られる。だから企業で馬乳酒醸造などありえない話となる。
この馬乳酒は、あまり野菜を食べる習慣がない遊牧民(ノマド)達にとって、大切なビタミン源だ。彼らにとっては馬乳酒は酒ではなく、命をつなぐための尊い水なのだ。モンゴルでは赤ん坊から年寄りまで飲用する。
ノマドのゲルに行くと馬乳酒をごちそうしてくれる。正確に言うと、ガイドが前もって連絡を取り、連れて行くゲストたちによってスーテーツァイと呼ばれるモンゴル式ミルクティーか馬乳酒を用意させるのだ。馬乳酒は丼のような入れ物になみなみといれて出される。
馬乳酒の酒精濃度は1%から1.5%。馬乳に含まれる乳糖の酵母による発酵と、エタノール産生型乳酸菌に由来する。馬乳をひたすらかき混ぜて、好気性発酵を進行させるゆえ強い酸味があり、二酸化炭素による微発泡性も有する。また馬乳酒は特有の臭気もある。
大量の乳酸菌を摂取することになるため、腸内環境の改善、老廃物の排泄といった効果がある反面、苦手な人は飲みすぎると下痢をするとも。
・・・注いでいただいたお酒は飲み干す。ということで、どんぶり一杯の馬乳酒をいただいたのだが、体調には変化なし。好きだな。この酒。。