tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

大草原

2018-08-24 22:54:39 | 日記

モンゴルのチンギス・ハーン空港への到着は夕刻。タラップを降りると熱気が押し寄せてくる。
空港の建物の先にはきれいな虹が見えた。

夕闇迫るウランバートルの街を抜けると景色は一転。見渡すばかりの草原だ。地平線に太陽が沈み、西の空はその残光で赤く染まっている。対面交通の高速道路はラッシュ・アワー。HYUNDAIのトラックがよたよたと走る傍らをトヨタ・プリウスが追い越していく。
日本では2003~11年に作られていた第二世代のモデル。その中古車がリビルドされて輸入されているらしい。バッテリーをすべて新しいものに交換するので価格は高いが、粗悪な中国車や韓国車に比べて日本車は壊れないし燃費がいいから大人気とのこと。
1時間ほど走り、ダートへ。ハイビームにしたヘッドランプがわだちを照らしているものの、はるかかなたの地平線は漆黒たる暗闇。空には満天の星だ。
車の灯りに驚いたトビネズミがぴょんぴょん飛び跳ねていく。
4輪のわだちこそあるものの、チンギス・ハーンの時代となにひとつ変わらない、ワイルドで原始的な大草原だった。

暗闇のはるか向こうに、灯台のように一つだけ灯りが見える。かなり走って、その灯りが対向するオートバイのヘッドランプとわかったのは、10分以上走ってのことだ。くねくねと曲がるダート。ところどころに大きな水たまりがあり、そのそばは車がスタックしそうなほど掘れている。

「あっ、ゲルだ!」

草原の奥にぽつりと白いゲルが見えた。ノマドって本当にゲルに住んでる。その当たり前のことに妙に感動する。

ダートでもみくちゃに揺られて1時間。アルタンボラグのツーリストキャンプ・ゲルに到着。キャンプ長モチコ(本名:ムンフツェツェグ)さん、以下、総勢10名の現地スタッフ、プラス、2匹のでかい牧羊ワンコのお出迎え。
そしてウェルカム・ドリンクのミルクのおもてなし。めちゃくちゃ濃い味。

10軒ほど連なるゲルは、それぞれが12畳ぐらいある大きなもので、六角形の一辺に入り口、ほかの4辺には4つのベッドが壁沿いに配置され、一番奥には文机が置いてあった。天頂部には明かり取りと薪ストーブの煙突のための穴があり、壁面はすべて羊毛を固めたフェルトで覆われている。ゲルは必ず南向き。

モンゴル草原の夜は、風が冷たくそして静かだった。当然のことながら、トイレはゲルから出てほかのゲル伝いに50mほど行った先。新月のこの夜は、懐中電灯なしでは前に進めない。ワンコが心配してくっついてくる。
太陽で充電した電池で明かりがともるゲルの中は実に気持ちよく、ぐっすり眠った。大自然に包まれた気分で最高だった。

翌朝、空はすっかり明るいのに、まだまだ太陽は顔を出さない。朝露に濡れた草原には丈の短い何種類ものハーブが力強く自生。優しく、遅しい、心身を丸ごと潤すような香りに包まれる。
モンゴルは、ここ数年雨が少なく、渇水状態だったらしい。今年は7月にけっこう雨が降り、草が戻ってきたのだそうだ。場所によってはエーデルワイスの白い花が咲き乱れている。まさに大草原。
なんか絵葉書のなかに入っちゃったみたいだな。