モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

その83:江戸を歩く ⑦ 素晴らしい『旧古河庭園』

2009-04-17 08:04:07 | ときめきの植物雑学ノート
いくつか庭園・公園を見て回ったが、『旧古河庭園』は素晴らしい。

「六義園」の明るく詩的な庭造りにも感心したが、この『旧古河庭園』はハイカラな聡明さが感じられた。
施主と庭師などのチームによる総合芸術の勝利であることは間違いない。

この聡明さを伝えるのに、1枚の絵或いは写真で切り取れないもどかしさがあるが、設計・デザイン・施工・庭で使う植物や石などの素材などの組み合わせに“理”が貫かれているのだろうと思う。

(写真)駒込から王子までの周辺地図 (中心が旧古河庭園) by google


『旧古河庭園』の場所的な位置
幕末の1860年11月に江戸に来たイギリスのプラントハンター、ロバート・フォーチュンも歩いたという、団子坂、染井、王子は、江戸の大名屋敷、裕福な商人、庶民などに植木・花を提供するセンターであり、江戸城から日光に向かう本郷通りで貫かれている。

この道筋には、「後楽園」「六義園」『旧古河庭園』「渋沢庭園」「飛鳥山」などいまでも残っている。

『旧古河庭園』は、JR駒込駅から徒歩で15~20分、ここから「飛鳥山」へは徒歩で15分もかからない。
東京で40年以上も暮らしていたが、この一帯に足を踏み入れたのは初めてであり、お互いにこんなに近いとは思いもしなかった。
江戸は徒歩圏内だということが実感できた。

『旧古河庭園』の由来

江戸時代には、この地に植木屋仁兵衛が造った植木御用庭園「西ヶ原牡丹屋敷」があり、
徳川吉宗時代からのこの一帯は、将軍家の鷹狩りの場であり、狩で使う殿舎や動物を飼育する厩舎、庭園などがあったという。植木屋仁兵衛は、染井村の植木屋というのをどこかで読んだ記憶があるが、その確認は出来なかった。

明治になって元勲の一人で日清戦争時の外務大臣、陸奥宗光がこの牡丹屋敷を購入し別邸として使い、公園の入り口である小高い丘に洋館を建て、その前面と斜面に西洋庭園、低地に日本庭園を作った。直接は関係しないだろうが陸奥宗光の家紋は仙台牡丹のようだ。

洋館は結構大きいが、お茶を飲むだけなら一階の喫茶室に入れるが、全体を見る場合は事前に予約をしなければならない。(ということで見れませんでした。)

この洋館を設計したのが、英国のジョサイア コンドル博士(Josiah Conder 1852~1920)で、御茶ノ水にあるニコライ堂などを設計し、日本の建築家を育成した人だ。このニコライ堂の鐘の音は素晴らしいとタクシーの運転手さんが言っていたが、一度聞いてみたいものだ。

日本庭園を造園したのは、近代日本庭園の代表的な造園家である七代小川 治兵衛(おがわ じへえ、1860-1933)で、京都の平安神宮、円山公園なども手がけている。

さらに、この明治時代に成功した古河・住友・三井・岩崎・藤田などの財閥家の庭園も手がけており、新しいパトロンが大名庭園とは異なる新しい庭園を創る作家を育てた時代でもあった。

「小石川後楽園」、「六義園」などの大名庭園には直線がないが、『旧古河庭園』には直線と自然な曲線が上手に組み合わされていた。

(写真)『旧古河庭園』園内マップ


庭園入り口を入ると洋館が正面となり、その洋館周辺にはフランス幾何学庭園が小さく作られていて、5月頃にはバラが見事のようだ。
この洋館の左手は、10mは段差がある階段下となるが、ここに起伏のある地形を利用するイタリア式庭園が作られ、一番下に日本庭園が作られている。

(写真)「洋館」(ジョサイア・コンドル設計)    洋館前のフランス式庭園
 

(写真)段差を利用したイタリア式庭園        池を中心とした日本庭園
 

(写真)素晴らしい日本庭園


自然界には直線というものがないという。「フランス幾何学式庭園」は、自然を統治する国王の権威を直線の組み合わせで表現した。この庭園へのアンチが「イギリス風景庭園」であり、より自然界を庭に取り入れようとした。
日本庭園は、前方後円墳から直線を多用することなく「小石川後楽園」、「六義園」などの大名庭園にも直線がない。
『旧古河庭園』には直線と曲線が上手に棲み分けていて、江戸から明治への“開国”“近代化”の息吹きが感じられ、施主、陸奥宗光のセンスの良さを感じた。

お奨めの庭園です。

補足:<江戸を歩くシリーズ>は、
ロバートフォーチュン『幕末日本探訪記―江戸と北京』(講談社学術文庫)に刺激され、彼の足跡をたどってみました。
ここには、英国人が見た当時の美しい日本が描かれており、忘れつつある文化とか価値感を見つめなおすことができ、とても参考になった日本のガイドブックでした。
次はイサベラバードを読もうかな? など思っていますが水遣りで旅行できない時期になったので、朝帰り程度で済む圏内でしばし我慢し「庭園」を追っかけて見ます。

その73:江戸を歩く ① 小石川御薬園跡地、小石川植物園
その74:江戸を歩く ② 江戸の庭園、六義園(りくぎえん)
その75:江戸を歩く ③ 江戸の『出島』長崎屋
その76:江戸を歩く ④ 日本の名庭園「小石川後楽園」
その77:江戸と同時代のヨーロッパの庭園、『フランス式庭園』
その80:江戸を歩く ⑤ 江戸の育種園『染井村』と「ソメイヨシノ」
その81:江戸を歩く ⑥ 飛鳥山の花見

その83:江戸を歩く ⑦ 素晴らしい『旧古河庭園』

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