モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

沈黙の奥にあるもの

2005-01-06 14:04:40 | Weblog
2004年10月1日
シアトルマリナーズのイチロ選手が、この日5打数3安打で259本の安打数世界新記録を達成した。
最終的には、安打数262(世界新記録)打率 .372(アメリカンリーグ1位)という素晴らしい成績であった。
このイチロー選手にシーズンオフのインタービューが殺到するのは当然だが、その中で驚いた瞬間、出来事があった。
それは、インタビュアーの質問に答えられない比較的長~い沈黙の時間であった。
この沈黙に、その時のイチロー選手の思いの全てがこめられていたのだろう。

記録を目指すとき、勝負を行っている瞬間、勝負に向かうまでの間、頭はあらゆるコトを考えている。
見れども見えず、聞けども聞こえずだけでなく、眠れない、吐き気がする、体が自分の意志どうりに動かないなど、
平常と異なる症状を示す。
プレッシャー、ストレス、金縛りなどであり、誰しもがこれを経験する。
しかも、自分にとって一番重要と思うときほどこの圧力が強くなる厄介な代物なのだ。
これを如何に乗り越えていくかが、自分の一番重要なモノ・コトを獲得する近道にあり、
鍛錬・場数を踏むことにより、身体だけでなく心を鍛えない限り乗り越えられない。。

プロ中のプロ イチロー選手にも金縛りになったときがあったようだ。
自己新その先の世界新記録の安打数がかかった9月中頃に、2試合無安打が続いた。
インタビュアーは、この2試合無安打の時のイチロー選手の心理状態を聞いた。
イチローは、宙の一点を見つめ、ウ~、無言、ウ~、無言。であった。
テレビから伝わる緊張感。イチローほどのスーパスタ-の苦悩が垣間見られた。

テレビというメディアは、15秒以上画面が見えない、音がないという状態に耐えられないと思う。
それだからこそ、イチローの無言は、圧倒的な苦悩する人間の存在感があった。

「もう打てないかと思った」
イチロー選手は、自分の世界の終末を見たのだろう。

終末を見た数ほどヒトは強くなれる。そして、やさしくなれる。
鍛えられないやさしさ、冗長なやさしさは、鍛錬という裏付けがないだけリアリティがない。
イチローには、ヒトとしての圧倒的な存在感があった。
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