モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

ユリシキー・セージ(Salvia jurisicii)の花

2009-04-29 13:50:00 | セージ&サルビア
(写真)ユリシキー・セージの花


バルカン半島旧ユーゴスラビアが原産のサルビア・ユリシキー(Salvia jurisicii)。

英名では“Turkish Sage”つまり“トルコのセージ”と呼ばれているが、命名者の一人であるユリシキー(Jurišić, Zivojin J. 1863-1921)の名を冠した花なので、『ユリシキー・セージ』と呼びたいぐらいだ。イギリスでもターキーセージではなく“ユリシキーのセージ(Jurisici's Sage)”と呼ぶケースが出始めているようだ。

このユリシキー・セージは、セージの仲間としては実に不思議なフォルムをもっている。
全身に繊毛をまとい、葉は羽のように分岐し縁にのこぎりのような切れ込みがある。
そして、最大の不思議なフォルムは、花自体にある。

(写真)ユリシキー・セージの葉
          

まず葉の形だが、コスモスのような或いはセンテッド・ゼラニウムに近い葉をしていて、アキギリ属又はサルビア属の仲間にはあまりない形だ。
そして、葉だけでなく茎・花にも細かい白い小さな毛が無数についていて、全身を守るかのごとく被っている。

このフォルムは当然理由があってこうなっているはずで、リサーチしたが、なかなか文献自体も情報も無いにひとしい。

そこで、いまわかっていることから推理すると
原産地の環境は、高山であることがわかっている。
だから高山植物のように耐寒性が強く、強い風などにも耐えられるように低く生育し横に広がる傾向がある。
栽培してみると、真冬でもグリーンの葉を地上すれすれに出し、寒さに耐えていた。春になり茎を伸ばし始めたが、すべての茎が真横に360度方向に伸びていき、支柱を立て補強しようかなと思ったぐらいだった。
それがいつの間にか自己修正し、光に向かって直進する枝として成長した。

衣服のように身にまとっている細かい毛は、外的な環境およびその変化から自己を守る役割をしている。冬場は、寒さから身を守り、夏場は陽ざしから身を守り水分の蒸発を防ぐ役割を果している。

さらに、細かい毛があると動物が食べにくいということもあるので、食べられないように進化してきたのだろう。

特徴だけをつまむと、砂漠のサボテンのような印象がするが、高山植物の仲間で乾燥に強い植物であることは間違いない。

(写真)ユリシキー・セージの花の拡大
           

この花を見ていて、何かがおかしいと思う。なんか変だという直感が働く。
通常アキギリ属又はサルビア属の花は口唇型で、上唇と下唇があり、喉の奥に蜜がありその近くに雌しべがある。雄しべは上唇にあることが多く、昆虫が蜜を吸うために下唇に乗ると雄しべの花粉が昆虫につくことになる。

という既知の感覚で見ると、やっぱり変だということがわかる。

何が変かというと、“花自体が上下になっていない”ということに気づくのに時間がかかった。
横になっているのが多く、上下逆転も結構ある。
これが普通で、上下が正しいのがあったらこれがおかしい形状のようだ。

何故逆転したのだろう?
という疑問には答えられないが、自生地での環境ではこの形状が昆虫にとって便利だったのだろう。

サルビア・ユリシキー(Salvia jurisicii)
・シソ科アキギリ属の耐寒性がある多年草
・学名:Salvia jurisicii Košanin ex Jurisic。英名はターキ・セージ(Turkish Sage)
・原産地はバルカン半島セルビア、ブルガリア、アルバニアの山岳地帯。
・-18℃までの耐寒性があり、高山植物のように草丈20~30cm程度と低く横に広がる。
・葉に特徴があり、サルビアとしてはめずらしい羽状複葉(pinnate leaves)で繊毛に覆われている。
・開花期は、6~8月と書かれているが、4月下旬から咲き始めた。
・直立する花穂を伸ばし薄紫色の小さな花を咲かせる。花にも細かい毛が密集している。
・乾燥に強いようなので、乾いたらたっぷり水をあげる。
・冬場は腐葉土・ワラなどでマルチングし戸外でも管理できる。(関東以西)

命名者は2名で、1926年に命名されているので、発見も比較的新しい植物のようだ。
Košanin, Nedelyko (1874-1934)
Jurišić, Zivojin J. (1863-1921)
両名ともプロファイルがよくわからなかった。ユリシキーは、ベオグラードの植物園の園長で大学教授のようだ。

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