(写真)千日小坊の花
アンデスの花には不思議な魅力がある。
花色としても珍しい黒の「サルビア・ディスコロール」、
そして3→3と枝分かれして、紅色のボンボリのような花をつけ徐々に大きくなっていく「アルテルナンテラ・ポリゲンス」の花が咲いた。
いずれもアンデス山中に咲く花であり、「千日小坊」は原種、「アルテルナンテラ・ポリゲンス」の園芸品種として愛知県一宮市の角田ナーセリーで作出された。
角田ナーセリーの開発商品
この「千日小坊」は、現在では40万ポットも販売するという人気商品だが、
角田ナーセリーの開発秘話を読むと、イギリスの花の展示会で3鉢だけブースの片隅にあったそうだ。これを輸入し、その後、1996年のジャパンガーデニングフェアーに出品し、この当時は名前がまだ付いていなかったそうだが、「千日紅(せんにちこう)」に似て小さな花だから“千日小坊”という名前をつけてもらったそうだ。
(写真) アルテルナンテラ・ポリゲンスが採取された場所(紫色のマーク) by google
原種「アルテルナンテラ・ポリゲンス(Alternanthera porrigens)」の原産地は、南米西岸を南北に7500㎞走る世界最長の山脈アンデス山脈に自生し、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリなどに分布し、熱帯・亜熱帯地方では2000-3000mの高地に、温帯地方では200-500mの山中に自生している。
原種を採取したのは、キューのプラントハンター、スプルース
この原種「アルテルナンテラ・ポリゲンス」を採取したのは、英国キュー植物園のプラントハンター、スプルース(Spruce, Richard 1817-1893)で、1857年にエクアドルのアンデス山中で採取した。
スプルースは、幼少の時から植物に興味があり身近な植物を採取してはその地域の植物リストを作っていた。しかし、専門的な植物学を学んだことがないプロのプラントハンターとなり、1849年から1863年までの14年間アマゾンからアンデス地帯を探検し、3万以上の植物を採取して標本を作り、5473種もの新種を発見した。キューのプラントハンター第一号のフランシス・マッソン(Francis Masson 1741-1805)同様にキューの一時代を築いた人間でもある。
特に有名なのは、原因が良くわからなかったマラリアの治療薬『キニーネ』の原木キナノキを採取し、スリランカなどのイギリスの植民地農園で栽培することに寄与したことだろう。
キナノキは、アマゾン川上流のアンデス山脈東部の雨が多く霧が発生する斜面にしか生息しない。栽培が難しい樹木だが、これの種子を採取し、育成し、スリランカで栽培できるようにした。
キナノキから取れるキニーネは世界を変えた薬用植物でもあるが、最終的には園芸・栽培技術の水準が高かったオランダがジャワ島で大量に栽培することになり、キニーネ供給の独占体制をつくることになる。
現在は、戦後にあの頭から散布されたことで悪名高いDDT等が蚊を駆除し、マラリアの発生は低下している。
もう一人の採取者:カミング(Cuming, Hugh 1791-1865)
カミングは、スプルースよりも1年早い1856年9月にボリビアで「Alternanthera porrigens var. ovata」を採取していたがこの異種は現在良くわからない。
カミングは、貝の膨大な収集とフィリピンでの蘭の収集で著名な英国のプラントハンター・貝類学者で'Prince of Collectors'とも称されている。
1819年、彼が28歳の時にチリに移住し、1821年から南太平洋で貝の収集を始める。1831年には英国に戻り、1836-1839年はフィリピンにわたり蘭の新種を発見するとともに、生きた蘭を英国に送った最初のプラントハンターでもあった。
(写真)1千日小坊の立ち姿
千日小坊(Alternanthera porrigens 'Sennichi-Kobo')
・ヒユ科アルテルナンテラ属の半耐寒性の常緑多年草。
・学名は、Alternanthera porrigens cv. Senniti-kobo。 属名はalterno(互生)+anthera(葯)でおしべとめしべが互い違いに生えることを意味し、種小名のporrigensは広がった様をいう。
・原種の学名は、Alternanthera porrigens (Jacq.) Kuntze(1891年命名)、英名はDwarf bozu。
・原産地はペルー・エクアドルで、原種アルテラナンテラ・ポリゲンスの園芸品種
・草丈は、60~80cm。
・短日性で10~2月に小さな赤紫の花を咲かせる。
・暑さには強いが、冬の寒さには弱く室内で栽培したほうが良い。
・日当たりの良い場所で栽培する。
・花後に強く刈り込む。挿し木で増やす。
<管 理>
・花後、切り戻しをする。
・気温が5℃以下だと葉が紅葉したり、地上部が枯れたりするので、室内の日当たりの良い場所に入れる。水は控えめに。
・4月の春野菜を植え込む時期になったら植え替えて、日が当たる戸外に。
・9月上旬までに、切り戻しをし続ける。根元から15―20cmのところで。この時、水+肥料は多めに。注意することは日照管理。
・11月上旬(10月下旬)から可愛い花が咲く。
原種の命名者
オットー・クンツ(Kuntze, Carl Ernst Otto 1843-1907)
クンツは実業家として成功し、この資金を使い余生は趣味の植物探索旅行と植物収集に費やし、植物分類の体系に新説を提案し迫害があったドイツの植物学者。チャとツバキは同属と修正したのがクンツ。
最近は実業界から趣味を極めて学者に転進するほどのヒトがいないようなので、興味を持ちフォローしてみようかと思った。
アンデスの花には不思議な魅力がある。
花色としても珍しい黒の「サルビア・ディスコロール」、
そして3→3と枝分かれして、紅色のボンボリのような花をつけ徐々に大きくなっていく「アルテルナンテラ・ポリゲンス」の花が咲いた。
いずれもアンデス山中に咲く花であり、「千日小坊」は原種、「アルテルナンテラ・ポリゲンス」の園芸品種として愛知県一宮市の角田ナーセリーで作出された。
角田ナーセリーの開発商品
この「千日小坊」は、現在では40万ポットも販売するという人気商品だが、
角田ナーセリーの開発秘話を読むと、イギリスの花の展示会で3鉢だけブースの片隅にあったそうだ。これを輸入し、その後、1996年のジャパンガーデニングフェアーに出品し、この当時は名前がまだ付いていなかったそうだが、「千日紅(せんにちこう)」に似て小さな花だから“千日小坊”という名前をつけてもらったそうだ。
(写真) アルテルナンテラ・ポリゲンスが採取された場所(紫色のマーク) by google
原種「アルテルナンテラ・ポリゲンス(Alternanthera porrigens)」の原産地は、南米西岸を南北に7500㎞走る世界最長の山脈アンデス山脈に自生し、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリなどに分布し、熱帯・亜熱帯地方では2000-3000mの高地に、温帯地方では200-500mの山中に自生している。
原種を採取したのは、キューのプラントハンター、スプルース
この原種「アルテルナンテラ・ポリゲンス」を採取したのは、英国キュー植物園のプラントハンター、スプルース(Spruce, Richard 1817-1893)で、1857年にエクアドルのアンデス山中で採取した。
スプルースは、幼少の時から植物に興味があり身近な植物を採取してはその地域の植物リストを作っていた。しかし、専門的な植物学を学んだことがないプロのプラントハンターとなり、1849年から1863年までの14年間アマゾンからアンデス地帯を探検し、3万以上の植物を採取して標本を作り、5473種もの新種を発見した。キューのプラントハンター第一号のフランシス・マッソン(Francis Masson 1741-1805)同様にキューの一時代を築いた人間でもある。
特に有名なのは、原因が良くわからなかったマラリアの治療薬『キニーネ』の原木キナノキを採取し、スリランカなどのイギリスの植民地農園で栽培することに寄与したことだろう。
キナノキは、アマゾン川上流のアンデス山脈東部の雨が多く霧が発生する斜面にしか生息しない。栽培が難しい樹木だが、これの種子を採取し、育成し、スリランカで栽培できるようにした。
キナノキから取れるキニーネは世界を変えた薬用植物でもあるが、最終的には園芸・栽培技術の水準が高かったオランダがジャワ島で大量に栽培することになり、キニーネ供給の独占体制をつくることになる。
現在は、戦後にあの頭から散布されたことで悪名高いDDT等が蚊を駆除し、マラリアの発生は低下している。
もう一人の採取者:カミング(Cuming, Hugh 1791-1865)
カミングは、スプルースよりも1年早い1856年9月にボリビアで「Alternanthera porrigens var. ovata」を採取していたがこの異種は現在良くわからない。
カミングは、貝の膨大な収集とフィリピンでの蘭の収集で著名な英国のプラントハンター・貝類学者で'Prince of Collectors'とも称されている。
1819年、彼が28歳の時にチリに移住し、1821年から南太平洋で貝の収集を始める。1831年には英国に戻り、1836-1839年はフィリピンにわたり蘭の新種を発見するとともに、生きた蘭を英国に送った最初のプラントハンターでもあった。
(写真)1千日小坊の立ち姿
千日小坊(Alternanthera porrigens 'Sennichi-Kobo')
・ヒユ科アルテルナンテラ属の半耐寒性の常緑多年草。
・学名は、Alternanthera porrigens cv. Senniti-kobo。 属名はalterno(互生)+anthera(葯)でおしべとめしべが互い違いに生えることを意味し、種小名のporrigensは広がった様をいう。
・原種の学名は、Alternanthera porrigens (Jacq.) Kuntze(1891年命名)、英名はDwarf bozu。
・原産地はペルー・エクアドルで、原種アルテラナンテラ・ポリゲンスの園芸品種
・草丈は、60~80cm。
・短日性で10~2月に小さな赤紫の花を咲かせる。
・暑さには強いが、冬の寒さには弱く室内で栽培したほうが良い。
・日当たりの良い場所で栽培する。
・花後に強く刈り込む。挿し木で増やす。
<管 理>
・花後、切り戻しをする。
・気温が5℃以下だと葉が紅葉したり、地上部が枯れたりするので、室内の日当たりの良い場所に入れる。水は控えめに。
・4月の春野菜を植え込む時期になったら植え替えて、日が当たる戸外に。
・9月上旬までに、切り戻しをし続ける。根元から15―20cmのところで。この時、水+肥料は多めに。注意することは日照管理。
・11月上旬(10月下旬)から可愛い花が咲く。
原種の命名者
オットー・クンツ(Kuntze, Carl Ernst Otto 1843-1907)
クンツは実業家として成功し、この資金を使い余生は趣味の植物探索旅行と植物収集に費やし、植物分類の体系に新説を提案し迫害があったドイツの植物学者。チャとツバキは同属と修正したのがクンツ。
最近は実業界から趣味を極めて学者に転進するほどのヒトがいないようなので、興味を持ちフォローしてみようかと思った。