モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

サルビア・チェリーセンセーションの花

2020-06-19 15:19:10 | セージ&サルビア
「サルビア・チェリーセンセーション」 
「サルビア・ファイヤーセンセーション」


(写真)「サルビア・チェリーセンセーション」の花


初対面で「サルビア・センセーション」シリーズ商品には“驚き”と“違和感”を感じた。

ホームセンターの広い園芸売場に行っても、遠景で観て自分の欲しいものがある場所が大体目に入ってくるのが常だが、
5月初旬の連休明けの頃(と言っても新型コロナで外出自粛の時期だったが)、
この日は欲しいものが目に入ってこなかった。

時期外れの見切り品的なハーブ類で、これまで栽培したことがないものは手に入れたが、肝心のサルビアがない!

サルビアの特色は、
唇状の花、
葉からはシソ科特有の薬臭い匂い、
キリッとしない姿勢、
雑草のように八方に伸びていくだらしない育ち方等にある。

このだらしない育ち方をあえて良さ気に言えば「フラクタル」的ともいえそうだ。
本来のフラクタルとは、リアス式海岸、雲の形など「部分は全体と相似形」ということを意味しているが、サルビアの場合は、部分の奔放さは全体の奔放さに通じるということにありそうだ。

(写真)サルビア・チェリーセンセーションの株立ち 


ところが、「サルビア チェリーセンセーション」は、
買ったばかりで性質が良く分からないが、
・株立ち30㎝でサルビアには珍しくキリッとした直立形で、
・濃い目の大柄な緑の葉、
・チェリーレッド色の大きなシソ科特有の唇形の花、
・香りはセージ特有の消毒液のような薬臭い香りがするがかなり薄い、

主要なものがサルビア=セージ的でなく、意外性に満ちている。

サルビアと意識しなければ、 ”これはあり!”。
しかも、商品クレジットを読む限り欠点の少ない優秀な園芸商品だと思う。

その優秀さは、『ジャパンフラワーセレクション2015‐2016 受賞品種』ということで証明されている。

この賞は、日本発の花卉の新品種の開発・市場への導入を支援するために官民あげて2004年4月に団体を作り、そのシンボルとしての賞であり、2015年の優れた新商品であることを証明している。

でもなぜかときめかない。

出来の悪い、野性的で、不揃いで、薬臭い香りの原種サルビアに対して
優秀なロボットサルビアを見ているようだ。

これが購入して1.5ヶ月ぐらいの間のファーストインプレッションだった。

サルビアの開発会社ストーリー
 


このサルビアを開発したのは横浜に本社がある『横浜植木株式会社』。
1891年(明治24年)に創業した老舗の園芸企業で、米国ワシントンのポトマック河畔の有名な桜並木、
この桜の苗木を当時の尾崎行雄東京市長の要請に答えて1912年に出荷したのがこの会社だった。

創業時の頃の横浜は、当時の日本の輸出商品の代表である生糸やヤマユリの球根などを欧米に輸出する表玄関でにぎわっており、
又、海外から日本の未知の植物を収集・採取するプラントハンター達が集まっていた園芸関係のヒト・モノ・カネ・情報が集積していたところだった。

この会社が サルビアの開発に注力しているのは何故なのだろう?
横浜植木㈱の園芸商品の主力は、ペチュニア、神戸ビオラ、多肉植物、野菜苗、そしてサルビアのようだ。
フォーシーズン対応で、サルビアには夏場を含めた春から秋が担当なのだろうと思うが、これ以外の理由がきっとあるのだろう。

開発した商品は権利を取得するために登録されるので、登録情報から横浜植木㈱のサルビア開発の動きを確認すると以下のようだった。

2011年2月22日、サルビア属『はまごろも1号』の登録を出願し、2019年10月31日には「はまごろも7号」の出願をした。
この間で合計7品種を“はまごろも”という開発コードで出願していた。
出願から登録まで2~3年かかるので、「はまごろも5号」まで登録されおり、実際の販売商品名は違ったものになっている。

「はまごろも4号」からは、開発のパートナーとして「国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構」の名前があり、オャ! と思った。
この研究所は、放射線医学、量子ビーム(放射線、高強度レーザー、放射光)、核融合を研究しているところで、研究テーマを外部からも広く募集し開かれた研究所のようだ。
しかも、施設・機材を有料で利用できる仕組みを持っており、横浜植木㈱は、サルビアの分野で上記研究所の施設を活用し、イオンビーム照射による新品種開発をおこなっているようだ。

雄しべ、雌しべを使った古来からの方法である「交配」では時間とコストがかかる。
イオンビーム照射で「突然変異」を作り、その中から良いものを選んでいく。
種の開発の最先端はこのように変わっていたのだ。

この物語はこれでお終いではなく、これから始まるのだろうが、どんな物語が作れるのだろうか? 
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