彦四郎の中国生活

中国滞在記

地球環境、異常気象が顕著に―TIMES誌「今年の人にグレタ」―グレタとトランプ・小泉進次郎

2019-12-22 11:34:41 | 滞在記

 今年の6月から11月下旬までにかけての6カ月間の間に、東シナ海や西太平洋(日本列島の南)には30個もの台風が襲来した。中国福建省での暮らしも2013年9月以降7年目となっているが、中国の東シナ海沿岸でも、今年ほど台風襲来が多かった年はない。そして、12月に入っても、フィリピンから南シナ海を経て中国南部やベトナムに上陸する台風が2つあった。とりわけ日本の関東地方に上陸した超大型台風19号の被害は大きかった。

 東シナ海台風シーズンの5カ月間、私は7月上旬・8月下旬・10月上旬・11月上旬の4回、福建省福州空港-関西空港間を東シナ海海上を飛行機で往復した。4回とも、台風襲来による飛行機の欠航を心配しっぱなしだった。7月上旬~11月上旬までの4カ月間は、実に週に2つの台風が東シナ海から中国や韓国や日本に来ていたからだ。異常なほどの台風の発生と襲来の年だった。中国でも台風による被害が特に今年は相次いだ。今年、地球温暖化による被害で世界で最も大きかったのは「日本」と発表もされた。さもありなんと思う。

 台風の異常なほどの発生と大型化の原因は、二酸化炭素(co2)による地球温暖化にともなう、気温上昇と海水温上昇によるものである。日本のテレビ報道では、「このまま地球環境が推移すると、地球温暖化で21世紀末までに0.3~4.8℃上昇」と予想されていると報道されていた。

 広大な中国の国土。中国の北西部には「黄土高原」や「砂漠」が広がっていて、オアシスの都市が点在している。2017年6月に、中国北西部の寧夏回族自治区の省都・銀川に行った。街の近くを流れる黄河。この黄河周辺には緑地が広がるが、黄河から20kmほど離れると広大な「黄土高原」や「砂漠」が広がる。銀川から北京に近い山西省の省都・太原まで1時間半あまり、この黄土高原上を飛行機で飛んだ。延々と続く黄土高原の茶色。太原の上空付近に来てようやく緑地が見えてきた。

 今年の9月の中国の新聞報道では、東シナ海沿岸の省での台風被害の増大とともに、「黄土高原」や「砂漠」地域にまばらに緑地ができ始めてきているという報道があった。これは、異常気象・気候変動の影響で、これらの地域での降水量が増加し始めたためだと報道されていた。1億5千年前から6千8百万前までの時代、中国北西部やモンゴルゴビ砂漠には緑地や森が多く、恐竜が闊歩していた時代だった。気温が21世紀末までに4.8℃上昇すれば、海の周辺は水没面積が広がり、中国北西部やゴビ砂漠は緑地が広がってくるという可能性は現実味を帯び始めてきている。

 今年の9月、アメリカのニューヨークで、「国連気候行動サミット」が開催された。ここで、スウェーデンの環境活動家・グレタさんが、「私たち人類は滅亡しかかっているというのに、あなたたちが話すのは金のこと、永遠の経済成長というおとぎ話ばかりだ」と怒りを込めてスピーチし、世界的な反響を呼んだ。その後、世界各国で、若者を中心に「気候変動危機」を訴える集会やデモが相次ぎ大きなうねりともなった。

 12月上旬からスペインの首都・マドリードで開催された「第25回国連気候変動枠組み締結国際会議」(COP25)。これについて日本のテレビ報道では、「小泉環境相に世界が逆風」「安倍サン、安倍サン 石炭ヤメロ、COP25 日本批判高まる」「化石賞に続き石炭賞までも日本に」という報道が。CO2排出の多い石炭火力発電所を増加させ続けている日本政府に対する世界の目が厳しくなってきている。日本はもはや世界の環境への取り組み先進国ではなく、残念ながら逆行する国と見られる国になってきているようだ。

 これらの環境への取り組みに関しては、アメリカのトランプという人は、2015年に締結されたパリ協定(地球温暖化防止の枠組み)から脱退し、世界から批判を浴びたが、平然としている。「一、二に金・金・金、3・4がなくて、自国ファースト・金・金・金」の人だ。世界の人権問題などについても基本的に関心がない。今回のCOP25の会場では、アメリカの俳優・ハリソンフォード氏(77歳)が「大統領を変えなければ、政府はそうし続けるだろう」とトランプ大統領の環境問題への姿勢を批判した。

 グレタさんもこの会場に来て、「本当に危険なのは、政治家らが数値をいじくったり、環境問題対策に取り組むという"ふり"だけをしていること」と、真剣に取り組もうとしない各国の多くの首脳に対して批判をした。このグレタさんについて、ブラジルのトランプともいよばれているブラジル大統領・ポルソナル氏は、「あんなガキ(グレタ)をマスコミが取り上げるからだ」とぶち上げた。

  そして、日本の環境相・小泉進次郎氏は日本が化石賞や石炭賞の1位という恥ずかしい受賞国となったことについて、「(受賞理由は)具体的対策が盛り込めていないからだが、驚きはないですが、私の発信の効果だと思います」とかの わけのわからないコメントを本人は得意げに、ウケると思ってしていたが、世界の人々の失笑をかっていた。彼は9月の国連サミットでも、「環境問題は 楽しくクールでセクシーに取り組まなければならない」との ずれまくりの失笑発言に続き、日本人としてはとても恥ずかしい思いをさせられる環境相だ。グレタさんの行動や発言について12月、「大人を糾弾するのではなく、全世代を巻き込むような環境問題へのアプローチをするべきだた゛」とこれもまた かなりずれた批判コメントをしていた。

 報道では、「小泉環境相に水俣病患者が落胆 具体策なく"歯切れがよいだけ"の人物」と12月に報道もされていた。日本の環境問題の先駆けともいえる水俣病問題でいまも苦しんでいる水俣病患者救済関する話し合いで、何の具体策も示さない小泉環境相に対する落胆。彼はまさに中身のなにもない、「歯切れのよさだけ男」なのだろう。環境問題に取り組む"ふり"さえもできない人だ。私も彼には落胆させられるというよりも 呆れさせられる。

 2週間あまり開催されていたCOP25は、昨日の12月21日閉会。ブラジルの反対などで、CO2減少への枠組み協定は成立をみることがんかった。そして、アメリカの雑誌「TIMES(タイムス)」誌が毎年特集している「今年 最も話題の人=今年の人」はグレタさんとなった。

 「TIMES」誌の「今年の人」特集は、1920年代より始まっている。初めて「今年の人」に選ばれたのは「あれがあこがれのパリの灯だ」で有名な大西洋横断を始めて飛行機でおこなった飛行家・リンドバーク。アジア人としては、インド人のマハトマ・ガンジーが1920年代に(※イギリスからの独立運動)、1932年には中国の蒋介石中華民国初代総統とその妻、1979年と1985年には中国の鄧小平が2回、1986年にはフィリピンの第11代大統領・マリア・アキノ(※夫が亡命先のアメリカからフィリピンに帰国した際、飛行機のタラップを降りたところマルコス大統領によって暗殺される。反マルコス独裁闘争の中心となり、マルコスやイメルダ夫人は海外亡命。第11代大統領となる。)が「今年の人」に選ばれている。

 2016年には、トランプ新大統領が「今年の人」に。そして2019年は、グレタさんが。つい先日の12月19日、トランプ大統領はツィッターで「落ち着けグレタ、グレタは怒りのコントロールに取り組み、友達と古きよき映画を見に行け」と。これに対して、グレタさんは皮肉を込めて「怒りのコントロールに取り組む10代、今は落ち着いていて、友達と映画を見ている」とツィッターを発信していた。

 今年、日本では、新海誠監督がアニメ映画「天気の子」を発表し、閩江大学日本語学科の学生も映画を見た学生も少なからずいる。環境問題、気候変動問題をテーマとしたアニメ作品だった。今年だけでなく、ここ数年の気候変動による日本の被害は相当なものだった。

 そして、日本の「今年の言葉」。「令和」の「令」という言葉が京都・清水寺で発表され、管主によって書で表現されていた。そして、もう一つのテレビ番組での「今年の言葉」は、ラグビー日本代表の「チーム1」だった。「令」や「チーム1」という言葉が、本当に今年の言葉にふさわしい言葉なのだろうか?  なにか、この言葉も「今年の言葉」としては ずれまくっている印象だ。この言葉を選んだ日本の人々は、現実の大切な問題から目を背けているからだろう。違うだろうと思う。

 日本と日本を取り巻く現実の問題を直視すれば、今年の言葉として「民主」「異常気象」が浮かぶ。言わずもがな、香港や台湾の問題、そして、大型台風の多発という環境問題が抜き差しならぬ時代に突入してきているという現実だ。香港の多くの人々が求めているのは「民(たみ)が主(あるじ)となる民主」、一方、中国大陸では「民(たみ)の主(あるじ)となる民主」。これが、米中間だけでなく、世界的な価値観・文明の衝突となったのが2019年だ。そして、環境・気候変動の大きな影響が顕著になった2019年だった。

 今日12月22日の冬至の日。午前8時から毎日放送で毎週報道されている「サンデーモーニング」報道番組で、コメンテーターの青木さんが、「今年の言葉」について違和感を述べていた。同じように感じている日本人も多いかもしれない。言われてみれば気が付く人も多いのかと思う。

 

 


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