長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

翁のおめんが空気を変えている

2015-09-19 08:59:34 | Weblog

先日の「普茶料理の会」の時、おれきれきが二階に上がる時に、

翁の能面の前で立ち止まった。なんとも不思議な存在感。ホンモノの

芸術とは一瞬にして人の人生を変えることがある。反対に、人はホンモノにふれると、

一瞬で人生が切り開けていく。なんだかしらないけど、そんなものだ。

普茶の会の前日、仕込みが終わって、銀座の骨董屋をのぞいた。主人は85歳になり、昨年は

体調をこわされていて、時々お店の前にいっても看板がでていなかった。その主人から

ハトサブレがおくられてきて、中にメッセージが一言「おあいしたい」とひらがなで書いてあった。

まるで伝書鳩が大事な文をもってきた感じだったのと、なにか大事な遺言でもあるのかと思い、

いそいででかけた。やはり看板がでていないが、お店のウィンドウには、大好きな太田垣蓮月尼の

掛け軸がかけてある。ピンポンを鳴らすと、主人がでてきた。すぐに握手して、二階の仕事場、掛け軸

が飾ってある部屋に通される。昔はここに「二時間以上はおしゃべりをしないでください」と張り紙があった。

もっとも一時間半以上は主人がしゃべるのだが・・・。京都の話、名も残さず死んでいった文人、奇人、奇僧の

話になると、まさに機関銃トークになる。少し体調をくずしていたので、しゃべりはじゃっかん緩やかになった。

「そろそろ、かっぽれの準備があるのでおいとまいたします」と言って立ち上がろうとすると、「少しはやいですが、

還暦のお祝いをわたそうと思います」といって、奥の部屋から掛け軸を持ってきてくれた。

山本玄峰老師の一番弟子で、書だけでなく俳句や芸術を愛し、たくさんのお弟子さんを育てた「中川宗淵」老師の

軸。「人寿」が大きくかかれていて、「申年のひゆく 人寿 無量かな」と書いてある。

三煎めの玉露を吸い切り、握手をして、またおあいしたい伝言をし、押上にもどった。

自宅の床の間に軸をかけ、酒をさかずきにいれて手向け、いっしょに飲んだ。雨がたいそう降っていたけど、

一瞬にして部屋の中は快晴になった。日本人は昔はどの家にも、「私設美術館」という床の間があり、

好きな軸を掛け、好みの花器に季節の花を投げ入れ、花鳥風月を楽しんでいた。今は昔の話になったが。

25日(金) 『倍音の森』 ライブ

演奏:田嶋真佐雄(コントラバス)・熊坂路得子(アコーディオン)
尾引浩志(ホーメイ・口琴・イギル)・luna(うた)

19時開場 19時半開演 ¥5,000(お酒・肴・蕎麦・珈琲 付き)