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毎日の暮らしの中にある大好きなもの、こと、出合(会)いなどについての気まま日記

サクリファイス

2010-08-02 12:37:42 | 読書
新刊「エデン」を読んでからの、いつものように追っかけ逆読みとなった。
ツール・ド・フランスから、今回はチーム・オッジでのツール・ド・ジャポンから始まるロードレース。
何も知らずに読んでさえ、自転車競技の世界に引き込まれた「エデン」だったが、先にこれを読んでいたら更におもしろかっただろう。

この世で最も美しく、効率的な乗り物。
最低限の動力で、出来るだけ長い距離を走るために計算されつくした完璧なマシン。
より速く走るためだけに、他のすべての要素をそぎ落としたのが、ロードバイクだ。

細いタイヤ、あの造形には誰もが美を感じるのではないだろうか。
速く走れることに魅力は感じていたけれど、速く走ることにそれほど興味がなかった私としては、ロードレースの世界は目からうろこ状態だった。
前との距離は10センチほど・・・
マラソンでも、誰かが転倒すれば巻き込まれる危険性があるのに、ロードバイクで。
ちょっと想像できない距離だ。
しかし、危険があったとしても空気抵抗は軽減され、半分以下の力で走ることが出来るのだ。
だからライバルであったとしても、順番に先頭交代をするのがマナー。
フーム、なんか渡り鳥の群れが頭に浮かんだ。

エースの陰にはチームメイトのアシストの力があり、それゆえの心の葛藤があり。
ロードレースを軸に、どんな競技にもあるだろう後ろ暗い世界が描かれたミステリー。
引き込みの上手い作家作品に出合うと、いつも実体験があるのだろうと騙されてしまうのだが・・・はたして!?

「サクリファイス」 近藤史恵