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急場しのぎ…外国人労働者受け入れ拡大策 日本再生につながるはずはない

2014-08-11 10:51:24 | 多文化共生
(以下、SankeiBIZから転載)
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急場しのぎ…外国人労働者受け入れ拡大策 日本再生につながるはずはない

 新成長戦略で打ち出された外国人労働者の受け入れ拡大は急場しのぎでささやかな対策のように見えるが、響きのよい「高度人材」を表看板に掲げ、「技能研修」という名の低コスト労働者の拡大は看板の裏に書いてある…。企業が高度な知験を持つ正社員の人材を増やそうとしないかぎり、日本再生につながるはずはない。

 政府は6月末、新成長戦略で外国人の「働き手」の受け入れ拡大を打ち出した。帰国を前提とし、永住につながる「移民」導入策ではないという建前だが、外国人労働者(OECD〈経済協力開発機構〉など国際機関では「移民」を「外国生まれの移住者」とみなし、外国生まれの労働者をその範はん疇ちゅうに入れている)を移民として捉えるのは、いわば国際常識だ。政府はそろりと移民受け入れに舵を切ったというのが真相だ。大義名分は少子高齢化で停滞する日本経済を活性化させるというものだが、本当に移民で経済は成長するのか。

 新成長戦略は法人税率引き下げで外国企業の対日直接投資を促して高度な技能・技術を持った外国人材を受け入れる。外国人の家事労働者を受け入れ、高度な外国人が日本に定住しやすくする。これまで日本は単純労働者を受け入れなかったが家事労働について単純労働者を流入させる。

 次に、発展途上国の低技能の労働者が現場作業に従事しながら技能を学ぶという建前の「外国人技能実習制度」に基づく「外国人技能研修生」の受け入れをさらに拡大する。

 新成長戦略では技能研修生の滞在期間3年を5年に延長すると同時に、介護福祉を外国人技能実習制度に追加する。さらに2020年の東京五輪を控えた建設工事需要に対応する名目で建設業と、同じく人手不足の造船業での外国人労働者受け入れ期間を5~6年とする新制度をつくる。

 これらは、急場しのぎでささやかな外国人労働者の受け入れ拡大策のように見えるが、新成長戦略を議論する内閣府や「経済財政諮問会議」を裏方で仕切っている財務官僚は着々と地ならしをしている。たとえば、内閣府が2月24日にまとめた『目指すべき日本の未来の姿について』というレポートで、出生率に加えて移民を年20万人ずつ受け入れた場合、2060年で人口1億1000万人台(2012年数値)を保てるが、移民なしでは出生率回復の場合によっては9894万人に落ち込むと“予測”してみせたが、計算根拠なしだ。

 移民増加で経済が再生できるなら、それだけの綿密な経済分析が必要だが、諮問会議では御用経済学者が「技能のある外国人材が活躍できる環境の構築でイノベーション」とするなど、もっぱら高度な外国の人材の大量導入で経済を活性化させるシナリオを強調している。

 響きのよい「高度人材」を表看板に掲げ、「技能研修」という名の低コスト労働者の拡大を看板の裏に書いた。その裏のほうは実現するに違いないが、表看板のほうは問題だらけだ。「高度な外国の人材」より低レベルの労働者が大量に入ってくる可能性のほうがはるかに高い。

 それでも「持続成長」は達成できるのだろうか。経済学の基本に立ち返ってみよう。

 移民があろうがなかろうが、生産適齢人口(15歳以上、65歳未満)が減る中で経済成長を維持するためには、労働生産性を高めるというのが常識である。少子高齢化のトレンドや人口構成が日本とよく似ているのが、移民を受け入れてきたドイツである

 同国の移民は全人口の15%程度になる。では同国の労働生産性の伸び率はというと、2000~2012年の年平均で1・1%、対する日本(滞在外国人比率1・7%)は1・3%である。

 前述の技能研修を名目にした低レベルの労働者には、それだけ国内に需要がある。需要というのはコストの安い労働力のことで、日本の雇用構造がそうなっている。下のグラフは日本の製造業の海外志向と国内の非正規雇用の推移だ。非正規雇用は正規雇用に置き換わる形で、数、比率とも海外展開強化とともに上昇を続けている。

 企業は海外拠点拡大の一方で、国内では低コストの派遣社員やパートに依存し、高度な知見や経験を持つ正社員の人材を増やそうとしない。今後は低コストの非正規雇用をさらに低コストの外国人労働に置き換えることになる。生産性向上は二の次であり、低コストが最優先だ。それが日本再生につながるはずはないだろう。