多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

外国人看護師は普及するか? 高齢者支えるのに50万人の人手不足も

2014-08-20 09:13:44 | 多文化共生
(以下、財経新聞から転載)
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外国人看護師は普及するか? 高齢者支えるのに50万人の人手不足も
2014年8月20日 00:25

 増え続ける高齢者を支えるための、医療・介護従事者が圧倒的に不足している。団塊の世代がすべて後期高齢者に突入する2025年には、医師数は現在より約3万人増の33~34万人、看護職員は約50万人増の200万人、介護職員は100万人増の250万人が必要との試算もある。

 高齢者の数は右肩上がりに増えるのに対して医療・介護人材は一朝一夕には誕生しない。医学部の定員は国が定めるため、勝手に増員はできないことに加え、1人の医師が育つには臨床研修まで含めると8年はかかる。看護師は毎年5万人の新卒者が就職している一方で、離職者も多く、増加のカーブはゆるやかだ。

 こうした中、政府は数年前から経済連携協定(EPA)に基づいて、外国人看護師・介護士の育成に取り組んでいる。連携を結んでいるのは現在ではインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国で、今年度までに3カ国ですでに看護師約800人、介護福祉士1500人を候補者として受け入れている。

 候補生の受け入れ累計数は年々増えているが、言葉の壁などから、実際の資格取得はハードルが高い。看護師の国家資格は一般的には8~9割の合格水準だが、外国人候補生の合格率は10%前後と低い。介護福祉士の場合も、一般には6割前後の合格水準に対し、外国人候補生は4割に満たない合格率が続いている。

 政府は外国人看護師などの育成について、あくまでも経済活動の連携を強めることを目的としたものと説明している。しかしながら急速に進展する日本の高齢化を考えれば、外国人材の活用は無視できないテーマだ。

 日本の高齢化はその速度がきわめて速いことから、他国に例を見ないといわれている。すでに国民の4人に1人が65歳以上の高齢者だが、2035年には3人に1人、55年には2.5人に1人が高齢者となる。これを支えるには多くの医療・介護人材が必要なのは明らかで、外国人活用も含めた幅広い対応が求められている。(編集担当:横井楓)

企業では生産性アップ!?マネジメント力も身につく!? 幼少期から学ぶべき「受け容れる力」の重要性

2014-08-20 09:11:48 | ダイバーシティ
(以下、DIAMONDonlineから転載)
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企業では生産性アップ!?マネジメント力も身につく!?
幼少期から学ぶべき「受け容れる力」の重要性

急速に進むグローバル化を始めとしたビジネス環境の変化を前に、多くのビジネスパーソンが悩み、戸惑っている。その一方で、幼少期から多様な国籍と価値観の中で生活することが「当たり前」という環境で教育をしているのがインターナショナルスクールだ。前回記事では、インターナショナルスクールの教育で身につく力を「届ける力」と「受け容れる力」の2つに区分し、実際の教育現場レポートを通じて「届ける力」について解説した。今回は前回に続いて、実際の企業現場や海外教育経験者の声を元に、インターナショナルスクールで身につける「受け容れる力」が具体的にどのようなビジネススキルにつながるのか解説する。

生き残るための必須スキル「受け容れる力」

 前回記事では、急速に多様化する社会で活躍できる「グローバルプレーヤー」に求められる2つのコミュニケーションスキルとして、「受け容れる力」と「届ける力」があると述べた。今回取り上げる「受け容れる力」は、企業やチームにとって「届ける力」以上に重要な意味を持っている。

 株式会社ディスコが2013年9月に実施した「外国人社員の採用に関する企業調査」によると、2013年に留学生を採用した企業は調査対象全体の35.2%だったのに対して、2014年の採用見込みは全体で48.4%とほぼ半数に達し、特に従業員規模1000人以上の大手企業では69.0%と、採用に対する積極性が一層高まっていることが伺える。

 なお、同調査によると留学生採用の目的としてトップだったのは「優秀な人材を確保するため」、次に「海外の取引先に関する業務を行うため」となったが、「日本人社員への影響も含めた社員活性化のため」が4割強、「ダイバーシティ強化のため」も2割強と、社内の環境変化を進めていこうとする企業の意識も強く見られる。

 このように人材の常識が変わろうとする環境下では、ますます多様性に対する「受け容れる力」が必要とされるのは間違いないだろう。次に、実際の企業現場の事例を元に、「受け容れる力」がもたらす組織の変化を見ていこう。

セクシュアリティの違いをオープンにして
生産性が15%向上!?


日本IBMダイバーシティ・人事広報部長の梅田恵氏
 紹介するのは日本IBM株式会社。同社は多様性を推進する取り組みが進んでいるとされる外資系企業の中でも、特に世間をリードしている企業として名前を挙げられることが多い。現在日本法人のトップはドイツ国籍、人事のトップはアメリカ国籍で、採用担当者はスロバキアから転任してきているなど、上層部の国籍から多様性に富んでいるだけではなく、現場の社員も全体の1.8%が日本で採用された外国籍人材であるという。

 だが昔から現在のような状況だったわけではなく、「元々は社内のほとんどが日本人で、多様性を示す指標において世界のIBM社の中で日本が最下位だった」と同社ダイバーシティ・人事広報部長の梅田恵氏は語る。

 梅田氏によると、同社に転機が訪れたのは90年代のこと。当時のルイス・V・ガースナー会長が経営課題としてダイバーシティ推進を強化した。日本IBMもその流れの中で、それまでの生え抜き主義から経営層の多様化が進められ、現在では女性が13%、外国籍が29%、中途が12%を占めるまでに変化が進んでいるという。

 また、日本IBMによる多様性推進の取り組みは性別や国籍だけではなく、障害を持つ社員やセクシャルマイノリティと言われる社員にも及ぶ。各国のIBMでは、その国の人口内比率と連動して上述した人材を採用しているが、日本IBMでは副社長がセクシャルマイノリティ社員のための環境づくりを支援し、社内にカミングアウトしやすい/した人を受け容れやすい空気を生み出すことに成功した。このことはビジネス課題に対する発言のオープン化を促進する効果を生んでおり、米国の調査では、カミングアウトした社員の生産性について、カミングアウト前後で約15%の向上が見られたという報告がある。

 IBM社の多様性推進では、「成果主義」など7つの方針が定められているが、その1つに「ビジネスプライオリティ」という考え方がある。これは「ビジネス上必要だからやる」という意味で、業績優秀な社員を多様性推進の委員会に参加させることで、この課題が経営にとって重要であることを明示している。特に日本では、多様性推進に対して最初は消極的な意見も多く、実績を数字で示したり、実例を示さなくては納得しない向きも多かったのだという。こうした初めてのこと・前例のないことを敬遠する姿勢や、周りの空気を読むことが半ば強要されている文化は、「皆が同じ」であることからスタートし「自分の意見を言う」ことに対する幼少時からの訓練度が低い日本人がグローバル社会の中で苦労をする部分だと梅田氏が語ってくれた。

違いを前提とする教育が育む
「自分を大切にできる個人」


LITALICO執行役員、インクルーシブ教育研究者の野口晃菜氏
 では、「皆が同じ」を前提にしている従来の日本式教育と、「違い」を前提とする海外式教育は、一体何がどう異なるのだろうか。自身も小学校6年生から高校3年生までの7年間アメリカ合衆国イリノイ州で教育を受けた、株式会社LITALICO執行役員でインクルーシブ教育研究者の野口晃菜氏は、一般的な日本の教育環境と自身が経験した教育環境の違いについて、こう語る。

「自分の住んでいた地域は、移民や障害を持っている子どもも一緒に生活していた。だから、違うことが前提だと皆わかっているし、自分がマイノリティである状況も経験する。それを通じて『色々な価値観の人がいる』『意見が違う』ことの重要性を学んでいく」

 野口氏は現在、障害を持つ子どもをはじめ、多様な存在でありニーズの異なる子どもたちの誰もが隔絶されるのではなく、自分の住む地域にある学校に通えることをテーマにした「インクルーシブ教育」の研究に取り組んでいる。しかし、従来の日本式教育ではその多様性が認められておらず、「達するゴールも、到達する方法も1つしかなかったことが、教育に参加する子どもたちの多様性を排除してきた側面もある」と語る。

 その点、研究対象としている海外の学校では、様々な生き方や大人と出会う機会があることで、「何のために勉強するか」を自分で考え、自分自身の生き方につなげることが自然と実現される仕組みになっている。野口氏自身がイリノイの学校にいた頃の経験として、選択科目が非常に幅広く中学時点で児童教育とプログラミングを学び、高校では保育園とタイアップをするなどの経験から、「誰もが参加できる教育をつくる」という自分の進路が高校卒業時点でほぼ決定、現在では自分の仕事として実現することができている。

 こうした、海外の教育現場やインターナショナルスクールにおいて提供されている「違うことを前提とする」教育環境・方針がもたらすものとして、野口氏は「まず、自分にとって必要なことを俯瞰して考えられることで自己認識、自己受容、自己管理、内発的な動機付けといった能力を獲得できる。さらに、個々人がそういった自立した存在になることで様々な人が過ごしやすい社会になる」点があると語る。さらに、それは社会人になったときに「自立した個人として、何の抵抗もなく誰とでも働ける」力になるのだという。

「受け容れる力」がつくる
2つの「マネジメント力」

 今回のテーマである「受け容れる力」は、野口氏の言う2つの「マネジメント力」に表れている。1つは多様な人材を活かす「チームマネジメント力」、もう1つは多様な人材の中で自分を活かす「セルフマネジメント力」だ。

 前回事例として紹介した「アオバ・ジャパン・インターナショナルスクール」(AJIS)で展開される教育を見てもわかるように、そもそも違いを前提とした集団では「正解」を定めないことがポイントになる。違うことが前提とされたひとりひとりの発想や創造力がイノベーションを生み、チームの活力を最大化させていくことは、様々なところで既に語り尽くされている通りだ。

 だが一方で、多くの企業が仕事の進め方から社会通念まで様々な「かくあるべき」から抜け出せず、多様な人材の力を活用する機会を取り逃し続けている現状もある。そのような企業で働く社員は、ひとりのビジネスパーソンとしても知らず知らずのうちに硬直化していき、気づいた時にはもう個人として戦う力を失ってしまっている、というのも言い過ぎではないだろう。

 多様な人材と共に働くとき、何よりもなくてはならないのが相手と自分や第三者同士の違いを尊重すること、違いに基づく特性や適性を理解すること、なにより多様さを自然なこととして認識することだ。インターナショナルスクールが提供する「違いを前提とした教育環境」で育つ2つの「マネジメント力」は、多様性が高まるビジネスシーンを生き抜く上でなくてはならない力なのだ。