多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

小島祥美=ひるまない岐阜県=義務でない外国人子弟の教育

2009-10-14 13:45:54 | 多文化共生
(以下、ニッケイ新聞から転載)
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2009年10月10日付け
第22回=日本発=小島祥美=ひるまない岐阜県=義務でない外国人子弟の教育

 岐阜県在住の日系ブラジル人は製造業を中心とした派遣労働に多く従事していますが、彼(女)らの雇用状況は昨年の未曾有の経済危機により大きく変動しました。
 ソニーの家電工場やトヨタ自動車の下請け企業等で就労し、地域経済を支えてきた日系ブラジル人は、景気悪化に伴い真っ先に「派遣切りの対象」として白羽の矢が立ったのです。岐阜県とは、就業者に占める外国人比率(2・3%)が全国1位という地域です(05年国勢調査)。
 日系ブラジル人の派遣切りは、将来に希望や夢を抱き、懸命に日本の学校やブラジル学校で学ぶ子どもまでにもしわ寄せがいきました。
 日本の学校の場合、多くの高校や大学の推薦入試が年内に、一般入試が1月以降に実施されます。こうした時期と保護者の失業が重なり、苦労して日本語を習得してやっと手にした県立高校合格通知を手放すこととなった子ども、家計を助けるために進学せずに働くことを選んだ子どもなど、子どもの心情を考えると、悔しい、遣る瀬無い事態が起こりました。
 しかし、私が出会ったこうした日系ブラジル人の子どもの中に、親や家族を恨んだりするような子どもは誰一人いませんでした。
 NPO法人可児市国際交流協会では、市内在住かつ日本の高校へ進学する外国人生徒2人に対し毎年奨学金を授与しています。これは地域住民の寄付で運営する教育基金で、同協会の事業として04年度に開始しました。今年4月、すべての申請者に奨学金が授与されました。経済的に困難な子どもが多く実在している現実を目の前にし、地域が少しでもお手伝いできたらという地域住民の柔軟な判断です。
 一方、ブラジル学校に通う子どもについては、保護者の失業等の理由で授業料の支払いが難しくなって学校を辞めたり、自宅に待機したりという事態が起こりました。
 日本にある多くのブラジル学校は正規の学校としての認可がとれず「私塾」扱いのため、地方自治体からの助成金もありません(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県では各種学校の認可基準を緩和し、ブラジル学校計5校が認可されました)。また授業料に消費税が課せられ、通学定期券も認められていません。
 こうしたブラジル学校に通う子どもの就学を支えようと、岐阜県はいち早くその支援施策を検討しました。「現下の厳しい経済情勢及び雇用情勢を踏まえ、離職者等の雇用支援・対策等について全庁的な協議・情報共有を行うため」とし、08年12月8日に岐阜県緊急雇用対策本部が設置されました。
 その中で県国際課は、「県内の外国人労働者1万8571人が12月下旬までに少なくとも1700人が失業し、かつ解雇の計画が前倒しされて1月末までに約3千人が失業する。その結果、県内に所在するブラジル政府認可校4校と無認可校3校に就学する1千人の子どもが1月には400人に減少する」と、ブラジル学校の変動数を12月25日時点で試算しました。また、県内の公立小中学校に在籍する外国人児童生徒の異動状況も調査しました。
 これらを踏まえて岐阜県は、09年1月13日、全国に先立ち「ブラジル学校支援策(*)」の発表と至ったのです。
 岐阜県が発表したこのブラジル学校緊急支援策について文部科学省は、「学校法人の認可を受けていない所は公の支配に属しておらす、公金支出は憲法89条に抵触する」(中日新聞09年2月12日)とし、岐阜県の支援策を認めない姿勢を示しました。その結果、多くの議論と波紋が各地で広がりました。
 これに対し、子どもの姿が「見える」地方自治体は、決して怯みませんでした。とりわけ岐阜県国際課の担当者は、「幼児教室への公金支出をめぐり、東京高裁判決が支出は問題なしと判断した判例(最高裁も同様)」(東京高裁91年1月29日判決、昭和61年(行コ)第51号公金支出差止請求事件)を知り、この教室のある埼玉県吉川市まで行き、子どもが安心して就学できる策を模索しました。こうした地方自治体の尽力が実を結び、県内の計5市1町においてブラジル学校で就学が困難になった子どもの就学支援がついに実現しました(09年4月以降も継続)。
 未だ日本に暮らす外国籍の子どもは就学義務の対象外とされ、日本の公教育において子どもの学習権が保障されていません。このような現実の中、子どもの姿が「見える」地域住民や地方自治体は、国籍を問わず、地域に暮らすすべての子どもの就学を支える取り組みを実践しています。
 それは、「デカセギ」者から「定住・移住」者となった日系ブラジル人が、地域では住民の一員として位置づけられている証といえるでしょう。
 保護者の就労によって、子どもの学習権が保障されないような国であってよいのでしょうか。子どもの教育環境を整備することは大人の責務だと私は思います。すべての子どもが将来に夢や希望を描けることのできる社会になることを心から願い、私はこれからも微力ながら一助になるお手伝いを続けていきたいです。
 *【ブラジル人学校への緊急支援策】市町村の取り組みについて、外国人離職者の子どもに対してブラジル人学校等が行う授業料の減免に着目した一定額の補助(補助率2/3)を市町村振興補助金により支援する等という内容。

小島祥美(こじま・よしみ)

 愛知淑徳大学専任講師。大阪大学大学院にて博士号取得(人間科学博士)。埼玉県草加市生まれ。小学校教員、NGO職員を経て、研究のために岐阜県県可児市へ転居。日本で初めて全外国籍児童の就学実態を明らかにした研究成果により、可児市教育委員会の初代外国人児童生徒コーディネーターに抜擢。可児市の様々な実践は、外国人の就学を保障するモデル的な実践として全国から視察者が絶えない。2007年4月より現職。NPO法人可児市国際交流協会運営委員、愛知県小牧市多文化共生協議会委員長など

「医療通訳」普及進まず 民間団体の育成頼み

2009-10-14 13:45:13 | 多文化共生
(以下、読売新聞から転載)
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「医療通訳」普及進まず
民間団体の育成頼み

 日本語が不自由な外国人が医療機関で受診する際に、医師との意思疎通を助けるのが医療通訳だ。日本で暮らす外国人の増加とともにニーズも高まっているが、なかなか普及が進まない。(飯田祐子、写真も)
ポルトガル語を通訳

医師の説明をポルトガル語に訳し、出産したばかりのブラジル人女性と夫に伝える鈴木さん(左から2番目)

 「何か、ほかに気になることはありますか?」。愛知県西尾市の診療所「山田産婦人科」を、子宮がん検診のために訪れたブラジル人女性に、日本人の医師が語りかけた。「いま34歳で、出産経験がありません。来年、出産したいと考えているのですが、何か検査を受けておいた方がいいですか?」という質問に、「今のところは、特に検査などは必要ありませんよ」と答えると、女性はほっとした表情でうなずいた。

 日本語、ポルトガル語の会話を取り持っていたのは、医療通訳の鈴木マーガレッチ若子さん(47)。ブラジル育ちの日系3世で、日本語とポルトガル語、スペイン語を使いこなす。

 同市周辺には、日系ブラジル人を中心に、自動車部品などの製造業で働く若い外国人が数多く住んでいる。鈴木さんが同診療所で最初の医療通訳として働き始めた16年前は、外国人の出産は年に数人だった。医療通訳の存在が知られるようになると、他県からも訪れるようになり、昨年は150人ほどの外国人が出産。現在は、4人の医療通訳が、英語、ベトナム語にも対応している。

 先月末、長男を出産したブラジル出身のハラ・セレステ・カオルさん(27)は、「初めての出産で分からないことばかりだったが、鈴木さんが分娩(ぶんべん)にも付き添い、『赤ちゃんの頭が見えてきたから、あと少し』などとポルトガル語で状況を説明してくれたので、パニックに陥らずに済んだ」と話す。
理解と支援が課題

 「言葉の壁」は、誤診や医療事故にもつながりかねず、通訳によって診療がスムーズになれば、医師の負担も軽減される。日本で暮らす外国人は220万人を超え(2008年末現在)、医療通訳の必要性は増す一方だ。

 医療通訳を求める声に応じ、NPO法人「多言語社会リソースかながわ」(横浜市)は、神奈川県などと協力し、10言語の医療通訳を医療機関に派遣している。京都市などでも、自治体と民間団体による派遣事業が行われているほか、病院が職員やボランティアとして採用するケースもあるが、まだ少数派だ。

 公的な資格制度はなく、人材育成には、民間団体などが独自に取り組んでいる。鈴木さんは、「専門用語や医療倫理、各国の文化など、幅広い知識が必要だが、研さんは、ほとんど自主努力に任されている。患者から金銭面の相談を受けるなど、対処に困ることが起きても、周囲の理解が乏しく、一人で悩んでしまう人も少なくない」と、支援の必要性を訴える。

 今年2月には、医療関係者や民間団体のメンバーらが、初の全国組織となる「医療通訳士協議会」を設立した。会長の中村安秀・大阪大教授(国際保健学)は、「医療通訳は高い専門性を求められ、人命にかかわる責任を負う。その役割をボランティアのみで担うのは難しい。報酬と身分を保障し、プロフェッショナルを育成する必要がある」と話している。
◇NPO法人「AMDA国際医療情報センター」(センター東京(電)03・5285・8088、センター関西(電)06・4395・0555)では、電話による医療通訳を7言語(関西は4言語)で実施しているほか、外国語が通じる医療機関の紹介も行っている。

◇NPO法人「多言語社会リソースかながわ」((電)045・314・3368)http://mickanagawa.web.fc2.com/

◇医療通訳士協議会 http://jami.hus.osaka-u.ac.jp/
(2009年10月13日 読売新聞)

留学生 心結び防犯

2009-10-14 13:44:36 | 多文化共生
(以下、朝日新聞【群馬】から転載)
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留学生 心結び防犯

2009年10月13日
写真

「YUI」とサークル名が書かれたそろいの帽子をかぶる外国人留学生。ショッピングモールで買い物客に風船やビラを配り、防犯を訴えた=10日、前橋市

 県内の大学に通う外国人留学生や日本人学生が、防犯活動を行う学生サークル「結(ゆい)」を結成した。留学生を犯罪に巻き込ませないため、地域の人たちと交流する機会を増やしながら、防犯の心構えを学ぶ。

 サークルは国公立、私立の10大学・短大に通う外国人留学生ら約100人でつくる。10日に前橋市内の私立大学で設立総会があり、早速その日に、同市内のショッピングモールで、買い物客に架空請求や振り込め詐欺を注意喚起するビラを配った。

 県警が留学生向けの自転車、自動車の運転マナー教室や護身術教室を開くなかで、「地域住民ともっと交流したい」「もっと友人が欲しい」といった声が留学生から寄せられた。各大学の有志学生と県警が協力し、7月から設立の準備を進めてきた。

 警察の防犯活動への協力やサークル独自に、外国人を対象にした交通安全教室、詐欺防止教室などを企画する。

 外国人が犯罪に手を染めることを防ぐ環境づくりにも励むほか、自分たちが被害に遭いそうな詐欺の対策も学ぶ。

 会の代表で韓国出身の女子大学生許〓禎(ホ・ミンジョン)さん(25)は「留学生は孤独。サークルを通して、まずは楽しい学生生活を送りたい。そして地域と交流する機会を増やし、日本にとけ込みたい。そうすれば、日本人への加害者にならないし、被害者にもならない」。

 県警警務課によると、県内には約5万人の登録外国人がおり、中国、韓国、ベトナム、マレーシアを中心に1500人の外国人留学生がいるが、孤独感から犯罪に手を染める例があるという。